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普(あまね)
普(あまね)
novelistID. 25086
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未定。

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規則的な電子音。
それが一定の回数鳴ると、俺は目を開いた。


「初めまして、マスター。『VOCALOID 00-02 KAITO』です」
俺が座っていた状態だったからか、マスターはしゃがみ、目線を合わせて微笑んだ。
「宜しくね」
「虹彩、声紋認証完了致しました。これから宜しくお願いします」

初めて見たマスターは、とても優しそうな人だった。







「おはようございます」
「おはよう。顔洗っておいで」
朝起きてリビングに行くと、トーストにマーガリンを塗っているマスターがいた。
俺があいさつをすると穏やかに微笑む。マスターの言われたとおりに洗面所に行って顔を洗う。

「カイトはご飯、食べれるんだよね?」
「はい」
「じゃあちょっと待ってて」
マスターと迎え合う場所に座る。
今日は日曜日。どうやらマスターは平日出勤のようで、土日は休みらしい。

待っていると、目の前にトーストとコーヒーが置かれた。
「はい、どうぞ」
少し戸惑いながらマスターを見上げる。すると既に俺の前に座っていた。
マスターはテーブルに肘をついて両手を組み合わせ、手のひらに顎を乗せてにこにこと俺を見ていた。
そのことからやっと俺はこれが俺のためのものであることを理解して、ぽつりと呟く。

「…いただきます」
マスターのしていたようにマーガリンを塗って、食べる。口に含むとふわふわとしていた。
「美味しい?」
「はい、…」
本来俺は“美味しい”とか、そういう感情を持つためには時間がかかる。起動して二日目でこんなことを思えるはずはないのだけれど、でも…
俺は自然と、マスターの言葉に頷いていた。

「(これが、美味しい…なのか)」
ぼうっとそんなことを思う。


「ねえ、カイト」
「はい」
「今日は買い物に行こうか?服とか必要だし…」
俺のじゃサイズ合わないと思うし。ね? とマスターはにっこり笑った。
確かに俺はマスターより数センチ身長が高い。そこまで差があるというわけではないのだけれど…







「カイトはスタイルがいいから何でも似合うねぇ」
服を何着か試着した後、マスターは少し感心したように言った。
その言葉の意味がよくわからなかった俺は首を傾げたけれど、マスターはなんでもないよ、とふわりと笑う。

マスターは俺が試着した服を全部買った。結構な量があったので、俺のための物なこともあり俺が持つことにした。


「あ、ねえカイト。アイス食べてみない?」
ある場所に目を留めて、携帯で時間を確認したあと、にこにこと楽しそうに笑いながらマスターはそう言った。
その笑顔につられて俺も少しだけ顔が綻ぶ。
「はい、食べてみたいです」
「うん。じゃあ行こうか」

入ったお店は、店員さんが楽しそうに歌を歌ってアイスを混ぜていた。
マスターはメニューが書いてある紙を持ってきて、
「どれがいい?」
と俺に聞いた。
「マスターはどれにするんですか?」
「え?う、うーん…これにしようかな?」
指差したそれは、チョコレートアイスクリームにブラウニーやチョコチップなどが入ったものだった。
「じゃあ俺はこれで」
俺が指差したのは、三つの種類のベリーが入っているアイス。
「…カイト、可愛いねぇ」
マスターはそう呟いたけれど、俺にはよくわからなくてまた首を傾げる。
「?」
「ううん、なんでもない。じゃあ買ってくるから、席に座って待ってて」
「はい」

空いた席に座って待ってると、マスターが二つ持ってきた。
マスターのアイスにはチョコのワッフルボール、俺のアイスにはワッフルボールがついていた。

「頂きます」
「どうぞ」
俺がスプーンでアイスを掬って口に入れる。するとアイスは口の中で溶けた。
「…美味しい」
きょとん、とした声でそう呟いた俺にマスターは嬉しそうに笑って、
「良かった!」
と、心の底からそう思ったように言った。その言葉に俺も嬉しくなって、先ほどよりもマスターに近い笑顔を浮かべた。

「!」
マスターは吃驚した、というような顔をして……けれど、やがてふんわりと優しく微笑む。
「俺のも食べる?」
そう言ってアイスをスプーンで掬って、俺の口元に運ぶ。示された通りに口へ入れると、嬉しそうな顔をしたマスターが俺の目に映った。
「美味しい…です」
俺もマスターと同じようにする。少しだけ驚いていたようだけれど、でも食べてくれた。
「うん、美味しい」

優しい声音で言って、マスターはまた笑った。
その時ふと、俺は「あぁ、この人のボーカロイドになれて良かった」…そう、思ったんだ。



*****
作中に出ているアイスのお店は「COLD STONE」がイメージです。
マスターが頼んでいるアイスが「チョコレート デヴォーション」で、カイトが頼んでいるものが「ベリーベリー ベリーグッド」
…というイメージです。カイトが頼んだものは主に女性に人気のため、マスターはああ言ったんだと思います。

作品名:未定。 作家名:普(あまね)