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ギブアップ

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しかも一番、知られたくない人物にとっくに気付かれていたことが、土方にとって今すぐ自害するか相手を闇討ちするか悩ませるほどの衝撃を与えていた。
「おい、まさかお前…あいつに俺たちのことばらしたんじゃ…」
「えー、俺ってそんな信用ないの?泣いちゃうよ?」
 わざとらしく眉を八の字にさせながらしなを作る銀時を見て、土方は最早ため息しか口から出ない。
「だったらなんで…」
 ため息混じりの力ない土方の声に、思わず興奮で背筋を粟立たせながら、銀時は同情を含んだ声音で答えた。
「なかなか鋭い子だからねえ…」
 実際のところ、沖田は薄々感づいてはいたらしいが確信には至っていなかった。
しかしそこで、沖田のかまかけにまんまと引っかかり決定打を決めてしまったのは銀時自身であったが、この際ばれるまで伏せておこうとさすがに命は惜しい銀時は誓う。
すっかり肩を落としてしまった土方は銀時に背を向けてしまい、最早、二人きりの逢瀬を楽しむ隙などなくそのまま解散と相成ってもおかしくない雰囲気だった。
そんな重い空気が漂う中、土方は自分の背筋を徐になぞる感覚に思わず顰め面で振り向く。
そこには、笑いながら片足を自分の背中に突き出している相手がいた。
その笑みは何処か感情がこもっていないような冷たさと、まるで土方のすべてを見透かしてしまっているような鋭さを窺わせる。
こいつには適わない、いつか相手に感じた敗北感が鮮明に土方の中に蘇るような銀時の笑顔に、土方はぎくりと体を強張らせた。
「鬼の副隊長さんは、こういうのがお好きなの?」
 完全に見下されているような相手の態度に普段ならば怒りが込み上げているところだったが、この状況が土方の気持ちを乱す。
不覚にも相手の妖艶さに土方は魅入ってしまっていた。
余裕をみせる銀時に負けじと意地になって威勢を取り戻そうと試みた土方に尚、銀時は容赦なく攻撃を続ける。
にじり寄るように近付き、自分の肩口に頭を預ける銀時に一瞬の隙を奪われた土方の耳元で囁かれた言葉。
「反応してるってことは、いけるってことだよなあ」
 途端に土方の顔が熱くなる。羞恥で思わず銀時の体を自分から引き剥がそうとすると、そこには意外にも真面目な表情をした相手がいた。
「もうさ、どうでもいいから、早くやりてーんだけど」
 その言葉に反論できるほどの理性など、土方の中にも当に残ってるはずもない。
噛み付くような土方からの口付けに恍惚とした表情を浮かべる銀時を薄目で確認しながら、土方の脳裏にふと、これからの事が過ぎったが、銀時の腕が自分の背中に回された瞬間、最早どうでもいいとさえ思えた。
やり込められてしまっている自分を許せないと思いながらも、相手にすっかり溺れてしまっているこの瞬間も悪くないと土方は少しだけ笑った。
作品名:ギブアップ 作家名:たかな