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長い長い家路

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ドローンは、ピンポイントバリアの応用技術で浮遊するバレーボールサイズの球体だ。
撮影しながら音波などで立体マッピングを行い、内部構造を明らかにする。
どうやら中に広い空間があるらしい。
「なんだ、このパイプオルガンみたいな構造は?」
極端に明かりが乏しい中で、音波の反射だけで描画された立体映像には色がない。
「入ろう」
ラデン・マス中尉はチームを率いて尖塔内部へ足を踏み入れた。
銃を構えつつ、ライトで前方を照らしながら慎重に歩みをすすめる。
音波による走査で人間の体重を支えきれないような脆い箇所は無いとは分かっているが、未知の建築物の中だ。
用心に用心を重ねる。
「おお…」
先頭を進む曹長が呻いた。
「どうした」
ラデン・マス中尉は曹長に並んで見上げた。
「これは…」
手持ちのライトの光を浴び、屈折・反射して聳え立つのは紫色の透明な結晶体。
肉眼で見ただけも分かる高純度フォールドクォーツだった。
音波で捉えたパイプオルガンのような構造は、パイプの部分がフォールドクォーツ、鍵盤のような部分は制御卓らしき未知の装置だった。

バトルフロンティアを指揮するエステファン大佐は惑星ザナドゥに派遣した調査チームのレポートに目を通していた。
VF-0Aはシン工藤少尉の機体と判明。パイロットは行方不明。
これは、ある意味良い報せだ。
宇宙も飛べないジェット機が地球からザナドゥまで来れたのだから、コースを逆にたどれる可能性もある。
どうやら『鳥の人』と呼ばれるプロトカルチャーの無人探査機は、フォールドハイウェイを経由してザナドゥに来たらしい。
VF-0Aも『鳥の人』の移動に巻き込まれて地球から来たと推測される。
フォールド空間を調査しているチームからは悪いニュース。
フォールドハイウェイと仮称されている空間構造は、かなり不安定である。
バトルフロンティア並の質量が通過すると空間構造が崩壊する可能性もある。
「ふむ」
エステファン大佐は両の瞼を人差し指と親指で軽く揉んだ。
最後のレポートは良い知らせに分類して良いだろう。
都市遺跡と思われたのは巨大な通信/情報処理設備らしい。おそらくは情報を蓄積する巨大データベース。
その動力源に使われていた巨大な高純度フォールドクォーツを発見。
このエネルギーを上手く利用できれば。
大佐は内線でカイローア政務次官を呼び出した。
「お寛ぎのところ申し訳ありません。調査隊からの報告が上がってきました。今後の方針が…はい…具体的なプランができ次第」

作品名:長い長い家路 作家名:extramf