三回の、願い事
初日
すっきりとはとてもいえたものじゃない雰囲気の中、俺は静かにベットの上から降りた。
軽くズキンという頭痛に不快感を覚える。
「なんかしたっけ?二日酔いっていう痛さじゃないんだよなぁ...」
水でも飲もうと冷蔵庫に向かう途中、
ピンポーン
というチャイムがなった。
(誰かと約束してたっけ?)
それでものんびりした足取りで玄関に向かい、その途中で玄関用のカメラモニターで訪問者をチェックする。
「み、帝人君?!!あれ?帝人君と約束してたんだっけ...?やっべ、記憶にない...ってか、いつまでも玄関じゃなくて家に入れないと!!」
人間というカテゴリーの中でも、大のお気に入りでもある彼との約束を忘れていたという事実にショックを受けるが、今はそれどころではないと、今度は急いで玄関に向かう。
「ごめんね、帝人君!!寒かったでしょう?さぁ、入って」
「こんにちは。僕が勝手に来たので気にしないでください。えっと、お邪魔します」
「どうぞ」
(あれ?約束してたわけじゃないのか。なんか鈍痛もするし昨日の記憶もあいまいだからか調子狂うな...)
さりげなくリビングに誘導してソファーに座るのを確認すると、そのままキッチンへ向かい温かいココアを入れてあげる。
俺自身はココアを飲まないけど、一度自販機でホットココアを買っている帝人君を見かけてから、常に常備するようになってしまった。
「それで今日はどうしたのかな?」
帝人君の目の前にココアを置き、自分もコーヒー片手に向かいのソファーに座る。
「あの...実は臨也さんにお願いがあるんです」
「お願い?ダラーズの情報かな?それとも紀田君に関しての情報?」
「いえ、そういうのじゃなくて...。臨也さんにお願いを3回叶えてほしいんです!!」
”お願い”という言葉をきいて、情報の提供だとばかり思っていた俺は、内心かなり驚いたけれどもそれを表に出さずに、必死に俺を見つめる帝人君を見つめ返す。
(あの帝人君の事だ。きっと俺の予想外のお願いとかくりだすんだろうな。...面白い!面白いね!!帝人君がどんな願い事するのかすごく興味深いよ!)
「いいよ。俺でできる事なら何でもその”お願い”をきいてあげる。で、まずはどういうのかな?」
「あ、ありがとうございます!!でも、お願いは明日お願いしてもいいですか?また同じ時間に伺いたいんですけど...」
(準備でもあるのかな?まぁ、楽しみが明日に伸びたと思えばいっか)
「いいよ。じゃあ、明日またこの時間に待ってるね」
「はい。お邪魔しました」
ソファーから立ち上がり、玄関に向かう帝人君の肩にさりげなく手を置いて誘導する。
もう一度、「ありがとうございました」と笑顔で言う帝人君に対し、俺も「どういたしまして」と笑顔で返した。
ドアが閉まるのを確認すると、明日が楽しみだなぁ~と浮かれた気持ちでリビングのソファーに戻り、帝人君の飲み残しのココアを一口、口に含んだ。
「あはは、あま~い。こんな甘いココアを美味しそうに飲めるなんて、帝人君の方が甘楽って感じだな~」
どうでもいい事を思いながら、明日のこの時間に想いをはしらせ甘いココアをもう一口含んだ。