こらぼでほすと 一撃2
「そういうのは、うちの女房が沈没してからにしろ。」
「ああ、そうか。悪りぃ。」
あんまり余計なことを聞かせると気にするので、そういう話はやめろ、ということらし
い。
「うちの婿は、女房想いで嬉しいなあ。」
「あんたも舅なら、気をつけろ。」
「まあ、本当に愚痴大会なんだ。」
「けど、あんたのことだから、いろいろと画策するつもりだろ? 食えない舅だからな。
」
「はははは・・・過大評価してくれるんだね? 三蔵さんは。」
「いや、実質、軍には圧力かけられるだろ? お父さん。」
こんな暢気なことを言っているが、トダカの同期か後輩が、現在は軍の上層部を仕切っ
ている。何かしらの指示というか意見をすれば、それは通る確率が高い。ハイネは、それ
を知っているし、実際、動かしているのも知っていた。
「あんまりやりたくないんだけどね。・・・・・なあ、娘さんや。お土産は何がいい?
」
用意して戻って来たニールに、トダカは話題を振り替える。この話は、後で、と、暗に
ハイネに視線で指示する。
「ユフインってとこが、俺にはわかんないですよ? トダカさん。」
「九州の有名な温泉保養地だ。名物は何だろう? 私もわからないけど、普通は温泉饅頭
とかかな? 」
「湯布院っていえば、美味いものだらけのはずだぜ? お父さん。」
「九州ってことは、焼酎か? 」
すぐに、ハイネと三蔵も話題を切り替えてノってくる。
「そんなの気にしないで、のんびりしてきてください、トダカさん。せっかくの旅行じゃ
ないですか。」
「土産物を買う楽しみっていうのもあるんだよ? 」
「そりゃそうだろうけど、土産なんか買うと荷物が大変なことになるでしょ? シンたち
も遊びに行ったんだから、お相子にしとけばいいじゃないですか。」
「吉祥富貴」で配るとなると、結構な量が必要になる。どうせ、シンたちも出かけてい
るのだし、あちらも買ってきたりすると、消費が大変なことになる。
「娘さんは行かないだろ? 」
「デートはするつもりですよ。たまには、外食もいいかな、って思うんで。」
「おい、間男差し置いて、誰とデートだよ? ママニャン。」
「亭主だよ。おまえさんも明後日にはラボだし、ふたりになるから、たまには外食でもし
てみようかって言ってたんだ。」
昨晩、そんな話題も出ていた。カガリが、店を予約すると携帯端末を取り出したので、
殴ってやめさせた。そんなご大層なとこではなくて、近くのファミレスあたりの予定だ。
「そういや、きみたちも二人っきりというのは珍しいな? 」
「あはははは・・・・うちは子沢山ですからねー。」
「じゃあ、俺の知り合いの店、予約してやろうか? 味は保証するぜ。」
すちゃりとハイネが携帯端末を取り出したので、三蔵のハリセンでニールがハイネに一
発見舞う。
「勝手にするからいいんだよ。」
「おまえら二人だと、ファミレスだろ? こういう時は、ちょっとランクアップしてだな
・・・・・・・」
さらに、ニールの手からハリセンを取上げて、三蔵がしばく。
「夫婦の予定を指図するな。」
三蔵も、そんな堅苦しいのは御免だ。ふらふら散歩して食事するぐらいでいいと思って
いる。暇つぶしにパチンコでもいいかな、とか思っているぐらいに、気楽なデートだ。
やれやれとハイネが携帯端末を仕舞って、トダカに叱ってもらおうとする。
「お父さんからの意見はないのかよ? トダカさん。」
「私も堅苦しいのはねぇ。居酒屋とかは、三蔵さんが危険だし、ファミレスでいいんじゃ
ないか? 」
飲んで酔っ払った場合、口説き魔と化した三蔵を野に放つような行為は危険極まりない
。悟空がいないと止められないからだ。その意見で、ハイネもあーと納得して頷いた。
「俺だけ何もなし? 」
「明日どっか行って来ればいいじゃないか。」
「ひとりでか? ママニャン、俺ともデートして? 」
「やだよ。おまえさんなら、相手は、どうにでもなるだろ。」
「じゃあ、間男と亭主とサンピーデート。」
そこで、ニールが何かを思い出して、近くのチラシを引っ張った。近所のスーパーでは
なく、マンションのほうのお酒の安売り店のものだ。
「暇なら、ビールの買出し手伝ってくれ。ここの、安いんだ。」
「・・・・おまえなー・・・・」
「夏場は、みんな、ビールだしさ。在庫を確保しとかないと、大変なんだよ。どうせ、お
まえも飲むだろ? 」
「それ、デートじゃねぇーぞ。」
「三蔵さんも行きます? お酒もありますよ。」
「おまえが適当なの選んで来い。俺は行かねぇー。」
「でも、俺、焼酎なんて銘柄もよくわからないのに。」
アイルランド人に、焼酎の銘柄がわかるはずはない。だいたい、小難しい漢字で書いて
あるラベルも読めないので、ニールは一任には困る。
「私も行こうかな。娘さんや、私が選んであげるから大丈夫だ。」
今日は、ここに泊まるので、トダカも一緒に行って、あちらで別れればいいことだ。資
格はないが、古今東西の酒に詳しいトダカなら三蔵の好みもばっちり知っている。
「助かります。」
で、トダカもひらめいた。地元消費型の酒やビールなんてものが、各地にはある。
「そうだ。湯布院の酒を仕入れて来よう。店で出すのに珍しくていい。」
「結局、そこか? あんたも仕事中毒だな? 」
「定番ばかりだと飽きるじやないか。三蔵さんだって、変わったものも飲んでみたいと思
わないか? 」
「あれば飲む。」
「じゃあ、そうしよう。」
「てか、デートですらなくなったぞ? ただのアッシーかよ。」
「イヤなら、娘さんと私の親子で行くから、きみはいいよ? ハイネ。」
はい、そうですか、と、ハイネは言えない。腰が悪いイソジーズと、身体全体が弱って
いる寺の女房だけで、そんな重量級の買い物は怖すぎる。
「行くよ、行かせていただきます。その代わり、明日の夜は、俺の好きなもの並べろ。」
「それくらいならお安いご用だ。帰りに、それも買ってこよう。トダカさんも召し上がっ
てください。」
「そうだな。旅行の荷物を作って、明後日は、娘の間男に送ってもらおう。」
着々と予定は決められて、ハイネは明後日、トダカのアッシーもさせられることになっ
てしまった。
沙・猪家夫夫の今回の休みは、引率や仕切りはない。一日から五日まで、きっちり休み
ということになっている。いつもなら、オーヴへ一緒に連行されたりするところだが、た
まには、夫夫でゆっくりさせろ、と、悟浄が強引に休みをもぎ取ったからだ。これから、
まだ、ドタバタは続くのだから、休める時に休んでおかないと、こちらも保たない。肉弾
戦組は、あまり、そちらの仕事はないはずだが、店の管理は一手に八戒の仕事になる可能
性が高い。MS組が動けば、店のほうは、肉弾戦担当の八戒が仕切ることになるからだ。
で、五日間もあるのだから、旅行でも行けばよかったのだが、どこへ行っても人だらけ
作品名:こらぼでほすと 一撃2 作家名:篠義