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こらぼでほすと 一撃8

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「そうだよなあ。いきなりだからなあ。」

「悟空、おまえ、明日の予定は? 」

「なんもない。買出し? 」

「ああ、荷物持ち頼んで良いか? 」

「オッケー。じゃあ、早く寝よ。」

 はいはい、と、ふたりして風呂に行ってしまうと、ハイネと坊主は顔を見合わせて苦笑

した。悟空ですら、おかんが帰って来ると、はしゃぐものらしい。

「あんたの連れ子も、すっかり懐いたな。」

「そりゃ、あんだけ世話してりゃあ、どっちも情は湧くだろ。」

「俺、あいつらが風呂から出たら、次に入ってもいいか? 三蔵さん。」

「はあ? 間男のクセに、二番風呂? 冗談じゃねー。おまえは最後の仕舞い風呂だ。」

「一緒に入る? 」

「誰が、おまえなんかと入るか。それなら、女房子供と入る。」

 それだけ言い放つと、坊主は立ち上がって、スタスタと部屋から出ていく。

「それは、あれなのか? 女房を子供に取られて拗ねてるのか? あんた。」

 ハイネのツッコミは届かなかったが、風呂場から、ぎゃあーという騒々しい声が聞こえ

ているから、坊主の乱入は成功したものと思われる。





 風呂上りの水分補給を済ませると、各人、部屋に散らばる。ハイネが、風呂を上がる

頃には、卓袱台の上も片付いていた。この家では、仕舞い風呂の人間が、戸締りと消灯の

担当だ。やでやで、と、ハイネが、戸締りをして、居間や台所の電気を消して、冷蔵庫か

ら缶ビールを頂戴して、脇部屋に行く。

 この寺の本堂には、左右に、かなり大きな脇部屋という控えの間のようなものがあって

、家に近いほうは、ニールの私室、遠いほうがハイネの居候部屋になっている。回廊を本

堂のほうへ上がると、手前がニールの寝室だが、まだ電気が点いている。障子をノックし

て、開いたら、すでに、ニールは布団の真ん中で沈没していた。寝る前の読書を試みたら

しいが、たぶん、数ページ保たなかったのだろう。バタンとハードカバーの本は閉じられ

て、表紙に近いところに、ニールの手が挟まれている。

 クーラーのリモコンは、オフ設定もされていないから、二時間くらいの軽いドライ設定

にして、電気も消す。ちゃんと、ハイネの布団がそこに敷かれているので、ここでハイネ

も休む。

 ニールは、あまり一人が得手ではないと言う。それも、子猫たちが帰ると、誰でもいい

から、側で寝て欲しいらしい。もちろん、そういう職業の女性がいれば、それでもいいら

しい。さすがに、今は、その気力がないので、年少組かハイネに頼んでいる。



・・・・・あんまり覚えてないはずなんだけどさ。なんか、ぽつんと宇宙空間に浮かんで

た時の夢を見るんだ。・・・・・・



 えげつないものを・・・・と、聞いた時、ハイネは顔を顰めた。それは、ニールが呼吸

停止するまでの数瞬のことだ。その後、歌姫の護衛陣が、ニールを確保して蘇生させた。

当人には、長くて最後の記憶になるはずだったものを、夢に見るなんてのは、寒すぎる。

ハイネも、宇宙空間の孤独感というのは理解している。MS乗りなら、誰だって感じるだ

ろう。隠密行動で単独で移動している時は、それをひしひしと感じる。壁一枚向こうは、

無の世界だ。通信すら障害で届かなければ、ほぼ、ひとりぼっちの世界になる。それを、

どうとも感じなくなるなんことはないし、そういう精神的圧迫の危険から、軍では最低二

人での行動と規定されている。

 さすがに暗闇でビールっていうのも、どうよ? と、回廊へこっそりと出た。晴天続き

で、黄砂で霞んだ月がある。プシッとプルトップを捻り上げて、乾いていた喉を潤した。



 世界情勢は、あまり平穏ではない。いや、三大大国と、その関係地域は平穏だ。情報管

制が敷かれているから、何も内には入らない。まだ、完全な統一には早いが、この弾圧と

平穏の温度差の激しい世界は、平和なのか? と、首を傾げるしかない。かつての植民地

と支配国のような温度差具合だ。

「やがて、破瓜するんだろうけどさ。」

 刹那たちの準備が整う頃に、組織の再始動の可否も決まるだろう。天上人とキラと歌姫

が望む世界は、同じものに近い。だから、この温度差のある平和な世界というものは拒絶

されるに違いない。

 刹那を助ける、とは、キラで、すでに決めている。次の再始動は、かなり過激になるだ

ろうから、そう考えると、店は休むことになる。



・・・・・ママニャン、大丈夫かな・・・・・・・



 そんな状態に、ニールの神経は耐えられるのか、それとも、こちらも情報操作をすべき

なんだろうか、そんなことを、じじいーずたちは考えている。やがて、バレるにしても、

なるべくバレない方向というのが望ましい。スタッフにしても、この日常担当の寺だけは

、殺伐とさせたくない。



・・・・俺は、そういう意味でも、三蔵さんは羨ましいぞ。・・・・・



 ニールに用事を言いつけて、こき使っている寺の坊主は、マイペース驀進と思われがち

だが、そうでもない。どんな時でも、同じペースで命じているように見えて、実は、具合

の悪い時は、言いつけていないし、余計な事を考えそうな時は、用事を増やすという芸当

までやっていたりするからだ。坊主なんかやってると、人の機微なんてものに敏感らしい

。それを上手に使い分けて、ニールを手の平の上で、ころころと遊ばせているのは、見事

だと思う。

「まあ、やり方は十人十色だからな。俺は、俺のやり方でやるけどさ。」

 来月半ばから、紫子猫が降下してくる。その後に、桃色子猫だ。秋口には、黒子猫に戻

るように連絡しておかなければ、と、予定を立てて、ハイネは、ビールを飲み干した。

 いつもは、まだ働いている時間だから、さすがに眠りは訪れない。風呂に入って、アル

コールも抜けてしまったから、強制的に眠ろうと思ったら、もう一度、濃いアルコールで

一杯やらないと無理だろう。とはいえ、月明かりでは読書も無理だ。はてさて、何をしよ

うかな、と、考えていたら障子が開いた。

「寝られないのか? 」

「あれ? 熟睡してたんじゃないのかよ? ママニャン。」

 のそのそと起きてきたのは、眠ったとばかり思っていたニールだ。

「うとうとしてたんだけどな。・・・・・どうもな。はははは」

「また悪夢か? 」

「そこまででもないんだが。」

 となりに体温がないと、眠りが浅いとは知っているが、やはり、そうらしい。疲れては

いるはずだが、寝られないのだ。

「トダカさんとこでも、ひとりだろ? 」

「でも、部屋がとなりだし、トダカさんは、適当に様子を見てくれてるからさ。」

 トダカも、知っているから、ニールが眠ってから、こっそり様子を確認してくれていた

りする。それに、昼寝している時は、傍で読書していたりする。だから、ひとりという感

覚には陥らなくて済んでいるのだと言う。

「どこまで、過保護なんだよ? お父さん。」

「ぐだぐだの時を知ってるから心配するんだってさ。・・・・まあ、一番、迷惑かけてる

と思う。」
作品名:こらぼでほすと 一撃8 作家名:篠義