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しろくあふれる

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じかに陽のはいってくる、まぶしい車道沿いを抜ける。荒くあがった息を整えて、額に吸いついている汗の粒をぬぐった。たぶん、この公園である。すぐというわけではなかったが、わりあい近かった。脈が妙にはやい。てのひらにひどい汗をかいている。ぐずぐずと湿っていてぬるい。相当である。そうと公園の外からルートヴィッヒの姿を探す。目立つのですぐに見つけてしまう。噴水を抜けた先、ベンチで本を読んでいる。時折顔をあげてふらふらと視線をやっている。たぶんフェリシアーノを探しているのだろう。とたんに脈が高まってゆく。息を吸って吐いて、しかしながら心音の安定はなかった。いっこうにおさまらぬ身体をひきずって、噴水の横をするりと滑り入る。さいごにいっときやはり迷って、それでもギルベルトは口を開いた。おい!…ん、ああ兄さん、話は終わったのか、フェリシアーノは?フェリちゃんは今席外してくれてる。図らずも声は低く鋭さを含んだ。ルートヴィッヒ、何十年ぶりかにこういう呼び方をした。話したいことがある。彼は少し、面くらっていた。
悟られないよう静かに息を吸う。ぐらぐらと胃のなかがゆれるようだった。またてのひらに汗をかきはじめる。いっしんに見つめる青い目は、美しくけだるい。倦怠感につつまれたような目をしている。じいとその目をみつめていた。そうするたびに咽喉が幾度も上下して、もううまく話せるような感覚ではなかった。ルートヴィッヒ。ひときわ眼前のひとの瞳のいろが強くなる。かまえたくちびるがおもわず震えた。ルートヴィッヒの右の手の甲にふれる。……好きだ、何百年も昔からずっと好きだ。そうしてしぼりだした声もやはり震えていた。みっともねえなあとおもって少し笑う。なあ、どうだろう。その肩がすこしゆれた。ふれていた右手の甲をすうと撫でる。けだるそうな瞳がわずかに細められた。そうしていっとき自分も目をとじた。そこここに集まったやわく白い光が、ひどくまぶしいように思われたので。


しろくあふれる ( 20110403 / 伊+普→←独 )
by,reqest - thanks!! and happy birthday!!

作品名:しろくあふれる 作家名:高橋