好きの流星(小ネタよせ集め)
香水の話
「やあ帝人くん、偶然だねえ」
「…こんにちは、臨也さん」
「あは、嫌だなあ。そんなあからさまに胡乱な目でみないでよ」
「…そう思うなら、いい大人が通せんぼとか止めてください。しかも偶然じゃないでしょうって突っ込み待ちとかあからさま過ぎます」
「まあねえ、帝人くんの部屋の前だからねえ、偶然ではないよねえ」
「その間延びさせた語尾止めて下さい。それで、何の用なんですか」
「ああ、うん。特に帝人くんに用って訳じゃないんだけどね。ちょっとこっちに仕事の用があってさ。その前に会いたいなって思って」
「……、そ うですか」
「うん」
「で、すみません、その広げた両腕なんですか」
「俺のここ、空いてるんだけど」
「見れば分かります」
「ちなみに特等席なんだよね」
「何のですか好奇の目で見られる特等席ですか」
「更に言うなら永遠に予約済みなんだよねえ」
「…………、」
「ね、ちょっとだけ。だめ?」
「だから、」
「いま誰もいないし。少しだけ。仕事あるのは本当だし、ちょっとだけっていうのも本当」
「、っ…仕方、ないですねっ……」
「はは、…っいて、ちょっ殴らないで、」
「笑うからですっ」
「いや、だって。あんまり帝人くんから抱きついてくれないでしょう。だから嬉しくて」
「貴方がしろって言ったんでしょう、って苦し、…!」
「もうちょっと」
「……、?いざやさん」
「ん?」
「香水、変えました?」
「え?」
「いつもと香りが違うから、」
「…え、ああ、なるほど。…そういえば聞いたことなかったけど」
「はい?」
「俺がいつも付けてる香水、帝人くん好き?」
「は?」
「ほら、あの香水は俺が好きで使ってるけどさ。香りの好みって人それぞれだろう。帝人くんが好きじゃない香りだったら嫌だなあって」
「あの香水は臨也さんのイメージだから…好きか嫌いなんて、考えたことなかったです」
「 、」
「あの香りがすれば臨也さんを思い出すし、臨也さんの服もベットもあの香りがするから余計に臨也さんのイメージが刷り込まれてるっていうか、」
「あ、うん、」
「うーん、でも…臨也さんが付けてるから、あの香りイコール臨也さんって思ってますけど」
「うん?」
「臨也さんらしいのは今の香水の方ですかね」
「…、ちなみに前の香水と今日の香水、どっちが好き?」
「今の香水の方が好きですね」
「…………、そう」
「ちょっ、苦しい、ですってば…!」
(今日は香水を付け忘れたんだって言ったら、君はどんな顔をするんだろう)
作品名:好きの流星(小ネタよせ集め) 作家名:ホップ