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サイケデリック兄弟~外出~

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 ~帰宅道中~



 この状況は一体なんだろう。
 変わった格好をした人間たちが俺たちの周りを囲み、何かを言っている。この表現は適切だ。生憎と俺はヘッドフォンを着けていて、且つ周りの音が聞こえなくなるくらいの音量で音楽を聴いている。それは兄も同じで、しかしどういう訳か俺の腕を掴んでいる。
 さっき、何かと言ったがとりあえず「読唇術」なるものが入っているので何を言っているかは判っている。ただ、その内容は「俺」に対してのものじゃないから何かと言った。それはそうだろう。何で面識もない男たちに「この間は世話になった」とか「おかげで検挙されかけた」などと言われなければならないのか。
 しかしそろそろ限界だ。俺はこの後家に帰って臨也の手伝いをしなければならない。限界は向こうも同じらしい。何もしなければ穏やかに解決すなんて思っていたが、全く一言も発さない俺はさぞかしこういった相手には気に食わない存在のようだ。握りしめた拳が飛んできた。喧嘩慣れしたスピードで迫ってきた。それでも、機械の俺には遅い。二回、三回、四回と投げるように叩きつけてくるが、どれも直線的で変化がない。それに、どうやら傷を患っているようだった。道理でだんだん威力が落ちているわけだ。
 とりあえず一回軽く蹴っ飛ばして逃げようと思ったが、やけに間の抜けた悲鳴を聞いてふと視線をずらした。
「おいおい、こいつがどうなってもいいのか?」
紫のバンダナをした男が、“愚かにも”兄を人質に取っていた。確か人質を取られたときはヘタに動かない方がいいんだよな。俺はあげかけた脚を素直に下ろした。
 すると先ほどまで拳を奮っていた男は気持ち悪い笑みを浮かべた。いやむしろ俺はご愁傷様なんて言いたかったりするのだが。腕の中の人質、今どんな表情してるか分かっていますか。
 そしてついに魔の声が響いた。
「ひとじちをとるのはよくないね」




   *  *   *




 数分後、男たちは深手こそ負わなかったが、その場に突っ伏したくなるほどには被害をこうむった。
 兄は強い。多分マスターの理想も入っているんじゃないだろうか。一撃の重さは俺の方が上だが、兄は的確だ。俺だって負ける。
 兄はジーンズについた埃を払った。
「ふぅ、じゃあかえろっか」
「あぁ」
最後に一度、俺はかわいそうな彼らを振り返った。本当、ご愁傷様。