救われない報われない
『救えませんでしたね・・・』
「っ・・・うぅ・・・」
涙を流して蹲る帝人の背中に手を合わせ撫でる菩薩。帝人は声を殺すことなく泣き続けた。
自分の無力さが辛い。非力さが辛い。辛い辛い辛い。
「いざや・・・さ・・っん・・・!」
あまりにも辛くて胸が押しつぶされそうに痛い。きつい。重い。
喉に引きちぎられるかのような痛みが走り、嗚咽と同時に吐き気を催す。
『辛いのなら忘れてしまいなさい。それが・・・この世界なのだから』
菩薩はそう言うと、帝人をその光り輝く衣で包み込むとそっとその瞳を閉じた。
帝人も、だんだんと意識が薄れゆく。不思議と何も考えられなくなっていった。
(いざやさ・・・ん・・・・)
帝人は一滴の涙を零すと、そのまま意識を失ってしまった。
帝人はもう臨也を思い出すことはないだろう。それが、この世界。痛みを忘れて、来世へと向かうための世界。
作品名:救われない報われない 作家名:霜月(しー)