ぐらにる 流れ ぷんぷん
るなんておかしいし、さらに、説明を求めたら、痴話喧嘩だから詮索するな、と言われま
した。ですが、あなたの所在が掴めないし、携帯端末を置き去りでは、あまりにも危険な
ので、アレルヤも連れて、あなたの探索に降りて来たんです。」
・・・・はあ? 何だよ、それは・・・・・
つまり、刹那は言い訳するのに、痴話喧嘩なんて言葉を使ったらしい。あの利かん坊に
は、少し言葉の勉強をさせてボキャボラリーを増やそうと真剣に考えた。
ぷんぷんと怒っているティエリアは、自分の携帯端末で、刹那とアレルヤを呼び戻して
いるので、それを横目に玄関を出ようとした。とりあえず、刹那を先に捕まえて、何を言
ったのか確認する必要がある。
「どこへ行くつもりですか? ロックオン。まだ、刹那と逢いたくないのですか? 」
背後から肩に手をかけられて、ティエリアの低い声が聞こえる。怒っているのはわかる
のだが、そんなに怒らなくてもいいだろう。ぐいぐいと腕を取られて、さらに奥のリビン
グへと連行された。何もない刹那の部屋には、ソファなんてものもないので、とりあえず
、そこにあるベッドしか座るところもない。
・・・・・うーん、どう説明したもんかなあー・・・・・
実際の話はできないし、かと言って、刹那が、どう言ったのかもわからない。これでは
、自分が口を開いたら、さらに、混乱が広がりそうだ。
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しばらく、針のムシロ状態で、その沈黙に耐えていたら、刹那が、飛び込んできた。そ
れから、今度は、刹那がぐいぐいと台所へと俺を連れて行く。
「ティエリア、これはプライベートの話だから聞くな。」
一緒に動こうとしたティエリアを制止して、台所の奥へ隠れるようにして逃げ込む。そ
れから、刹那の後ろのポケットに入れていたらしい俺の携帯端末を取り出して手渡した。
小声で、こっそりと刹那に問いただすと、刹那は冷静に状況を説明した。
「おまえ、何を言った? 」
「あんたと俺が痴話喧嘩をしたということになってしまった。・・・・そのほうが、状況
としては良かろうと、そのまま肯定した。」
「いや、だから、刹那君。痴話喧嘩っていうのはな・・・・」
「だが、あんたと俺が、そういう関係だと思われていれば、休暇を一緒に過ごすことに関
しての言い訳はいらなくなる。」
「・・あ・・・うん・・・・」
「別に、それで困ることはない。そういうことにしておけ、ロックオン。」
「ああ、まあ、そうだけどさ。」
「多少スキンシップを多めにするが驚くな。あんたのためだ。」
刹那にしてみれば、それでもいいだろうという判断だったらしい。ただ、捜索するなん
てことになったのだけが、面倒だったと言う。
「ごめんな、刹那。もう、これっきりにするよ。」
「構わない。ロックオンが『気晴らし』を楽しむのは悪いことじゃない。相手は多少、問
題だが、あんたの様子からすれば、バレていないみたいだしな。」
「でも、おまえ、俺と、そういうことをしているって思われるんだぞ? 」
「今のところは、それでもいい。・・・・・食料が尽きた。何か作ってくれ。」
「ああ、わかった。」
強引に圧し切られる形で、話は決着した。ぎゅっとへ刹那が、ロックオンの腕にすがり
つくようにして、リビングへど出て来る。
「ティエリア、痴話喧嘩は解消した。今から食糧の買い出しに出る。」
すりすりと、いつもの刹那らしくない様子で、ロックオンの腕に摺り寄っているので、
ティエリアも、ほお、と、息を漏らした。
「えっと、ごめんな、ティエリア。大した原因はないんだよ。ちょっと、頭に血が昇った
だけなんだ。」
言い訳じみている弁解をしつつ、刹那を腕に縋り付かせたままで、玄関へと足を進めた
。いろいろと言いたいことはあるらしいティエリアは追い駆けてきたものの、一緒に来る
つもりはないらしい。また、後から小言は拝聴せねばなるまい、と、ロックオンも、それ
については覚悟している。
外へ出て、刹那が腕を離した。
「おまえさん、すっかり成長したな。」
呆れたようにロックオンは吐き出したが、刹那のほうは、どこ吹く風だ。保護者役の内
緒の『気晴らし』に協力できることが、単純に楽しいらしい。
「ロックオンは趣味が悪い。」
「俺も、そう思う。」
「俺の時も頼む。」
「ん? 相手ができたか? 」
「いや、まだだ。」
「できたら、おまえは、そっちを優先すればいい。たぶん、俺のは、それまでに終わって
るさ。」
ちょっと困ったように刹那の頭を、ぐしゃぐしゃと掻きまわして、ロックオンが微笑ん
だ。
作品名:ぐらにる 流れ ぷんぷん 作家名:篠義