Good-by,hello
帰りの支度を用意していると、後ろから視界を遮られる。少し冷たいその手は……っていうか、こういうことするの一人しかいない。
「正臣、何してるの?」
「おおっと!流石帝人。やはり愛の力かぁ!?」
ぱっと手が離れ、正臣が僕の鞄を持つ。
「何言ってるの……」
はあ、とわかりやすく溜め息をつくと正臣がすたすた歩きだした。
「ちょ、正臣!?鞄返してよ!」
慌てて背中を追い掛ける。園原さんは今日、用事があるらしく直ぐさま帰ってしまった。
「なあ帝人ー」
「なに」
やっと鞄を取り替えして隣に並ぶ。
「俺がさぁ、いきなりいなくなったらどうする?」
正臣が止まる。僕も止まる。振り返ると、正臣は無表情だった。いつもへらへら笑っている彼が、だ。そのことからこの問いが冗談ではないとわかった。
「なぁーんてなっ」
にかっと明るく笑う。先程の無表情が嘘なのかと思うほどの変貌振りだ。びっくりしたかー?と言いながら僕の前を歩く正臣に、僕は。
「正臣」
呼び掛けた。んー?といつもの様子で振り返る彼。
「探しに行くよ」
きっぱりと言った。
「そして、見つける。いきなり、だろう?何も言わないでいなくなるなんて、許さないよ」
僕が見ている方向と同じ方向を見ている正臣。先程肩を組んだままこちらを振り返ったけれど、向き直したようだ。
「だから」
僕は正臣の背中に近づいて、肩を掴み――
「僕に何か言ってからいなくなりなよ」
こちらを、振り向かせた。
滅多に見られない驚いた顔をした彼。耐え切れず僕は吹き出した。
「何て顔してるの」
「帝人」
「なに」
ぎゅっと、抱きしめられる。
「帝人」
耳元で名前を呼ばれて、またなにと応えた。その声が泣きそうだったことには気づいたけれど、触れてやらない。
数分間、いやもしかしたら数十秒なのかもしれないけど…抱き合って。此処が人通り少なくて良かったなあなんて思いつつ。
離れた。そのとき正臣は普通で、
「帝人ぉ、俺は感激したぞ!まさかこんなに帝人が俺を想ってくれてるなんてなぁっ!まあでも心配はいらない。紀田正臣はいなくならない、当たり前だろ?」
「うん、だから例えばの話でしょ?本当に僕が正臣を探すわけないじゃん」
「冷たい!冷た過ぎるぞ帝人!さっきのデレは何処へいったんだっ」
「デレてないし」
こんな風にお互い冗談を言いながら別れた。
――次の日、正臣はいなくなった。
「正臣、何してるの?」
「おおっと!流石帝人。やはり愛の力かぁ!?」
ぱっと手が離れ、正臣が僕の鞄を持つ。
「何言ってるの……」
はあ、とわかりやすく溜め息をつくと正臣がすたすた歩きだした。
「ちょ、正臣!?鞄返してよ!」
慌てて背中を追い掛ける。園原さんは今日、用事があるらしく直ぐさま帰ってしまった。
「なあ帝人ー」
「なに」
やっと鞄を取り替えして隣に並ぶ。
「俺がさぁ、いきなりいなくなったらどうする?」
正臣が止まる。僕も止まる。振り返ると、正臣は無表情だった。いつもへらへら笑っている彼が、だ。そのことからこの問いが冗談ではないとわかった。
「なぁーんてなっ」
にかっと明るく笑う。先程の無表情が嘘なのかと思うほどの変貌振りだ。びっくりしたかー?と言いながら僕の前を歩く正臣に、僕は。
「正臣」
呼び掛けた。んー?といつもの様子で振り返る彼。
「探しに行くよ」
きっぱりと言った。
「そして、見つける。いきなり、だろう?何も言わないでいなくなるなんて、許さないよ」
僕が見ている方向と同じ方向を見ている正臣。先程肩を組んだままこちらを振り返ったけれど、向き直したようだ。
「だから」
僕は正臣の背中に近づいて、肩を掴み――
「僕に何か言ってからいなくなりなよ」
こちらを、振り向かせた。
滅多に見られない驚いた顔をした彼。耐え切れず僕は吹き出した。
「何て顔してるの」
「帝人」
「なに」
ぎゅっと、抱きしめられる。
「帝人」
耳元で名前を呼ばれて、またなにと応えた。その声が泣きそうだったことには気づいたけれど、触れてやらない。
数分間、いやもしかしたら数十秒なのかもしれないけど…抱き合って。此処が人通り少なくて良かったなあなんて思いつつ。
離れた。そのとき正臣は普通で、
「帝人ぉ、俺は感激したぞ!まさかこんなに帝人が俺を想ってくれてるなんてなぁっ!まあでも心配はいらない。紀田正臣はいなくならない、当たり前だろ?」
「うん、だから例えばの話でしょ?本当に僕が正臣を探すわけないじゃん」
「冷たい!冷た過ぎるぞ帝人!さっきのデレは何処へいったんだっ」
「デレてないし」
こんな風にお互い冗談を言いながら別れた。
――次の日、正臣はいなくなった。
作品名:Good-by,hello 作家名:普(あまね)