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きみといきて、きみといきして

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それからまた時が流れ、いつの間にか誕生日当日になっていた。
今日は幾分か身体の調子もよく、珍しく朝から起き上がって過ごしている。
何時もよりも早い時間に病室に来た臨也にも、「今日は調子が良いみたいだね」と言われるほどだ。
ベッドの傍らの椅子に腰掛け、「さて、」と臨也は帝人と視線を合わせた。

「みーくん、誕生日プレゼントは決まったかな?」
「え、っと……その、」
「何でも言っていいんだからね。まぁ俺に出来る範囲でだけど…」

帝人は口篭らせながらどうしようかと逡巡していたが、臨也の表情が何時ものように優しくあったので、帝人は意を決して口を開いた。

「いざにい、あのね……笑わないでね」
「笑ったりなんかしないよ、みーくんだもの」
「……あの、ね」
「うん?」
「僕、」





「いざにいと、桜を見に行きたい」




幼い声で呟かれた願い事が、白で整えられた病室に響いた。
その願い事を聞いた臨也は目を見開き、固まる。ベッドに乗せていた手がびくりと震えた。
帝人は戸惑いを、真剣な思いを孕んだ目で臨也を見つめる。その瞳が揺れているのを、臨也は気付いていた。

(桜、か…)

東京はまだ桜は咲いていない。あと最低でも一週間、下手したそれ以上掛かるだろう。
帝人の身体が日に日に弱っているのは確かで、実際は明日を生きれるかも危ういのだ。
帝人は知っているのだろうか。臨也が病室に入る寸前、どくどくと拍動する心臓を、乱れる呼吸を必死に抑えて、ぎゅっと目を瞑って覚悟を決めてから扉を開いていることを。
知っているのだろうか。帝人が音に反応して此方に顔を向けて、そしてその幼顔に笑みを浮かばせるのを認めて酷く安心していることを。
知っているのだろうか。『またね』という約束で、子供の明日をこの世界に縛り付けていることを。

そんな臨也が愛する子供の、桜を一緒に見たいという、他愛無い願い事。
だけどそれに込められたのは、まだ生きていたい、一緒にいたいという、唯一つの純粋で痛切な想い。