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野沢 菜葉
野沢 菜葉
novelistID. 23587
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きらきら星 【後偏】

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9
悲しそうな、困ったような顔をした栄口は、ドアを開けるとそのまま奥に入ろうとせずに固まっている。
俺は、栄口に近づいて奥に来るよう手を引く。
手に触れる瞬間、栄口の身体がビクッと震えた。

瞳をみると不安そうに潤んでいて、俺はチクチクと胸が痛む。
お互いに黙ってしまい、気まずい空気が流れた。
俺は決心して、1度大きく息を吸う。

「昨日のことごめん!栄口のこと何も考えないで暴走しちゃって。
 …気持ち悪かったよね。許してくれなくても良いって思ってる。
 だけど、栄口が1つだけ誤解してるから、それを訂正したくて。」
言い終わって、栄口を見ると目が合った。
不安そうな瞳はまだ見えるが、話は聞いてくれるようだ。


ちゃんと伝わりますように…そう思って優しく栄口の手を握った。
「…栄口にキスしたのは、坂井さんの代わりじゃないよ。
 俺は栄口だからキスしたんだ。」
今度はちゃんと栄口の目を見て、ギュッと手に気持ちを込めて…。
すると栄口の目は大きく開いた。もう不安そうな瞳は見えない。

「…どういう…こと?」

俺は栄口にわかるよう、はっきりと言った。
「俺は栄口のことが好きです。俺と付き合ってくれませんか?」

栄口の目は大きく開いて今にも瞳がこぼれそうだった。
それと同時に耳まで真っ赤になったので、俺の気持ちが通じていることがわかった。

「好きって…お前っ…オレ男だぞ。自分の言ってる意味ちゃんと――」
「うんわかってる。最初は男だからって、栄口のこと恋愛対象と見ないで、似てるなって思った坂井さんと付き合ったけど。栄口と似ている女の子と付き合うことなんて無理だったみたいだ。だって栄口は栄口しかいないんだから。…俺が好きなのは栄口勇人1人だけだから。」

すると栄口の大きな瞳から涙が溢れだした。
そこまで気持ち悪がられたのかなっと思って、慌てて手を離す。

すると、ドンと胸に衝撃がはしった。

栄口が泣きながら俺に抱きついてのだ。

予想外の出来事に嬉しいのやら何やら、わたわたしてしまったが、
小さくなって泣きながら俺に抱きついてくる栄口を見ていたら、少し心が落ち着いた。
俺はそっと栄口の背中に手をまわす。

「…あのー、栄口さん。俺こんなことされると期待しちゃうんですが…。」
「…ばか。」
「えぇ!だって栄口がこんなことするから!」
「…ばか。オレがどんだけ…オレは前からずっと。」
「ん?何??」
「オレはずっと前からお前のこと…」
そこまでは聞きとれたのだが、肝心のところが聞こえない。

「えっ、栄口もう1度!!」
そう言うと、栄口は不機嫌そうな顔で俺を見たかと思うと、
スッと背伸びをして、俺に唇を重ねた。



「大好き!!」
そう言って、俺のずっと見たかった大好きな笑顔を見せてくれた。