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こらぼでほすと 一撃9.5

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 翌日は、ウィークデー。

歌姫様は、仕事に出た。残っているティエリアは、ドクターからの呼び出しを受けて、病

室にやってきた。ティエリアが作業しているのも、地下の同じ階層だから呼ばれれば、す

ぐに来られる場所だ。医療ポッドから出されて、そこで眠っている親猫は、そろそろ目が

覚める。

「これは、いい匂いのバラだね? ティエリアくん。」

 ドクターも部屋に広がる香りに気付いた。それほど、大袈裟に薫っているわけではない

。程好い具合いの匂いだ。簡単な診察をすると、ドクターは看護師と共に部屋を後にした

。体調がよければ、食事も移動も自力でできるから、そこいらはティエリアに任せる方向

だ。壁面のパネルは、少し曇ってはいるが晴れた空と植木たちが映し出されている。風が

強いらしく、植木はゆらゆら揺れている。それを眺めていたら、「うーん。」 という声

がした。

「ろっ、ニール。」

「ふあーー腰が痛い。」

 うーん、と、伸びをして寝返りをうった親猫は、もぞもぞと動いて、ティエリアのほう

に顔を向けて微笑んだ。

「おはよう、ティエリア。」

「おはようございます、ニール。」

「うーん、腰が痛い。」

「揉みましょうか? 」

「おう、やってくれ。」

 同じ向きに寝ていたから身体が固まっていて、少しずつ動いて解消させる。ティエリア

も、それに手を貸して腰を揉んで腕や足を擦って血流を流す助けをする。毎度のことにな

りつつあるから、ティエリアも慣れたものだ。

 しばらくすると、「ありがと」 と、ニールはベッドを起こした。ふうと息を吐くと、

サイドテーブルに視線が映る。七色の淡いバラは、初めて見ると不思議な感じがするもの

だ。そして、ようやく部屋の香りに気付く。

「あれ? この花、すごくいい匂いだな? 」

「それじゃありません、ニール。入り口の側の花が、発している匂いです。臭くはないで

すか?」

「ないよ。いい匂いだ。それに、これ、変わってるな? 」

「それは、レインボーローズパステルというバラの一種です。白バラを特殊な染料で染め

てあります。花びらが、一枚ずつ違う色なんです。それから、あの匂いのいいバラは、ジ

ャルダンパフューメと言って、匂いが最高級です。」

 ニコニコと説明してくれるティエリアは嬉しそうだ。つまり、これは、ティエリアが用

意してくれたものだろう、と、ニールも気付く。

「父の日ミッションのおまけか? 」

「ええ、綺麗なものがあったので、あなたを和ませられたら、と、思いました。」

「三蔵さんとこにも届けてくれたか? 」

「もちろんです。」

「ありがとな、ティエリア。助かったよ。」

「あなたの頼みごとは規模が小さいので、コンプリートしやすい。もう少し難しいことを

頼んでくれても、俺はやり遂げます。」

「いや、そう言われてもな。これといってないんだ。・・・・・ああ、それならな、アス

ランが手を貸してほしいことがあるって言ってたから手伝いをしてくれ。」

「今、やっている。それより、何か飲みませんか? ニール。」

 目を覚ました割に、親猫は何も欲しがらない。毎度の事ながら、水分ぐらいは要求して

くれ、と、思う。

「おまえさんは? 」

「あなたが飲むなら付き合う。」

「じゃあ、なんか頼んでくれ。」

「了解した。」

 適当に摘まむものと飲み物を用意してくれるように、内線で頼む。親猫は、どうも食事

というものに興味がない。いや、子猫や年少組がいれば、食べさせることには熱心なのだ

が、自分には無頓着なのだ。刹那曰く、「有無を言わさず強引に食わせろ」 が、親猫介

護の基本姿勢だそうだ。ティエリアも容赦なく食わせるようにしている。

 ぼんやりと花の飾られた花瓶を見ている親猫を、ティエリアも眺めて微笑む。あの花で

、少しは和んでくれたらいいな、と、思っていたから、その通りになっていれば満足だ。

「見れば見るほど、変わってるな? 」

「他にも色合いの違うレインボーカラーはあるらしい。」

「ふーん、三蔵さんのも、これにしたのか? 」

「いえ、オレンジのバラの花束と紫のバラのにしました。店員が勧めてくれたので。」

「びっくりしてただろ? 」

「あれは・・・・怪訝そうな顔だったと思います。」

 見上げていた坊主の顔は、嬉しいという顔ではなかった。予想外で、何ごとだ? とい

うのが正解だ。それを聞いて、ニールもあははははと大笑いする。坊主の様子が想像でき

たらしい。わからない人ではないから、意図はわかってくれただろう。子猫共々世話にな

っているので、そのお礼を兼ねている。

「まあ、受けとってくれたなら、いいさ。」

「他に欲しいモノはありませんか? ニール。」

 ニールが欲しいものがあるなら調達してこようと思った。毎度、この保護者に、そう尋

ねるが、何もない、と言われる。だが、本日は違っていた。

「アスランたちと出かけることがあったら、俺が食えそうなものを買って来てくれ。」

「属性は? 」

「えーっと、属性は、和洋中なんでもいいんだが、あっさりしたものがいいな。」

「あっさり? ・・・・・あっさりに該当する食べ物は、どういうものですか? 」

「あっさりは、例えば、ゼリーとかジュレ、ムース、ワラビ餅、水羊羹・・・・・」

 親猫が自分が食べられそうなあっさりしたものを並べたら、「待ってくれ。」 と、止

められた。パタパタと紫子猫は、外へ走り出して、すぐに戻って来た。手にはメモとペン

だ。

「もう一度、最初から、ゆっくりと言ってください。」

「・・・・・おまえさんね・・・・・」

「もちろん、聞いてから内容物をチェックして選びます。」

「・・・いや、そうじゃなくてさ・・・・・アスランたちに尋ねれば、それらしいもんを

教えてくれるさ。」

「あなたが食べたいものなんだから、あなたの意見が重要です。さあ、さっきのを繰り返

してください。」

 紫子猫にしたら、ブツを指名してもらわないと、おつかいは難しい。あっさりしたもの

なんて、ざっくりしたリクエストは、とてもではないが答えられないのだ。商品名があれ

ば、どうにかなるから、と、言うので、親猫は、ボンボンと紫子猫の頭を二度ばかり軽く

叩いた。

「そんなに限定しなくてもさ、おまえさんが、考えて買ってきてくれればいいんだけどな

。」

「あなたの好みは、よくわからない。」

「おまえさんが食べたいな、と、思うものでもいいよ。・・・ああ、アレルヤたちに食べ

させてやりたいって思うのでもいい。そういうのなら、どうにかならないか?」

「あのバカには、ソイソースを一リットルほど飲ませてやりたい。」

 もう二年近く行方不明なので、言いたい放題に、ティエリアは悪口を言う。それで存在

を身近に感じればいい、という親猫の方針に従っているから、容赦ない。

「・・・・それ、いくら超兵でも死ぬんじゃないか? そのうち逢えるよ? ティエリア

。」

「わかっている。・・・・ニール。さっきの繰り返してください。あなたが思い付いたあ