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ぐらにる 流れ3

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・・・・たぶん、何にも考えないで、よっかかりたいだけなんだ・・・・・
 組織内で、そんなことはできない。あの自己中で、人のことを姫だとか呼んでいるふざけたユニオンの軍人なら、それができる。二週間だけ、よりかかって息を抜きたい。本当に、それだけだ。
・・・・なあ、ティエリア。本当の息抜きって、そういうもんなんだよ・・・・
 普段の生活を忘れて、いつもではない行動をする。だいたい、通常なら、働いている人間が、休日に、何もしないというような単純なものだ。だが、精神的なものは別物で、いつもと違う精神状態になってみたいと思う。無条件に誰かに寄りかかるというのは、できそうでできないから、それができそうな相手だから、受け入れた。彼が、二週間しても去らないということは絶対にない。軍人である限り、そんな我侭は言えないだろう。だから、いつもと違うように振舞っても、それを知られても、二週間後にいなくなる相手なら、それができる。



 手が疎かになっていたので、慌ててワイシャツのシワを、きちんと伸ばして、それを畳んだ。それから、他の洗いあがったものも整理して、チェストやクローゼットに仕舞いこむ。
 それから簡単に掃除機をかけていたら、エーカーが戻ってきた。まだ、そんなことを・・・と、呆れている彼は、俺の手から掃除機を引き剥がす。
「二ール、デートの時間だ。」
「オッケー、じゃあ行きますか。」
 手ぶらで、ジャケットだけ手にした。着替えが必要な日数ではないから、気楽なものだ。エーカーのほうも、テキストと参考書だけを手にしただけだ。備え付けのカサは一本しかない。外へ出て、エーカーが、そのカサをさして、俺を入れてくれた。俺のほうが背丈はあるので、カサを持とうとしたら、断られた。
「クルマは? 」
「そこの大通りのパーキングに停めてある。ガイドマップも貰ってきた。」
「どこへ行くつもりだ? 」
「教えない。姫は、私との会話に耳を傾けていればいい。」
「いや、これから行くなら、泊まるところとかさ、予約したほうがいいだろ? 」
「予約した。そういうことは考えないこと。・・・きみは、すぐに、そうやって準備を自分でしようとする。そういうことは、私がするから忘れていなさい。」
「・・あ・・・うん・・・」
 ついつい、いつもの癖で、段取りを考える。なんせ、いつもの面子は、そんなことを考えない。何にもしないで、ただ、寄りかかっていることに慣れない。
「けど、あんただって、ここには不慣れだろ? 」
「クルマにはナビというものがついていて、それは、すでに入力した。それに従っていれば、不慣れな私でも迷うことはない。」
 ほら、乗って、と、助手席のドアを開けられて、乗り込むまでカサがさしかけられる。どうも、調子が狂う。いつもは、一人だから運転するのは、自分だ。
・・・そういや、あっちのクルマ、バッテリーが切れてるだろうな・・・・・・
 地上に降りて、滞在している隠れ家は、AEUの端っこにある。そこには、自分で選んだクルマも置いてあるが、長いこと、あちらに戻れなかったから、ガレージでバッテリー切れで動かなくなっているだろう。墓参りにも行けてないし、これが終ったら、一端、あちらのほうも確認して来ないといけない。
 ちゅっっ
 今後の予定に思いを馳せていたら、いきなり生暖かいものが、唇に触れてきた。すぐに離れたが、くくくくっという笑い声が聞こえる。
「二ール、すぐに、きみは私を忘れるらしい。忘れたら、ペナルティに、その唇を塞ぐから覚悟しておけ。」
「おいっっ、外から丸見えのところでっっ。」
「心配しなくてもワイパーは動かしていない。」
 目の前には、雨で濡れて視界のないフロントガラスがある。覗き込まれない限り、確かにわからないだろう。
「何か心配事でも? 」
「いや、カリキュラムが終ったらな、墓参りに行こうと思ってさ。・・・長いこと行けてなかったから。それを思い出してた。」
「ああ、それはいいことだな。だが、今は考えないでくれないか? 死者を悼む気持ちは、私にもあるが、今は、そんなことより大事なことがある。」
 もう一度、キスされて、確かにそうだな、と、苦笑した。どうしても、先のこと先のことを考えてしまう自分は、この時間を楽しむことに集中しない。唇が離れてから、彼は、「だが、きみの家族のことを聞いてみたいとは思うよ? 二ール。辛くないなら、教えて欲しい。」 と、付け足した。




作品名:ぐらにる 流れ3 作家名:篠義