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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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 ふぅ、と溜め息を一つ吐き、覚悟を決める。

「いち」

 カウントダウン開始。

「にいの」

 腕に力を込める。

「さん!」

 斬! と言う切断音が響いた。「え?」と驚く暇も無く、もう一度。
 階段の上で、何かが起きている。
 それを確かめるべく身体を持ち上げ、階段の上へと顔を持ってくれば、生温かい液体が頬に触れる。鉄臭く、ぬるりとした感触。赤い色。
 血。
 一体誰の?

「ぎぃあん!」

 野犬の悲鳴が響いた。
 その声に釣られて顔を上げてみれば、悲鳴を上げたと思われる野犬に、一本の棒が突き刺さっていた。
 いや違う。あれは棒なんかじゃない。
 白銀に輝く、ありとあらゆるモノを切断する刀だ。
 それを持つのは、一人の少女。
 少女は野犬を蹴り飛ばし刀を抜くと、振り返って一閃。鼻先を切られた野犬を悲鳴を上げ仰け反る。
 一歩、少女は距離を詰め紫電を作り上げる。紫電をなぞる様に野犬の血が舞い上がる。
 残る野犬は三匹。
 少女と野犬は距離を取り対峙する。野犬は先程の俺にしたように、じりじりと包囲しようとするが、如何せん数が少なすぎる。
 少女は一瞬で左端にいる野犬に詰め寄り、一閃。その横にいたもう一匹が直ぐ様反応し、飛び掛かるが、少女は冷静に対処した。
 飛び掛かった野犬に対し、一歩後ろに下がり膝蹴り。歯を何本かへし折られた野犬は、痛みに悶えのたうち回った挙句、階段から落ちて行った。
 残る一匹。
 少女は鋭い眼光で一匹を睨みつければ、野犬は相当に恐かったのだろう、踵を返し逃げて行った。

「大丈夫ですか?」

 少女は俺に目線を変えると、そう問いかけてきた。

「ああ、大丈夫だ。助かったよ、有難う」

「どういたしまして。お手伝いしましょうか?」

「いや、このくらい一人でも上れる」

 証明でもするように軽やかに階段の上へと上がる。

「おや、君のことを忘れていた」

 足に噛みついたままの野犬A。俺と一緒にぶら下がったままだから、何が起きたのかを把握していないのだろう。
 その眼が忙しなくいったりきたりを繰り返し、噛みついたまま状況把握をしようとしていた。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶