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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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地面なんて遥か遠く、落ちれば確実に死ぬ。
 殺されて、たまるかってんだ!
 寸でのところで淵を掴むこと成功した。右手一本で掴み、身体を持ち上げるようにして左手も。

「あー、チェックメート?」

 野犬は余裕を持って包囲していた。身体を持ち上げて階段の上に戻れば、その途端野犬に食い殺されるだろう。このままぶら下がっていれば、殺されることは無いが何れ力尽きて落ちるだろう。落ちれば、身体を打ちつけ、衝撃に耐えられない脆弱な骨々は砕け、内臓は潰れ、血液が辺りに飛び散ることとなるだろう。

「つーか、其処の君、痛いし、重い」

 相も変わらず足首に噛みついている野犬に語りかける。
 彼、又は彼女は、落ちれば死ぬと言うことを理解しているのだろう。兎に角全力で足首を噛んで己の体重を支えている。暴れようとすらしない。おとなしいうちならば、振り落すことも出来るだろうが、生憎と俺は博愛主義なんでね。むやみやたらに殺したくないんだよ。

「フィクションだけど。殺したくないってのはマジな話。でも、俺も死にたくないしな」

 魔理沙に感謝だな。魔理沙の箒にぶら下がることに慣れたせいか、全く疲れや辛さを感じない。
 俺が落ちるよりも前に、きっと彼、又は彼女は落ちてしまうだろう。それを証明するように、彼、又は彼女……面倒だ。野犬Aの足を噛む力が段々と強まってる。
 力尽きる前兆だ。

「てか痛いんだけど。洒落にならないって」

 野犬Aの牙で空いた肉の穴に野犬Aの体重がかかっているんだ。どんどんと広がっていることだろう。多分、もう抉れている。
 肉が露出しているなかに、きっと野犬の口内の細菌は侵入していることだろう。
 放っておいたら、狂犬病でも発症しかねない。それだけでもなく、細胞が壊死、足を切断しなければならない、なんてことも有り得る。
 早いところ治療したいけど、状況が状況。
 打開出来る方法なんて無く、待ち受けるのは確実な死。

「……いや、一か八か、やるか?」

 はっきりと言えばそれは『大博打』で、それに勝つ確率はかなり低い。
 野犬Aを振り落した後、階段の上に上って野犬どもを蹴散らすと言う方法。
 野犬Aが落ちれば、残りの野犬は七匹。七匹の野犬を、片足を負傷した状態で蹴散らすなんて可能だろうか。ましてや、俺は魔理沙のように魔法も弾幕も扱えない。
 ……文句なんていってられない。
 やるしかないのだ。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶