サイケデリック兄弟~外出~
実体化ができるので、俺達は当然外にも出かけることができる。
まぁいつものことながら、池袋に着くなり俺達は街の視線を集めることになった。兄は白いコートに白いジーンズに白いヘッドフォン。俺は白い髪に白いスーツに蛍光ピンクのシャツに黒いネクタイ。街から浮いている感じがして仕方がなかった。まあ人間じゃないし気に入っている格好だからその辺はどうでもいい。ひそひそ声でコスプレだとか言われるのは少し思うところがあるが。
それ以上に。
「でりっく!これみてみて!」
35番出口を出てすぐ、兄は正面の家電量販店に向かっていった。ついていくと、画面しかない機械を見てテンションを上げていた。確か今度出る国内産のパソコンだったと思う。
「モバイルサイズもあるんだぁ…いいなぁ…」
俺はあまり興味が引かれないからスラックスに手を突っ込み、後ろからその様子を眺めていた。ショーケースのガラス戸に両手をついてものを眺めるさまはまさしく新型のゲーム機を興味津々に覗き込む少年そのものだった。見た目は同い年のはずなのに本当、何で兄はこんなにも幼く見えるのだろうか。
しばらく動きそうにもなかったから、俺はオーディオ機器の方に向かった。くるっと見回せば、目当てのコーナーはすぐに見つかった。
「…これ」
まさに雑誌で見た最新型のヘッドフォンがあった。思わず手に取り眺めてしまった。大きさも形もベストだった。一つ難点をあげればカラー展開が黒赤銀の三色しかない事だった。白くらいスタンダードに加えておけよこの野郎。
しかしふと思った。俺はあくまでパソコンの中の住人だ。この世界のものを買ったところで持ち込めるわけがない。そう思った瞬間俺は泣く泣くヘッドフォンを元に戻した。よし、見なかったことにしよう。……ちくしょう。
結局何も買わず、俺達は店を出た。すると、俺達をじっと見てきた学生と目があった。真面目そうな風貌だ。
「あ、みかど君だ」
兄は面識があるらしくそっちに駆けていった。みかど、帝人。あぁ、「竜ヶ峰帝人」という奴だ。えっと、来良学園の学生でダラーズの創始者、身長は……何書いてんだマスターは。やけにデータが細かいな。ストーカーか?
「こんにちは」
「こんにちは、みかど君もかいもの?」
「はい。今度出るタブレット型のパソコンがどんなものか見たくて」
見かけによらずパソコンに明るいやつなんだろうか。竜ヶ峰の目は輝いていた。
「それなら見本がおいてあったから見てみるといいよ!」
ほんとにいいやつみたいだよ、と兄は笑いながら言った。さっきすごい見てたからな。スペックとか書いてあった紙の内容全部覚えているんじゃなかろうか。
ふと竜ヶ峰の視線が俺の方に向いた。初めましてだな。
「えっと、この人は」
「おれの弟だよ。でりっくっていうんだ」
「弟?!」
お、この反応は初めて見た。全く信じられないといった表情で、竜ヶ峰は俺を見上げた。なかなかに可愛いサイズだ。
「『便宜上』だ。本気にするな」
「あ、そうで」
「べんぎ上じゃないもん!弟だもん!」
兄は結構必死になって抗議した。見た目じゃ身長的に俺の方が上に見えるだろうな、本当。その喋り方も態度も幼い子供そのものじゃないか。ほら竜ヶ峰だって納得した顔でいるぞ。
「兄として振る舞うならまずその平仮名ばかりの言葉を止めてくれ」
「か、かんじも交えてるよ!」
……ごく僅かだけどな。
おっと、あんまり引き留めては竜ヶ峰に迷惑だな。
「じゃ、またな」
「はい、さようなら」
一礼して竜ヶ峰は家電量販店に入っていった。礼儀正しいやつは好きだな。
――― そのまんま静雄さんだ……臨也さん、一体何が楽しいんだろう……
帝人は思わず臨也のことが心配になった。
まぁいつものことながら、池袋に着くなり俺達は街の視線を集めることになった。兄は白いコートに白いジーンズに白いヘッドフォン。俺は白い髪に白いスーツに蛍光ピンクのシャツに黒いネクタイ。街から浮いている感じがして仕方がなかった。まあ人間じゃないし気に入っている格好だからその辺はどうでもいい。ひそひそ声でコスプレだとか言われるのは少し思うところがあるが。
それ以上に。
「でりっく!これみてみて!」
35番出口を出てすぐ、兄は正面の家電量販店に向かっていった。ついていくと、画面しかない機械を見てテンションを上げていた。確か今度出る国内産のパソコンだったと思う。
「モバイルサイズもあるんだぁ…いいなぁ…」
俺はあまり興味が引かれないからスラックスに手を突っ込み、後ろからその様子を眺めていた。ショーケースのガラス戸に両手をついてものを眺めるさまはまさしく新型のゲーム機を興味津々に覗き込む少年そのものだった。見た目は同い年のはずなのに本当、何で兄はこんなにも幼く見えるのだろうか。
しばらく動きそうにもなかったから、俺はオーディオ機器の方に向かった。くるっと見回せば、目当てのコーナーはすぐに見つかった。
「…これ」
まさに雑誌で見た最新型のヘッドフォンがあった。思わず手に取り眺めてしまった。大きさも形もベストだった。一つ難点をあげればカラー展開が黒赤銀の三色しかない事だった。白くらいスタンダードに加えておけよこの野郎。
しかしふと思った。俺はあくまでパソコンの中の住人だ。この世界のものを買ったところで持ち込めるわけがない。そう思った瞬間俺は泣く泣くヘッドフォンを元に戻した。よし、見なかったことにしよう。……ちくしょう。
結局何も買わず、俺達は店を出た。すると、俺達をじっと見てきた学生と目があった。真面目そうな風貌だ。
「あ、みかど君だ」
兄は面識があるらしくそっちに駆けていった。みかど、帝人。あぁ、「竜ヶ峰帝人」という奴だ。えっと、来良学園の学生でダラーズの創始者、身長は……何書いてんだマスターは。やけにデータが細かいな。ストーカーか?
「こんにちは」
「こんにちは、みかど君もかいもの?」
「はい。今度出るタブレット型のパソコンがどんなものか見たくて」
見かけによらずパソコンに明るいやつなんだろうか。竜ヶ峰の目は輝いていた。
「それなら見本がおいてあったから見てみるといいよ!」
ほんとにいいやつみたいだよ、と兄は笑いながら言った。さっきすごい見てたからな。スペックとか書いてあった紙の内容全部覚えているんじゃなかろうか。
ふと竜ヶ峰の視線が俺の方に向いた。初めましてだな。
「えっと、この人は」
「おれの弟だよ。でりっくっていうんだ」
「弟?!」
お、この反応は初めて見た。全く信じられないといった表情で、竜ヶ峰は俺を見上げた。なかなかに可愛いサイズだ。
「『便宜上』だ。本気にするな」
「あ、そうで」
「べんぎ上じゃないもん!弟だもん!」
兄は結構必死になって抗議した。見た目じゃ身長的に俺の方が上に見えるだろうな、本当。その喋り方も態度も幼い子供そのものじゃないか。ほら竜ヶ峰だって納得した顔でいるぞ。
「兄として振る舞うならまずその平仮名ばかりの言葉を止めてくれ」
「か、かんじも交えてるよ!」
……ごく僅かだけどな。
おっと、あんまり引き留めては竜ヶ峰に迷惑だな。
「じゃ、またな」
「はい、さようなら」
一礼して竜ヶ峰は家電量販店に入っていった。礼儀正しいやつは好きだな。
――― そのまんま静雄さんだ……臨也さん、一体何が楽しいんだろう……
帝人は思わず臨也のことが心配になった。
作品名:サイケデリック兄弟~外出~ 作家名:獅子エリ