白雲
あとがき
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
春田賀子、3作目の二次小説は瀬川貴次先生の「暗夜鬼譚」の後日談、
"白雲"でした。
需要はないだろうと思いつつも書かずにはいられなかった
「暗夜鬼譚」のその後のお話。
構想時点では賀茂権博士と深雪がくっつくあたりのラブラブな話だったのですが、
どうしても気になった深雪の立場。
「暗夜鬼譚」最終巻の「剣散華(下)」で承香殿女御が男御子を産んでいたので、
弘徽殿女御という後宮争いの敗者に仕えている人物としての深雪を描きたくなった
みたいです。
実際、弘徽殿女御のモデルとおぼしき藤原述子は若くして疱瘡で亡くなっていますし
(「暗夜」の始まるより以前の時代に亡くなっています)、きっと「暗夜鬼譚」の弘徽殿
女御もフィナーレ後ほどなく死んじゃうんだろうなぁというイメージは前からあって、
その話とラブラブな2人の話が混じって結局前者が勝っちゃった、みたいな。
最後に出てくる和歌は万葉集の大伴家持の詠んだものです(万葉集17-3958)。
歌意:
(無事で、と言ったのに今は白雲となって立ちなびいていると聞いたので悲しい。)
弟の書持(ふみもち)死去の知らせを受けて詠んだ歌だとか。
本当は古今集の歌を使いたくて、しかも有名な今もよく知られている哀傷歌があったの
ですが、「暗夜鬼譚」の時代にはまだ詠まれていなかったので諦めました。
古今集自体はすでに成立していたので深雪も知っていたと思うのですが、古今集は
最初から現在の形だったわけではなくて、後から追加された歌もあり、その歌はその
「後から組」だったので。
カタカナ言葉の外来語は「暗夜鬼譚」世界では普通に使われているので"白雲"でも踏襲
しましたが、時代の合っていない古典の題材はタブーっぽいので。
書いてみて、あおえの動かしやすさに驚きました。
そういう意味では夏樹を出さなかったのは本能的に扱いにくいと察知したのかも…。
あと、1箇所、斎院の馨子の名を出そうとしたのですが、流れが悪くなるので泣く泣く
カットしました。出したかった…。
それから賀茂権博士を保憲と呼ぶのはちょっと違和感アリだったのですが、主役が
深雪でその夫なのにいちいち権博士じゃああんまりなので保憲と呼ぶことにしました。
ぐだぐだ書いてきましたが、時代物ばかり3作書いたので
そろそろ現代劇もやってみようと思っています。
ターゲットは「ごくせん」です。
あの世界観が描けるのか…!?
それではまた。
2011年4月
春田賀子