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こらぼでほすと 一撃2

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欧州方面でのスケジュールを消化した歌姫様は、やれやれと空港の特別ラウンジで寛い

でいた。これで、とりあえず、ゴールデンウィークの予定は消化したので、休みに入れる



「イザーク、ディアッカ、これから、私はオーヴへ直行しますので、護衛の仕事は休んで

ください。」

 プライベートジェットでの移動だから、飛び立ってしまえば護衛は必要ではない。オー

ヴでは、カガリンラブが居るので、こちらもジェットストリームな護衛だけで十分だ。

「俺たちは、一度、プラントへ戻ってくる。あちらで、何かしらの情報が拾えるかもしれ

ない。」

「イザーク、休みには仕事のことは、お考えにならないほうがよろしいんじゃありません

か? 」

「そうも言ってられないだろう。テロの騒ぎは収まったとはいえ、油断できる状態じゃな

い。」

「そうだぜ、ラクス様。アローズとユニオンだけじゃない。人革連やAEUにも抵抗組織

はあるんだからさ。ちょっと休んで、そっちも調べてくる。」

 イザークとディアッカは、ここから軌道ステーション経由でプラントに戻る。そちらで

の情報収集をして、休み明けに戻ってくることになった。

「ニコルは、どうします? 」

「僕は、このままユニオンに向います。あちらの交響楽団とのセッションのリハーサルが

あるので、ついでに、あちらの情報も探ってアスランにラブコールしておきますね。」

 ニコルは、現在ピアニストとして活動しているのが主だ。だが、元ザフトレッドだから

、こういうこともやってくれる。これは、主にアスランへのラブコールしたいがためでは

あってもありがたい。なるべくなら、三大大国の三つ巴の三すくみの状態が平和的なのだ

が、連合に纏まったから、余計に騒がしくなってしまった。連合がうまく纏まって静かに

なれば問題はないが、今の様子では無理そうな予感を誰もが抱いている。

「イザーク、ディアッカ、長丁場だぞ? 張り切ってると、最後にバテて役立たずってー

ことになるなよ? 」

 マーズが代表して、そう嗜める。どれくらいの時間、こういう緊張状態が続くのか、今

のところは不明だから、気を張ってばかりでは保たない。「わかっている。」 と、イザ

ークも返事する。








 翌日、カガリたちを見送りがてらに、ニールがエアポートまで出向くと、同じようにや

ってきていたトダカと顔を合わせた。やはり帰るつもりはないらしい。年少組が行ってし

まうと、ふたりだけが残る。

「お休みは、どうされるんですか? トダカさん。」

「明後日から、二泊ほど旅行してくる。きみも連れて行けるところだったら連れて行くん

だけどね。生憎と飛行機なんだ。」

 トダカーズラブの面々と慰安旅行に、湯布院というところへ温泉旅行に出向くらしい。

それなら、今夜と明日は、うちで食事してください、と、ニールが勧めると、トダカも了

承した。

 大人ばかりの夕食なので、酒の肴がメインになってくる。ハイネも食事時には顔を出し

、三蔵とトダカと飲み始める。量は必要ではないので作るほうも楽といえば楽だ。小難し

い蘊蓄たれるようなのはいないので、いや、ハイネはわりかし煩いのだが三蔵が、蘊蓄が

嫌いなので文句を言わないというだけだが、まあ、それで適当な肴で済む。

「湯布院? さすが、トダカさん。いいとこへ行くなあ。」

「なんせ、年寄りの集会だからね。温泉でのんびりってなると、そういうことになるんだ

。」

「年寄りって、親衛隊さんは若い人も居ましたよね? 」

「うちのは、きみよりちょっと年上が最年少だけど、年寄りはウヅミーズラブのメンバー

が来るからなんだ。久しぶりに集まることになったから、温泉なんだよ。」

 ウヅミさんというのは、カガリの養父でオーヴの先代国家元首だったお人だ。そして、

オーヴの獅子と呼ばれる苛烈な国家元首様で、とっても人気が高かった。ゆえに、親衛隊

ウヅミーズラブなんてものがあったらしい。それが解散して、その配下だった各人の親衛

隊が個別に発生して、トダカーズラブだの、カガリンラブだのというのが現在は活動して

いる。

「げっっ、ウヅミーズラブ? なんだよ、秘密の会談か? お父さん。」

 ハイネは意味深に笑ってツッコミしつつ、トダカのコップに冷酒を注ぐ。トダカは基本

、吟醸酒の人なので、自分の酒は持参してきた。

「まあ、ここんところの連合との兼ね合いがね。・・・・・反対派が煩いんで、愚痴大会

だ。」

 ウヅミーズラブの面々というのは、ウヅミと共に殉職したのも多数居るが、残っている

のは、現在、カガリの側で国を動かしているのが大半だ。カガリが理想とするものは、ウ

ヅミと同じものだから、その意思を護るために、その地位に居る。お陰で、現在は大忙し

の面々だ。カガリが休暇に入るので、その面々も骨休めをするのが目的で集合するのだと

いう。

「トダカさんはいいのか? キサカさんが、さんざんラブコールしてるだろ? 」

 引責退任という形を取って、トダカはオーヴ軍を辞職している。だが、人材育成には是

可否でも欲しいとキサカは考えている。トダカの知識は、実戦で鍛えたものだ。今の実戦

を知らない世代に教授してもらいたいらしい。

「残念ながら戻るつもりはないな。可愛い息子と娘に囲まれて余生を送るのが楽しいから

な。それに、私は古傷があるから、今更、現役復帰なんて無理だよ、ハイネ。腰をやって

るからね。」

「え? 腰? 」

 三蔵の相手をしながら耳だけ聞いていたニールが心配顔になる。普段、見ている限りは

普通だが、どこか悪いのかと視線で尋ねている。

「ああ、怪我自体は治ってるよ、娘さん。ただ、腰と大腿骨あたりに人工骨と人工関節が

入ってるから、季節によっては痛むっていうぐらいのことさ。もう年寄りだからね、激務

には、そんな身体で耐えられないっていうところだ。」

「知らなかった。じゃあ、寒い時は気をつけたほうがいいですね。」

「うん、一応、自分でも冷やさないようにはしてるから。・・・・私のことはいいから、

きみは自分のことを気にしなさい。娘さんが寝込むほうが、私は心配だ。」

「すいません、なるべく気をつけます。」

 ぺこっと頭を下げたニールに、トダカは慈愛の目を向ける。オーヴに未練はないとは言

い難いのだが、あちらに戻っても、もう、自分にできることは少ない。それなら、「吉祥

富貴」に居座って、オーヴとの連携に関与するほうがいい。キラとカガリは姉弟だ。カガ

リの考えを推し進める上で邪魔になるものを、キラに排除してもらうように助言したり手

伝ったりしているほうが、余程、オーヴのためになるし、自分も楽しい。軍に所属してし

まうと上層部からのオーダーが絶対になって、自分の考えは主張できない。だから、軍に

は戻らず外からのフォローをすることにしたのだ。

「おい、はんぺん焼いてくれ。」

 坊主が、女房に命じると、さかさかと台所へ女房は行ってしまう。それから、ハイネの

頭をハリセンでしばいた。
作品名:こらぼでほすと 一撃2 作家名:篠義