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【DQ6】ぼくがゆめみたゆめをみた

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 思うより先に、名前の方が口から滑り出る。ぱっと嬉しそうな顔をして、黄緑色のふかふかした身体を摺り寄せてくる。その温かさにまた泣きたくなった。
 知らないはずの名前が次から次へと湧き上がる。今度は間違えないでよと肩のスライムがぴい、とちいさく鳴いた。そして自分は知らなかったはずの名前を、今度こそちゃんと呼ぶことができた。スラリン、と。
 スライムを抱きしめる。集まってきたみんなを。
 これは夢だった。だからこそ再会がこんなにも胸に痛い。―――忘れてなどいるものか。こうして誰かが覚えている。だから夢は、ここにあった。
 確かに知っていた名前を呼びながら、親愛を示す抱擁を受ける。スーパーテンツクはさらっとした乾いた感触。ダークホーンの毛は固くて細い針金のよう。ボストロールは感触を確かめる余裕もないほどの豪快な抱擁だった。
 げほごほ、と咳き込む背を柔らかい手が撫でる。その手はスライムよりも少し固い。振り返るとそこにいたのは心配そうに首を傾げているホイミスライムだった。
 みんな纏めて抱きしめてやりたい。腕が足りないやと笑うと、みんなで抱き合えばいいじゃないですかとスライムナイトが言う。涙を拭いながらそれに答える。
 そうだなあ、やっぱりお前、良い事言うな。ピエール。
 ここは夢の庭だ。それを知っている。こんなところがあることさえ知らない人もいるだろう。いつか終わってしまうそのときが来るのかもしれない。ひっそりと忘れ去られていくか、もしくは―――かたちを残さなかったけれどもどこかでひとつの個として生き続けている彼が、ほんとうに強くなったときに、自分の方が消えてしまうかもしれない。
 めいっぱい腕を広げてみんなを抱き締める。ごつごつしてたり、湿ってたり、ふかふかしていたり。中にはあんまり抱き心地がよくない奴もいた。それを知っていることが嬉しかった。
 ―――だって夢はいつか覚めるものだから。
 女性の声が蘇る。胸を引き絞られる気がした。息を吐いたり吸ったりしながらなんとか堪える。変な顔をしていると突っ込まれ、うるさいばか、とその変な顔で笑った。
 泥人形があっ、と一点を指さして叫んだ。虫干ししていた巻物がころころと転がっていく。広げていたのは気持ちよく吹きこんでくる風を受けて、ふわふわときままに移動している。一枚崖下にひらひらと落ちていきそうになる。
 ―――メッキー!
 反射的に名前を叫んでいた。ルーラもかくやの勢いでキメイラがそれを追う。自分もころころと転がる巻物を追いかける。それに一匹が続き、二匹が続く。二匹が続けば四匹が。破らないように、とキラーマシン2が指摘するのに、みんなで声や手を振って了解だと返す。足の早いはぐれメタルがもう数枚捕まえていた。
 ランプの魔王が捕まえた巻物を雲の中に押し込む。広げたのはキングスライムが重石代わりになって押さえる。レッサーデーモンは背中にちいさな仲魔を乗せて駆けている。リップスや爆弾岩は何枚飛んだのか数を確認していた。彼ららしいと思った。似たようなことをしたことがある。きっと、ずっと前のこと。こんなに他愛ないことが楽しく、寂しい。泣き笑いの顔のまま、ひらりと揺れる巻物に手を伸ばす。


 覚めるとしても、どうかこのまま。
 積もる話を彼らとしたい。