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舞台裏の君

「……なお、裏裏山は今日は四年が実習で使うので立ち入らないように。三班六班七班は明後日の計画書がまだ出ていないので早めに。それから不破と鉢屋は」
朝礼の連絡事項に名前が入っていて、級友の密やかな視線が集まるのを感じた。セットで呼ばれた名前のせいで聞かずとも用件は解る。
「午後の授業には出ずに撮影に行くように。場所は中庭。本は渡ってるな？」
「はい」
不破の隣のが不破に目配せをしている。その事が妙に鉢屋の気に障った。

「午後は僕は居ないけどまじめにやるんだよ」
いいね、と不破が相方に念を押している。解ったけど雷蔵が居ないとつまんない、とだだをこねる彼を鉢屋は何となく眺めていた。
「隣いい？」
「どーぞ」
すみませんねと隣に座るのは竹谷だ。箸を持った両手で定食を拝んでから食べ始める。
「遅いな、委員会？」
「ああ、ちょっとあって。三郎午後居ないんだっけ」
「ん、すまん」
「いや謝んなくても。いいなー俺全然呼び出されないよ」
はは、と笑ってぐいっと蕪の味噌汁をあおる。
「よかないさ、授業だって遅れるし」
「まーでもまた来年やるっしょおんなじとこ」
「そうなんだけど」
なー、と言いながら鉢屋は竹谷の漬物をつまむ。机二つ分離れた席ではまだ不破たちがなんだか言い合っていて、鉢屋は言い知れないささくれを感じる。やがて竹谷がはいご馳走さんと空になった定食を拝んで、立ち上がるのを機に鉢屋も席を立つ。

「お、鉢屋じゃん」
「久々知、今日出るんだ珍しいな」
「台詞ないけどなー不破は？」
「や、まだみたいで、よく知らないけど」
ふうん、と久々知は訊いておいて気のない返事だ。
「今度また一人五年から入るって、知ってる？」
「ああ、聞いたような聞かないような」
「そっか」
遠くから久々知を出番に呼ぶ声がして、じゃあねと久々知は立ち上がる。向こうからやってきた不破と話をしてから少し駆けて行くようだ。
「鉢屋」
不破が後ろから呼ぶ。鉢屋は出来るだけ友好的な笑みを浮かべて振り返る。
「今日はよろしく、不破」
「うん、よろしくね」