赫く散る花 - 銀時 -
「……そうか」
感情のこもらない声で桂は言った。
銀時は桂を見る。
すると。
「気にするな。俺にも話したくないことがあると言っただろう?」
桂は口元にかすかな笑みを浮かべた。
それを見て、銀時の胸のなかでなにかが暴れた。
あまりにも激しくて、押さえようにも押さえきれない。
溢れだす。
「では、帰ろ……」
踵を返しかけた桂のほうに腕を伸ばし、つかまえる。
桂が眼を見張っているのが一瞬見えたが、構わずに引き寄せた。
抱き締める。
「なっ……!」
「好きだ。好きなんだ、お前が」
これまでずっと抑えこんできた想いが迸る。
言うつもりはなかった。一生、伝えなくていいと考えていた。
桂が自分に懸想する男をひどく嫌っていることを、よく知っている。けれど、言って嫌われるのはまだいい。それよりも、裏切られたと桂が思うかも知れないのが恐かった。信頼している相手に裏切られて傷つかない者はいない。こんなことで傷つけたくなかった。
どうせ時が過ぎれば、どれほど強い想いでも醒めてしまうだろうと思っていた。
いつか諦められると思っていた。
だが、現実は違った。
長く離れていても忘れられなかった。
再会してわかったのは、自分のなかの想いはまるで醒めていないということ。
どうしても諦められない。
抑えこみ続けるのは、もう、限界だった。
「……桂、お前が、欲しい」
桂の頭の横でそう告げた。
そして、腕の力を緩める。
桂は後退った。その表情は強張っている。
「俺は物ではないから、欲しいと言われても、やれん」
「そういう意味の欲しいじゃねェって、わかってるんだろ」
銀時を見据える桂の眼には怒りがにじんでいた。
どこからどう見ても、拒絶しているようにしか見えない。
拒絶されるのはわかっていた。
最初から望みはなかったのだ。
それでも諦められず、ついに抑えこむことができなくなってしまった。
その結果は、予想されたとおり。
桂は口を開く。
「友人としてではないのなら、俺はお前が好きじゃない」
はっきりと言った。
予測の範囲内の返事。
しかし、心は痛んだ。
作品名:赫く散る花 - 銀時 - 作家名:hujio