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家庭教師情報屋折原臨也9-1

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本格的な冬がやってきた。一年最後の月が訪れ、何かとせわしない空気が街を包んでいた。東京で雪が降った日はまだ一度もない。昼間は薄い層の雲が並んだ水色の空が広がり、夜は澄んだ深い紺色の空が広がるようになった。目を凝らすと一等星の輝きがネオンに負けず輝いていた。日を追うにつれ陽も短くなり、帰路に着くころにはすでに日が落ち始めていた。

 平日の午前は学生の数は減ったが、社会人は年末の三日前ほどまで休みはない。交差点が赤信号に変わり、社会人の一団は足を止めた。その一団に静雄は混ざっていた。制服の上にコートを着込み、手には手袋を首にはマフラーと冬の装いに身を包んでいた。息を吐くとそれは白く曇り、やがて街に溶けていった。
――― 冬、だなぁ
鞄を持ち直し、静雄は青信号に変わった横断歩道を渡った。道行く途中ふと脇を見れば店先がクリスマスで彩られていた。恒例のツリーに赤や青や緑のメタリックで塗られた丸い飾り、星形に切り抜かれたシール、窓ガラスには白いスプレーでサンタクロースとトナカイが描かれていたり、様々な装飾が店を飾っていた。ついで商品に視線をずらせば、クリスマス特価と言わんばかりに様々な商品が割り引かれていた。
 ――― クリスマスか……
ふと思えば、クリスマスはそろそろでは無かっただろうか。携帯でカレンダーを確認すれば、クリスマス二日前だった。二学期が終わってからも、ずっと教師の有志で行われている補講で学校に通っていたため全く気にしていなかった。
 ――― 確か臨也の奴、明日家に来るよな
いろいろお世話になったので折角だから何かしようかなと思い立った。

 二十四日、朝。
 朝の気温がぐっと下がり、寝具からなかなか出られなくなり始めた。臨也は無理やり起床するなりすぐに長袖のパーカーを羽織り、欠伸をしながらキッチンに入った。小型の雪平鍋に水を張りコンロに乗せ火をかけ、食器棚からマグカップを出しコーヒーとクリープ、砂糖を入れ食パンをトースターに入れた。
 湯をコーヒーに注いで軽く回し、焼き上がったトーストを口に銜え、臨也はテレビをつけた。丁度朝のワイドショーが始まったところで、各紙の朝刊をパネルに出して解説とコメントを付けていた。
 次第に目が覚めてきたところで、番組はクリスマス特集に入った。
 ―――あぁ、今日クリスマスイヴか
口の中のざらつきをコーヒーで流し、カップをシンクにおいて臨也は自室に戻った。特に考えることなく着替え、黒いコートを羽織って、携帯や財布、そして数本のナイフを身に着けて臨也は家を出た。