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こらぼでほすと 一撃9

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とても大切な友達から、「あなたのお顔が見たいです。」 と、言われれば、大明神様

だって、「今から行くよ。」 と、予定もすっぽかす。ラボへ行くはずだった予定はなし

にして、歌姫様の本宅へやってきた。

「ちょうどよかったかもしれない。後は、ティエリアと相談したかったしね。」

「そうだな。実際、ヴェーダとリンクしていたティエリアの意見は欲しいところだな。」

 ヴェーダを完全に攻略するのは難しい。だが、一部分だけ、相手にバレないように、こ

ちらで使えるようにすることは可能だ。ただし、それには実際、リンクしていたティエリ

アの意見は聞きたかったし、実際、一緒に作業して欲しかった。もうすぐ、ティエリアは

降りてくる。

「そういや、アスラン、ママがダウンしてるんだよね? 」

「ああ、そのはずだ。完全に入梅したからな。」

「なんか、ママに会うの久しぶりだ。」

「ラボと店の往復しかしてなかったからなあ。」

 トダカの「魔女の一撃事件」の後から、キラはラボに引き篭もった。ちょうど、ニール

がトダカの看護をしていたから、寺に不在だったので、おやつがないから、というのも、

引き篭もった理由だ。おいしいおやつがないなら、この隙に、と、キラはヴェーダの一部

掌握という暇つぶしを思いついた。あまり、一般人が暇つぶしにすることではないが、ス

ーパーコーディネーターな大明神様は、普通じゃないから、こうなる。



 フリーパスで本宅へ入って、まずは、歌姫様の部屋を訪れる。しかし、そこで、キラも

アスランも固まった。真っ白なパックをしてソファで雑誌を読んでいるママがいたからだ



「うに? 」

「ニール? 」

 その声で振り向いたものの、口が開かないらしく、手を上げて挨拶してきただけだ。そ

して、歌姫様が奥から、何やら、ごっそり荷物を抱えて顔を出した。

「まあ、キラ。お早かったですね? 」

 ちょうどよかった、と、歌姫様は荷物を中央の卓に置く。何がちょうどよかったんだろ

う? と、アスランもキラにもわからない。

「ママ、剥がしますよ。」

 ぴりぴりと真っ白な美容パックを剥がすと、やっぱり、ニールだ。「よおう。」 と、

陽気に挨拶された。

「ニール、起きてていいんですか? 」

「ママ? 何してるの? 」

「フェイシャルエステだとよ。なんか、すっきりしたよ、ラクス。」

 パックを剥がしてもらって、やれやれとニールは顎を撫でる。朝から、天候が安定して

いて具合がよかったので、治療も早く済んだ。すると、歌姫様は、それでは、と、いそい

そと昨日の「お手入れ」なるものをやりだした。顔を蒸しタオルで包み、それから、オイ

ルでマッサージ、さらに美容パックというコースを楽しんでいたのだ。

「まだですよ? ママ。引き締めませんとね。アスラン、ハーヴティーを頼んでください

な。」

 なんかよくわからないが、歌姫様の遊びらしい。コットンに化粧水を含ませて、パタパ

タとニールの顔を叩いているので、アスランは、「はいはい。」 と、頼まれたことを内

線で連絡する。で、大明神様は、珍しそうに、そこにある化粧道具一式を持ち上げて眺め

ていたりする。

「こんなにつけてるの? ラクス。」

「ええ、全部一度に、というわけではありませんよ? キラ。これは、お手入れ用のセッ

トです。」

 また、別の化粧品の瓶を取上げて、コットンに含ませている。ニールは、されるがまま

で、ラクスのやることを眺めているだけだ。何種類もの化粧液をつけ終わると、「終了で

す。」 と、手を休めた。

「これで、しっとりツヤツヤで美白効果も万全です。」

「はい、ありがとさん。・・・・楽しいのか? これ。」

「楽しいです。」

「まあ、それならいいけどな。」

 そこへ全員分のハーヴティーが運ばれてきて、とりあえず小休止になる。アスランが見

る限り、確かにニールの顔は艶やかになっている。キラは、ニールの頬をツンツンとつつ

いて、そのぷにぷに感を確かめている。

「ほんとだ。ぷにぷに。」

「キラ、モチモチ感とおっしゃってくださいな。素材がよろしいと、手のかけ甲斐があり

ます。」

「素材ねぇー。てか、女性陣の努力って半端じゃねぇーんだな。こんなこと、毎日やって

るなんて、俺は感心するぞ。」

 一通りやり終えるまで、二時間近くかかっている。そろそろ午後になろうかという時間

だ。ソファに寝転がっていただけだが、疲れることは疲れる。

「午後からは、キラのお手入れを、たっぷりとさせていただきますね? 」

「僕もしてくれるの? ラクス。」

「ええ、モチモチに仕上げます。アスランは、おやりになりたければ、ご自分で。」

「いや、俺は御免被る。・・・・ニール、俺と映画でも観ませんか? 」

「ああ、付き合うよ。」

 ニールのほうも、これでお役御免だ。本命のキラが来れば、歌姫様もママに構っていら

れない。アスランも、それはわかっているから、のんびりさせてもらうことにする。

「では、食事して始めましょうか? キラ。」

「うん、いいよ。でも、今夜は、お店あるから、それまでに終わらせてね? 」

「もちろんです。そのまま、同伴出勤いたしましょう。」

「じゃあ、お持ち帰りもして。僕、ママと一緒に寝るぅー。」

「ええ、それはよろしいですね。それでは、三人で。」

 どんどん勝手に予定は決まっていくが、ニールもアスランも反論する気はない。二日し

かないオフなのだから、存分に気晴らしすればいいだろう。





 食事して、ニールとアスランは部屋から放り出された。キラの「お手入れ」をするから

、邪魔です、と、歌姫様はおっしゃったからだ。

「どうする? アスラン。」

「当初の予定通り、オーディオルームで昼寝でもしませんか? 」

 アスランも、ここに居る限りは、キラの護衛も心配もない。そして、歌姫にキラを貸し

出すことにも不安はない。キラ欠乏症になられて、周囲に暗黒オーラを撒き散らされるよ

りはマシだ。それに、歌姫の気持ちも理解しているから、嫉妬はしない。キラはアスラン

を選んだ。それは事実だからだ。

 オーディオルームに移動して、ライブラリーから最新の映画を借り出して来た。すでに

、ニールは長椅子に寝転んでいる。

「これ、アクションものなんですが、なかなかおもしろいと評判です。」

「俺、途中で脱落したら捨てといてくれ。」

「ええ、どうぞ、昼寝に突入してください。本当に具合はいいんですね? 」

「うん、今日はな。」

 梅雨といっても、常時、気圧が不安定になるわけではない。天候さえ安定していれば、

脱力感も倦怠感もないので、ニールも自力で移動している。これも予報通りなら、ティエ

リアが降下する日辺りは、寝込んでいるだろう。

「ティエリアに、少し意見が欲しいところがあるので、付き合わせてもいいですか?」

「ああ、適当に使ってくれ。それと、遊びにも連れ出してやってくれよ。」

「了解です。・・・・ラクスに付き合ってくれてありがとう、ニール。」
作品名:こらぼでほすと 一撃9 作家名:篠義