雨の日の災難
ずうずうしい奴だなとアーサーは唇をつりあげ、フランシスに肩をぶつけた。その拍子に一瞬フランシスの肩がはみだしたが、アーサーの左肩はもうずいぶんと雨粒を吸収しているようだった。水分を含んだシーツは重く、くすんだ色合いになっていた。
それに気付いているフランシスはわざとそれを指摘することなく、照れ隠しのように歩くペースをあげるアーサーにいつまでもついて行こうと思った。きっと彼はぼやきながらも紅茶を淹れてくれるだろう。そうしたらフランシスはまるでシルクハットに白い鳩が隠されていたようにさっとチョコレートの箱を取り出すのだ。熱い紅茶のお供にチョコレートを一粒どうぞ、と一言添えて。