ぐらにる 流れ ぷんぷん
も直接対するガンダムマイスターだと知ったら、彼は、どうするのだろう。それでも、し
つこく追い駆けるのだろうか。
・・・まあ、あんたに悟られるようなヘマはしないけどな・・・・・
わかったところで、立場は変わらない。だから、隠し通すしかない。寝顔を見ている場
合ではないな、と、立ち上がろうとしたら、後ろ手に引っ張られた。どすんと、ベッドに
尻餅をつく。
「・・・どこへいく・・・・」
「朝飯の支度。・・・・フレンチトーストを作ろうと思うんだけど、それでいいか? 」
「・・・ダメだ。姫は、そんなことをしなくていい。」
「いや、あんた、出勤だろ? 」
いくら上級大尉という高い地位にいるからといって、遅刻するのはまずいだろう。それ
に、これから働くのだから腹に何かしら詰めておくほうがいい。それなのに、彼は、ぐい
ぐいと引っ張って、仕舞いに、俺を自分の上に倒れさせた。
「・・・今日は休みだ・・・」
「はあ? 」
「私だって体調不良で、午後から出勤という日があってもおかしくない。」
「い? それって、ずる休みってことか? グラハム。あんまり感心しないぜ? 」
たぶん、彼のことだから、堂々とズル休み宣言をしてきたのだろう。で、また、彼の友
人は、それを認めたに違いない。すべては、「姫が待っているから」 という呪文で、説
き伏せているのだとしたら、もう絶対に、その友人には会いたくない。
「・・・・ニールが帰る日なんだ。見送らせてもらうさ。・・・だから、ニール、最後に
私にきみをくれないか? 絶対に、監禁なんてしないから、必ず、きみをエアポートまで
連れて行くから、きみを欲することを許して欲しい。」
そして、堂々とズル休み宣言をしたであろう彼は、ずるずると俺を自分の下に敷き込ん
で、熱烈に口説いてくる。抱くまで諦めないだろう。それに、抱かれるのは構わない。き
っと、俺は目的地に着くまで、ぐっすりと眠れるだろう。
「グラハム、俺があんたに、また早く会いたくなるように、身体に覚えさせてくれ。」
だから、返事は肯定だ。ここにいると毎日、夢を見る暇もないほど深く眠れる。それは
、身体が疲れているからというだけではなくて、純粋に欲しいと思ってくれる相手に抱か
れる安心感によるものも含まれている。ある意味、本当に、普段と違う状況に置かれてい
るわけで、気晴らしとしては最高だと思われる。
肘で身体を起こして、彼が俺を見下ろして笑っている。
「ニール、強烈な誘い文句だな? 」
「あんたが先に言い出したんだけどな。・・・・本当に大丈夫なのか? 」
「ああ、大丈夫だ。だが、姫特製フレンチトーストも捨て難いな。」
「後で作ってやるよ。時間配分を考えてくれ。」
「この作業は、姫の協力なくしては成立しないので、姫も時間短縮に尽力するように。」
「はあ? それなら、その気にさせろよ。あんたのお得意の、その口でさ。」
身を起こして、ちゅっと軽いキスをしたら、それから、とんでもない口説き台詞が続い
て、苦笑した。一生分言い尽くすつもりか? と、思うほどの甘い言葉は正直、使ったこ
とはあっても聞かされる立場になるとは思わなかった。
・
前日から仕込んでおいたバケットのフレンチトーストは文句なく、こんがりと焼き上が
った。家庭の味ではなく、俺特製と彼が言うのは、メイプルシロップをかけるからだ。あ
まり時間はないから、ポテトサラダを用意するのが精一杯で、コーヒーメーカーで彼が入
れたコーヒーをカフェオレにして、食卓についた。
「これを食べると姫がいることを実感するよ。」
「そんなに、ご大層なもんじゃねぇーぜ。」
のんびりと食事して、後片付けをすると、俺は、小さなカバンを手にして立ち上がる。
着替えは、ここで買ったものは、そのまま置いていくから、これといって荷物はない。
「姫、私くしに送迎の任をお授けいただきたい。」
「エアポートまでな。ゲートまではダメ。」
「わかっているよ。最後のドライブだけ楽しませていただくさ。」
ゲートが判明すると、到着地まで判明してしまうから、エアポートの玄関まで、と、念
を押した。そのまま仕事に向うからと、彼は制服だ。真っ青な制服は、彼の瞳と同系色で
、よく似合っている。
「制服を着ると二割り増し男前になるっていうけどさ、あんたも、その口だな? 」
「くくくくく・・・・・姫は、何も着ていないのが一番だ。」
「・・・・また今度な。」
「ああ、次回にも期待しているよ。」
少し長い抱擁をして、ふたりして部屋を出る。気晴らしは、もうすぐ終わる。
預けた携帯端末を返して貰うために、東京特区へと戻った。協力してくれた刹那は、俺
が戻るまで特区に滞在してくれている。とにかく、発信機をつけられてはたまらないので
、服もカバンも、全部、隠れ家に行く前に捨てた。中身だけは、確認して新しい衣服に着
替えた。特区は、以前、彼と出逢った場所だから不審がられることはない。
さっぱりとして、隠れ家に出向いた。もちろん、この隠れ家の合鍵も、持ってはいない
から、留守ならば、そこで待ちぼうけになる。
折り良く、当人がいたのか、インターホンに、すぐに反応して鍵が開いた。だが、そこ
に顔を出したのは協力者ではなかった。
「え? 」
俺を見たティエリアの青紫の髪が、ふるふると揺れて、それから、腕を取られて、中へ
引き摺りこまれた。
・・・・バレた?・・・・・
確かに、以前の時は、彼のことがバレて、監視をつけられた。だが、あの後、さらに気
晴らしに出向いていることは、バレていないはずだった。バタンと乱暴に扉が閉じられる
と、いきなり、「あなたという人はっっ。」 と、怒鳴られて、ああ、これはバレたんだ
な、と、苦笑した。
「わざわざ、こんなことで、降りてきたのか? ティエリア。」
「こんなこと? そんな軽いものじゃないから俺が降りて来たんだろうがっ。・・・・・
だいたい、携帯端末も持たずに飛び出すなんて、どういうことですか? 何かあったら、
どうするつもりですかっっ。」
「えーあー、まあ。」
「刹那と喧嘩したからと言って、あなたが飛び出す必要はないでしょう。どうせ、あのガ
ンダムバカが、余計なことをしたに違いない。」
「え? いや、別に。」
「付き合うなとは言いません。あなたのプライベートにまで干渉するつもりは毛頭ない。
ただ、喧嘩したから、と、いって、闇雲に飛び出すような真似はやめていただきたい。」
・・・・あれ?・・・・・
がんがんと責められているのだが、どうも話が見えない。彼と付き合っていることと違
うことで怒っているような口調だ。
「あの、ティエリア。ちょっと、話が見えないんだが? 」
「定期連絡が刹那から入りました。いつもなら、あなたも入れるのに、今回は一緒にいる
刹那だけだった。日にちを変えて、連絡したら、また、刹那だ。おかしいと詰め寄ったら
、あなたと喧嘩して出て行かれた、と、彼は答えたんです。・・・・・あなた方が喧嘩す
作品名:ぐらにる 流れ ぷんぷん 作家名:篠義