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きみといきて、きみといきして

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「……うん、行こう。見に行こうよ、桜」
「ほん、と?」
「本当。お勧めの場所、探しておくね。きっとみーくんも気に入るよ」

嗚咽が出そうになるのを必死に堪えて、臨也は穏やかに、柔らかに笑う。
手を伸ばして帝人の頬をするりと撫でれは、帝人はびくりと身体を震わせたけれどそのまま頬を摺り寄せた。そんな帝人の様子に笑って、臨也はそのまま帝人の身体を勢いよく両腕に閉じ込めた。

「っ、いざ…にい、?」

大人しく腕の中に納まった帝人が、酷く困惑した様子で臨也におずおずと声をかける。しかし臨也は帝人の呼びかけに返すことはせず、ただ抱きしめる力を強めた。
入院してから軽く、細くなった身体。己を呼ぶ声も弱弱しく小さい。

そんな明日を生きることもあやふやな君を、明日もこの先もこの世界に縛り付けておけると言うならば。俺は幾らでも君の願いを叶えてあげよう。
それが例えどんなに無謀な願いだとしても、その願いが叶う日まで君がこの世界で生きて、俺に触れて、俺を呼んで、そしてずっと一緒に傍で息をしてくれるのなら。

「絶対、一緒に見に行こうね。約束だよ」
「いざにい……うん、行く。いざにいと一緒に、絶対に行く」

少しだけ身体を離して小指と小指を絡めると、子供が「指きりげんまん、」と歌を囀る。
帝人がまだ小学生だった頃、よくこうしては“約束”を交わしたことを臨也はぼんやりと思い出した。
どんなに泣いていた時も、これをすれば不思議と泣き止んで、「ありがとう」と笑った可愛くて幼い子供。
そんな子供の笑顔に、手の暖かさに救われていたのは、自分の方だった。

「いざにい、絶対。絶対だよ。」
「分かってるよ。俺は一度もみーくんとの約束を破ったことはないだろう?だからみーくんも守ってね。ちゃんと、ちゃん、と」



約束を果たすその日まで、ちゃんと生きて。
そしたらまた、新しい約束をするから。今度はその約束を果たす日まで。
そしたら、そしたらまた――


(何度も、何度も指きりげんまんをして――)




明日で、未来で、この世界で、俺の傍で息をして。




掠れた声で呟いた約束に、帝人は泣きだすのを必死に堪えながら。優しく美しく、そして儚く。あの薄紅の花弁のように。
臨也の腕の中で、笑った。





きみといきて、きみといきして
(これからもずっと)