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School Days 6月 side門田

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School Days
Side Kadota Kyohei

 六月

「きりーつ! 礼!」

 委員長の大きな声で今日も一日が終わった。
 一日が終わったと言っても夕方の少し前で、時間的にはまだ一日が終わるような時間ではないのだが。

「門田君―。今日もお疲れ様―」
「あぁ」
「でも、今日は楽だったね! 何故かは知らないけど、臨也が静雄にちょっかい“そんなに”かけなかったから僕たちの出動回数全然少なかったし」
「そうだな、毎日こんな感じだと楽なんだがな」
「お、門田」
「静雄、お疲れ」
「おぉ」

 初めに声を掛けてきたのは新羅、次に声を掛けてきたのは静雄。
 どちらもクラスメイトであり、友達だと思っている。

「あ、そうだ。これから静雄の掃除当番済ませたあとにちょっと街に出ようと思ってるんだけど、門田君もどうかな?」
「あぁー・・・・・・悪いな。今日は少し早めに帰らねぇといけねぇんだ」
「そっか。じゃあ、また今度」

 そう言って、静雄と新羅と教室で別れ校門を出た。それまでは良かったのだが。
 登校で通いなれた道を歩いていると、見慣れない出来事が目の前で起こっているようだった。
―――――あいつは・・・・・・
 門田の目に映ったのは、以前図書室で見かけた彼女。今でも頻繁に電撃文庫を借りてるらしい彼女だ。
 数人の男に囲まれ、今にも路地裏に連れ込まれようとしている・・・・・・ように見える。
 何故、門田がそのような状況であることに少し違和感を持ったのかというと、連れ込まれようとしている彼女に恐怖心があまりないように見えたからである。
 普通の女性なら少しは怯えた態度を持つものだと思っていたが、彼女は大して怖いという感情を持っているようには思えなかったのである。
 門田は彼女に近づいていき、とりあえず近くの男に声を掛けてみることにした。

「おい・・・・・・」
「あぁ!?」

 声を掛けた男は突然殴りかかってきた。
 少しは喧嘩慣れしている門田はその拳を避け、男の腹に一発気絶する程度の拳を打ち込む。
 そのまま男は門田の予想通り倒れ、起き上がることはなかった。
 仲間の男が殴られたことに気付いた、もう一人の仲間が声をあげる。
 門田は男たちに向かって会話をしようとした。

「おめぇらこそ何やってんだ。その子、嫌そうにしてるように見えるんだがな」
「めちゃくちゃ嫌です。っていうか困ってます」

 怖そう・・・・・・では無いが、やはり嫌がっていたのか。門田は少し安心してまた口を開く。
 
「ほら、嫌だって言ってんだろ。腕、離してやれよ」
「黙れガキが!」

 今度は別の男が殴りかかってきたため、先程と同じように拳を避けて、また同じように拳を相手の腹に打ち込む。
―――――ほんとはこんな面倒なことしたくないんだが
 門田は頭で愚痴をこぼしながら相手が倒れていく姿を目に納めていた。
 ここで、平和的に話を進める解決策を思いつく。友人の名前を勝手に借りることになるが、本人は大して気にしないだろうと話を進めることにした。

「お前らブクロのやつか?」
「っ・・・・・・あぁ、それがどうした!?」
「平和島静雄って知ってるだろ?」
「あ、あの、池袋最強って言われてる・・・・・・!」
「自動喧嘩販売機・・・・・・」
「この前なんか、十人以上の男に絡まれて全員吹き飛ばしたらしいぞ・・・・・・」

―――――さすが静雄だな

 平和島静雄の名前は池袋に住んでいたら誰もが知ってる。むしろ知らない奴はいないだろうと思ってのことだ。
 現在、これほどまでに有名な静雄がまだ有名になっていくなど、静雄本人も、門田や新羅も予想していないだろう。
 門田は軽く笑みを浮かべて、こいつらが物分りが良いほうに転がるように願いつつ言葉を発する。
 先程教室で交わした会話を思い出しながら。

「その平和島静雄な。俺と同じ学年の奴なんだがよ、さっきホームルームが終わって帰るところだと思うんだが、もうそろそろこっちに向かってくると思ってな。こんな道の真ん中で目立つことやってたら、静雄のやつにボコられると思って、ちょっと声掛けに来たんだが」
「マジか!?」
「おい、ここに平和島静雄が来るって・・・・・・!」
「クソ・・・・・・おい、ここは一旦引くぞ!」
「おい、学ラン。ありがとな」
「おぉ、気をつけろよ」
「殴ったことはチャラにしといてやるぜ」
「どうも」

 門田の思惑通り、男たちは掴んでいた彼女の腕を離しその場から離れていった。
 腕を解放された彼女は、解放される前と後の表情があまり変らず、何が起こったのか良く分かっていないような顔をしてこちらを見てくるので、門田は軽く溜め息を吐いて彼女に向かって話し出す。

「あのな、お前も女子だろ? 男に囲まれたら叫び声を出すとか何かしらの対応をすべきじゃねぇのか?」
「いやぁ、他の事に頭いっぱいでそれどころじゃなかったんですよ」
「他の事?」
「えっと・・・・・・」
「ドッタチーン。何してんの、こんなとこで」
「ドタチン言うな。つーか退けろ」
「あれ? この子誰? もしかして、ドタチンの彼女!?」

 突然、背中に重みを感じたと思ったら今日はあまり姿を見なかった臨也の声。
 首に腕を回し、わざとらしい笑みを浮かべているのが見てなくとも目に見えるように分かる、そんな声だった。
 腕を背中に回して臨也を自分の横に移動させる。
 目線だけで顔を見ると、やはり想像通りの顔をしていた。

「あ、私これから約束があるので、これで!」
「あ、おい」
「さっきはありがとうございました!」

 図書室の彼女は走ってその場を後にした。
―――――結局、名前聞きそびれたな
 門田は心の中でひとりごちていると、臨也も彼女の方を見ているのに気が付いた。

「なんだ、臨也。今のやつ知ってるのか?」
「ドタチンの彼女なら面白がって徹底的に調べてると思うけど、残念ながら知らない人間だね」
「お前が校内で知らない奴とか居るんだな」
「失礼だなぁ。全員と連絡取ろうと思えばすぐに取れるよ」
「・・・・・・相変わらずだな」

 二人は並んで彼女の走っていった方向に歩みを進める。
 臨也は歩いていく門田の横を同じくらいの歩行速度でついていく。

「うーん・・・・・・」
「? どうした?」

 彼にしては珍しく、先程の図書室の彼女がきになっているのか、何か考えている様子であった。
 臨也は顎に手を当て様になっている格好で呟くように答える。

「なーんか、今の彼女見たことある気がするんだけどなぁ」
「じゃあ、どっかで会ったんじゃないか?」
「俺、興味のない人間の顔はすぐ忘れちゃうからさー。あ、でも、もちろん人間はみんな愛してるよ? ちゃんとその対象にドタチンは入ってるから、安心してね!」
「寒気が止まらねぇよ」
「当然シズちゃんはその対象に入ってないからね」
「はいはい」

 二人はまた歩き出す。
「・・・・・・やっぱ気のせい?」
「まだ考えてたのか」

 臨也にしては本当に珍しいことだと門田は臨也の方を見る。
作品名:School Days 6月 side門田 作家名:大奈 朱鳥