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赫く散る花 - 銀時 -

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 銀時はそれを受けとめる。
「別に構わねーけど?」
 そう軽く言い、椅子から立ちあがった。

 外はすっかり夜で、空気は冷えていた。
 話したいことがあると言って銀時を万事屋から連れ出したのに、桂は黙々と道を歩いていた。
 だが、銀時はなにも聞かずに桂の横を歩く。時折、チラと横目で桂の横顔を観察したりしながら。桂は気難しげな表情をしていた。なにかを深く考えているようにも見えた。
 ふと、桂が足を止めた。だから、銀時も立ち止まる。
「寄り道するぞ」
 桂は銀時のほうを見て、その後、反対方向にある公園のほうを見た。
「ああ」
 今歩いている道にはまばらだが人通りがある。人に聞かれたくない話をするには向いていない。もっとも、桂がなにを話すつもりなのか知らないけれど。
 公園に入っていく。
 昼間であれば遊ぶ子供たちがいるだろうが、さすがにこの時間にはいない。大人もいない。いるのは、銀時と桂だけである。
 周囲には木々が植えられ、公園と外を隔てている。
 無言で桂は公園のなかを進み、やがてベンチの近くで立ち止まった。
 ベンチからさほど離れていない場所に立つ街灯があたりを照らしている。
 桂は身体ごと銀時のほうを向いた。だから、銀時も桂のほうに向き直る。
 向かい合って立つふたりの間の距離は短い。
 なにかをためらうように桂が眼を伏せた。銀時はそれを至近距離で見て、長い睫毛だと改めて思う。一瞬のちに、桂は眼をあげて銀時をじっと見た。
「……お前、孤児だったのか?」
 そうたずねられ、銀時は困惑する。なぜそんなことを聞くのかわからない。
 銀時が眉根を寄せて黙りこんでいると、桂はふたたび口を開いた。
「寺であの光景を見てからのお前の様子は明らかにおかしかった。だから、もしかして、お前も孤児で、あの子供たちと自分を重ね合わせているのではないかと思ったんだ。間違っていたらすまないが」
 あ、と銀時は思う。
 意味は自分で考えろ、と銀時は車内で桂に言った。だから、桂は銀時の奇妙な質問の意味をずっと考えていたのだろう。そして、桂なりの解答を出した。つまり、銀時は孤児だった過去があり、寺の子供たちを見てその頃のことを思い出し、そのため取り乱して突飛なことを言ってしまったのだと。
 それは半分アタリで、半分ハズレだ。
 親はいないも同然と銀時は思っている。
 自分は捨てられたのだと思っている。あれはそういうことだろう。そう思わなければ、家族への想いを断ち切ることはできなかった。断ち切らなければ、よりいっそう苦しいだけたった。
 だから、孤児だったというのは当たっていると思う。
 しかし、銀時のした質問については完全に外れていた。桂の出した解答では、銀時の質問にはまるで意味がなかったことになる。
「……これまで、お前の過去については聞かずにきた。話したいことなら自分から話すだろうと思ってな。それに、深く詮索すれば自分に返ってくる。俺にだって話したくないことがある。聞かれたくなければ、自分も聞かぬことだと思っていた」
 桂は淡々とした口調で話す。けれど、銀時に向ける眼差しは真摯で。
「だが、話せば楽になることもある。もし俺で良ければ、お前の過去を聞かせてくれないか?」
 銀時のなかに踏み込んでくる。
 思い返せば確かに、桂から過去をたずねられたことはなかった。
 それなのに今はじめて聞いたのは、おそらく銀時を気遣ってのことなのだろう。過去のせいでおかしな言動をしたのならば、その過去をなんとかしなければならないし、そのためにはまず、問題となっている過去について聞く。多分、そういうこと。
 友情、というものなんだろうと感じる。
 しかし。
「悪ィけど、あんま話したくねェんだ」
 銀時は視線を逸らす。
 話したくないどころか、本当は思い出したくもないことだ。
作品名:赫く散る花 - 銀時 - 作家名:hujio