こらぼでほすと 一撃8
トダカは、結局のところ、三蔵にズルをさせて、かなりの量を呑んだ。とはいうものの
、ザルの人なので、酔った形跡はない。ちょっとご機嫌という感じだが、ふらつきもしな
いのが、さすがだ。そして、運転をするつもりだったシンとレイのほうは、呑まなかった
ので、ぴんぴんしているが、腹はぽんぽこりんになっている。
「美味かった。とーさん、そろそろ帰ろうぜ。」
デザートのパイナップルまで、きっちりと食べて一息ついたら立ち上がる。レイのほう
は、後片付けを手伝っていたが、それも、ほぼ終わっている。
「シン、レイ、トダカさんのこと、頼むな? 」
「任せとけよ、ねーさん。」
「こちらは大丈夫です、ママ。それより、あまり動き回らないでくださいね? 」
一応、痛みは引いたというのものの、ここで妙な具合に捻りでもしたら大変だから、ニ
ールが注意したが、シンとレイは、大丈夫と返す。
「じゃあ、帰ろうか。ごちそうさま、ニール。」
「はい、月曜から開店準備のほうは手伝いますから。」
「あまり早く来なくてもいいからね。」
「まあ、適当にします。」
気をつけて、と、門のところまで見送って引き返してきたら、まだ、酒飲みのほうは終
わっていない。ハイネと三蔵が、へらへらと笑いつつ、くだらない話を展開している。
「悟空は、飲まないのか? 」
「いらねぇー。」
満腹しているので、酒を飲みたいという気分にはならない。ニールのほうも、同じだ。
風呂の準備してくる、と、悟空が出て行ったので、ヨッパライのほうに視線を移す。まだ
飲みそうな勢いだから、アテを追加しようかと声をかけた。
「塩でいい。」
「あ、俺は漬物が欲しいな。あと、梅干も。」
本格的な飲みに突入すると、どっちもアテは、それほど必要ではない。まあ、これで延
々と呑んでいるのでニールですら放置するつもりだ。
アテの追加を用意して、卓袱台に載せると、冷めたホットプレートは、台所へ移動させ
る。ひとつは、棚に仕舞うのだが、ひとつは、食卓に置く。これは、フライパンの代わり
にしているから、日常的に使っているからだ。
「おまえさん、泊まるんだよな? ハイネ。」
「おう、そのつもり。おまえの部屋で寝るから、布団は、そっちに敷いてくれ。」
「はいはい。三蔵さん、風呂が沸いたら、入ってくださいよ? 」
「わかってる。おまえは、もう寝ろ。」
「まだ、早いですよ。何か、変わったことはありませんでしたか? 」
ウーロン茶を用意して、ニールも、卓袱台の前に座りこむ。二週間も留守をしているの
で、寺のほうの様子を尋ねる。
「これといっちゃーないな。・・・・・今年は、七月中盤に、本山へ帰る事になったから
、おまえは、それまでに回復しろ。」
「また、無茶な事を・・・・こればっかりは、俺にも予想はつきません。」
「無理なら、エロカッパたちに頼んでおく。それと、明後日から通夜と葬式がある。バイ
トは休むぞ。」
「えーっと、黒袈裟ですか? それとも正装? 」
「通夜は黒だが、葬式は、白だ。あと、それから七日ごとに法事かある。そっちは黒。」
「わかりました。そろそろ暑いから、夏ものでいいですね? 」
「そうだな。」
坊主の本職の準備も、女房の役割になりつつある。それまでは、坊主が自分でしていた
のだが、女房ができて押しつけた。そして、女房のほうも、仏教についてはからっきしだ
が、準備はできるようになっている。
「明後日って月曜日か。お通夜は夜だから、用意だけして俺は手伝いに行きます。」
「ああ、それでいい。葬式のほうは、午後一だし、おまえのほうと時間はかぶらねぇ。」
この寺の檀家でないところの葬式は、基本、引き受けないことにしている。たまに、大
きな葬式の手伝いには、坊主も出向くが、それだけだ。だから、葬礼も多くはない。三蔵
が本山に帰っている時や、時間の都合がつかない場合は、同じ宗派の寺へ仕事は回すこと
になっているので、不在でも支障もない。本山では、とっても得の高い高僧様だが、その
身分は、こちらでは使っていない。ただの坊主ということになっているから、そういうこ
とで済んでいるらしい。
「本業も仕事あるんだな? 三蔵さん。」
「数はないが、あることはあるぜ。」
「黒袈裟着てると、あんたでも、坊主なんだなあ、と、実感するよ。普段着だと、坊主よ
りマフィアにしか見えないからなあ。」
ハイネは、へらへらと笑いつつ、坊主のコップに原液の焼酎を、ドボドボと注ぎこむ。
ホストの衣装もさることながら、なぜかイロモノな格好が似合うのだか、ハイネの意見は
、もっともだ。
「マフィア? けっっ、何言ってやがる。てめぇーだって、堅気には見えないじゃねぇー
か。」
そして、坊主も、ハイネのコップに原液を注ぐ。アルコール度数25度というキツイ焼
酎だということはスルーらしい。
「一応、俺は宮仕えだぞ? あんたみたいな、唯我独尊じゃねぇ。」
「宮仕え? あれだけ好き勝手してて、それを言うか? 」
「『吉祥富貴』じゃあ、かなりの自由裁量で任して貰ってる部分はあるからな。そうじゃ
なきゃ、俺は、ここにはいないね。」
ぐだぐだと、こんな話をしているので、ニールのほうは、やれやれとテレビをつける。
ヨッパライの会話なんて、真面目に聞くだけ無駄だ。
・・・・明日は日曜だから、悟空に買い出しに付き合ってもらって、それと掃除しとかな
いとな。他は、日用品のチェックして・・・・・・・・
二週間も留守をすると、かなり寺のほうは荒れている。悟空が、ある程度はしてくれて
いるが、学生で、バイトまでこなしているから、細かい事までは無理だ。
「ママ、風呂にお湯が溜まったぜ? 先に入って。」
溜まるまで監視していた悟空が、そう言いつつ戻ってくる。今日は、移動しているから
昼寝をしていないというシンとレイの申し送りで、早めに横にするつもりだ。
「おまえが入れよ、悟空。」
「じゃあ、一緒に入ろうぜ。ヨッパライは放置しといてさ。」
「そうするか。」
延々と呑んでいるであろう坊主とハイネの相手なんてやらなくていい、と、悟空が、ニ
ールの腕を引っ張る。そうだなあ、と、ニールも立ち上がった。
「そろそろ、おにぎりが危ない季節だけど、どうする? 」
「それ、大丈夫。食堂のおばちゃんに頼んで、冷蔵庫に入れてもらえるようになったんだ
。だから、いつも通りでいいよ、ママ。」
デカ盛り弁当だけでは、悟空の腹は満たされない。三限が終わったら、早弁して、昼飯
時に、もう一度、食堂で腹を満たしているので、食堂でも有名人らしい。
「ここんとこ、弁当がないから、入り浸ってたからさ。」
「あーそうか。ごめんな? 悟空。」
「しょうがねぇーよ。トダカさんが、ぎっくり腰になるなんて予想してなかったもんな。
」
「俺もびっくりした。」
「ママは大丈夫? 」
「俺は生身のままだから、やっても、酷いことにはならないと思うんだけどなあ。あれば
っかりは予想がつかない。」
、ザルの人なので、酔った形跡はない。ちょっとご機嫌という感じだが、ふらつきもしな
いのが、さすがだ。そして、運転をするつもりだったシンとレイのほうは、呑まなかった
ので、ぴんぴんしているが、腹はぽんぽこりんになっている。
「美味かった。とーさん、そろそろ帰ろうぜ。」
デザートのパイナップルまで、きっちりと食べて一息ついたら立ち上がる。レイのほう
は、後片付けを手伝っていたが、それも、ほぼ終わっている。
「シン、レイ、トダカさんのこと、頼むな? 」
「任せとけよ、ねーさん。」
「こちらは大丈夫です、ママ。それより、あまり動き回らないでくださいね? 」
一応、痛みは引いたというのものの、ここで妙な具合に捻りでもしたら大変だから、ニ
ールが注意したが、シンとレイは、大丈夫と返す。
「じゃあ、帰ろうか。ごちそうさま、ニール。」
「はい、月曜から開店準備のほうは手伝いますから。」
「あまり早く来なくてもいいからね。」
「まあ、適当にします。」
気をつけて、と、門のところまで見送って引き返してきたら、まだ、酒飲みのほうは終
わっていない。ハイネと三蔵が、へらへらと笑いつつ、くだらない話を展開している。
「悟空は、飲まないのか? 」
「いらねぇー。」
満腹しているので、酒を飲みたいという気分にはならない。ニールのほうも、同じだ。
風呂の準備してくる、と、悟空が出て行ったので、ヨッパライのほうに視線を移す。まだ
飲みそうな勢いだから、アテを追加しようかと声をかけた。
「塩でいい。」
「あ、俺は漬物が欲しいな。あと、梅干も。」
本格的な飲みに突入すると、どっちもアテは、それほど必要ではない。まあ、これで延
々と呑んでいるのでニールですら放置するつもりだ。
アテの追加を用意して、卓袱台に載せると、冷めたホットプレートは、台所へ移動させ
る。ひとつは、棚に仕舞うのだが、ひとつは、食卓に置く。これは、フライパンの代わり
にしているから、日常的に使っているからだ。
「おまえさん、泊まるんだよな? ハイネ。」
「おう、そのつもり。おまえの部屋で寝るから、布団は、そっちに敷いてくれ。」
「はいはい。三蔵さん、風呂が沸いたら、入ってくださいよ? 」
「わかってる。おまえは、もう寝ろ。」
「まだ、早いですよ。何か、変わったことはありませんでしたか? 」
ウーロン茶を用意して、ニールも、卓袱台の前に座りこむ。二週間も留守をしているの
で、寺のほうの様子を尋ねる。
「これといっちゃーないな。・・・・・今年は、七月中盤に、本山へ帰る事になったから
、おまえは、それまでに回復しろ。」
「また、無茶な事を・・・・こればっかりは、俺にも予想はつきません。」
「無理なら、エロカッパたちに頼んでおく。それと、明後日から通夜と葬式がある。バイ
トは休むぞ。」
「えーっと、黒袈裟ですか? それとも正装? 」
「通夜は黒だが、葬式は、白だ。あと、それから七日ごとに法事かある。そっちは黒。」
「わかりました。そろそろ暑いから、夏ものでいいですね? 」
「そうだな。」
坊主の本職の準備も、女房の役割になりつつある。それまでは、坊主が自分でしていた
のだが、女房ができて押しつけた。そして、女房のほうも、仏教についてはからっきしだ
が、準備はできるようになっている。
「明後日って月曜日か。お通夜は夜だから、用意だけして俺は手伝いに行きます。」
「ああ、それでいい。葬式のほうは、午後一だし、おまえのほうと時間はかぶらねぇ。」
この寺の檀家でないところの葬式は、基本、引き受けないことにしている。たまに、大
きな葬式の手伝いには、坊主も出向くが、それだけだ。だから、葬礼も多くはない。三蔵
が本山に帰っている時や、時間の都合がつかない場合は、同じ宗派の寺へ仕事は回すこと
になっているので、不在でも支障もない。本山では、とっても得の高い高僧様だが、その
身分は、こちらでは使っていない。ただの坊主ということになっているから、そういうこ
とで済んでいるらしい。
「本業も仕事あるんだな? 三蔵さん。」
「数はないが、あることはあるぜ。」
「黒袈裟着てると、あんたでも、坊主なんだなあ、と、実感するよ。普段着だと、坊主よ
りマフィアにしか見えないからなあ。」
ハイネは、へらへらと笑いつつ、坊主のコップに原液の焼酎を、ドボドボと注ぎこむ。
ホストの衣装もさることながら、なぜかイロモノな格好が似合うのだか、ハイネの意見は
、もっともだ。
「マフィア? けっっ、何言ってやがる。てめぇーだって、堅気には見えないじゃねぇー
か。」
そして、坊主も、ハイネのコップに原液を注ぐ。アルコール度数25度というキツイ焼
酎だということはスルーらしい。
「一応、俺は宮仕えだぞ? あんたみたいな、唯我独尊じゃねぇ。」
「宮仕え? あれだけ好き勝手してて、それを言うか? 」
「『吉祥富貴』じゃあ、かなりの自由裁量で任して貰ってる部分はあるからな。そうじゃ
なきゃ、俺は、ここにはいないね。」
ぐだぐだと、こんな話をしているので、ニールのほうは、やれやれとテレビをつける。
ヨッパライの会話なんて、真面目に聞くだけ無駄だ。
・・・・明日は日曜だから、悟空に買い出しに付き合ってもらって、それと掃除しとかな
いとな。他は、日用品のチェックして・・・・・・・・
二週間も留守をすると、かなり寺のほうは荒れている。悟空が、ある程度はしてくれて
いるが、学生で、バイトまでこなしているから、細かい事までは無理だ。
「ママ、風呂にお湯が溜まったぜ? 先に入って。」
溜まるまで監視していた悟空が、そう言いつつ戻ってくる。今日は、移動しているから
昼寝をしていないというシンとレイの申し送りで、早めに横にするつもりだ。
「おまえが入れよ、悟空。」
「じゃあ、一緒に入ろうぜ。ヨッパライは放置しといてさ。」
「そうするか。」
延々と呑んでいるであろう坊主とハイネの相手なんてやらなくていい、と、悟空が、ニ
ールの腕を引っ張る。そうだなあ、と、ニールも立ち上がった。
「そろそろ、おにぎりが危ない季節だけど、どうする? 」
「それ、大丈夫。食堂のおばちゃんに頼んで、冷蔵庫に入れてもらえるようになったんだ
。だから、いつも通りでいいよ、ママ。」
デカ盛り弁当だけでは、悟空の腹は満たされない。三限が終わったら、早弁して、昼飯
時に、もう一度、食堂で腹を満たしているので、食堂でも有名人らしい。
「ここんとこ、弁当がないから、入り浸ってたからさ。」
「あーそうか。ごめんな? 悟空。」
「しょうがねぇーよ。トダカさんが、ぎっくり腰になるなんて予想してなかったもんな。
」
「俺もびっくりした。」
「ママは大丈夫? 」
「俺は生身のままだから、やっても、酷いことにはならないと思うんだけどなあ。あれば
っかりは予想がつかない。」
作品名:こらぼでほすと 一撃8 作家名:篠義