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こらぼでほすと 一撃9.5

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っさりしたものは? 」

「アスランとキラに聞いてみな? たぶん、同じようなものを掲げてくれるはずだ。」

「なぜ、こんなときだけ意地悪するんですか? 」

「たまに意地悪してもいいだろ? ・・・・ほら、飲み物が来たぞ? 」

 背後の扉から看護師が、ワゴンを押して来た。アフタヌーンティーの時間だったからな

のか、ティーセット一式だ。

「紅茶は、ニール君のために薄めにしてあるから、濃くなったら、お湯で薄めてください

。ニール君、ビシソワーズだけは飲むように。」

 看護師は、それだけ指示すると、ワゴンを置いて出て行った。紫子猫は、そこにある食

物を、ひとつずつ眺めて、チョココーティングされたプチケーキを指差した。

「あっさり? 」

「・・・・それは本気か? ティエリア・・・・」

「小さくて、飲み込めそうだとおもったんだが・・・じゃあ、このクリーム単体は?」

「クロテッドクリームって濃厚だと思うけどな。」

 こういう知識については、刹那もティエリアもフェルトも、どっこいどっこいだ。ちゃ

んと教育しないと、一般常識が身につかないな、と、親猫は、小さなジュレの入った器を

を取り上げる。

「これ、これがあっさり。ジュレってんだ。食ってみな? 」

 はい、あーん、と、スプーンで掬って紫子猫の口に放り込む。ちゅるりと、それは、テ

ィエリアの喉を落ちて行った。

「あっさり? 」

「そう、それが、あっさり。わかったか? 」

「わかった。」

「じゃあ、あっさりと思うものを、いろいろと味見してみな。」

「了解した。」

 いろいろと、そこにあるものに手を出し始めた紫子猫を眺めつつ、親猫も、冷製ジャガ

イモスープに口をつける。本宅の人間たちも、親猫の好みは把握してくれたのか、よくじ

ゃがいも料理が出て来る。

「ニール、これなら、どうだ? あっさりだろ? 」

 きゅうりとハムの小さなサンドイッチを、紫子猫は、親猫の口元に差し出して来た。

「正解だ、ティエリア。」

 それを、ぱくっと食べて、親猫も微笑む。そんな梅雨の合間のティータイム。




 雨は続いているが、それほど激しいわけではない。ティエリアは、親猫の傍に端末を持

ち込んで作業している。親猫のほうは、のんびりとDVDなど鑑賞している。具合はいい

が、倦怠感はあるから起きているのは疲れるらしい。横になって、だらだらと景色ばかり

のものを眺めているだけだ。

「音は気にならないのか? 」

「なりません。目が覚めたんですか?」

 うとうとしたりDVDを眺めたりしていた親猫が声を出したので、紫子猫も端末から顔

を上げた。

「覚めたけど・・・・今、何時だ? 」

「午後七時ですね。」

「・・・メシ食ったのか? 」

「いえ。」

「おい、ちゃんとメシは食わないとダメだろ? 食って来い。」

「そっくり、その言葉をお返しします。あなたが食べないなら、俺も食べない。そう言っ

たはずだ。」

 完全にダウンしてしまったら食事どころではないが、今の状態なら自力で食事できる。

だから、ティエリアは、そう言ったのだが、それはスルーしているらしい。

「俺は無理。」

「無理じゃない。少しは胃を動かしてください。俺を餓死させるつもりなら、かまいませ

んが?」

「・・・・おまえらな・・・・」

「食べないんですね? ニール。」

「・・・・食べる・・・」

 この方法なら、親猫は食べる。これも、何度か看病していて学んだことだ。親猫の身体

のことを持ち出すのではなく、こちらのことを楯にすると、親猫はイヤイヤながらも従っ

てくれるのだ。



 食事して、食休みに、一緒にDVDを鑑賞していたら、外から扉が開いた。歌姫様は、

まあいいのだが、その後にキラとアスランと悟空が現れた。

「ただいまです、ママ。」

「ママーーーやっほーい。」

「久しぶりー」

「こんばんわ。」

 アスランたちは、『吉祥富貴』で働いている時間だ。それが現れたから、あれ? と、

ニールは首を傾げた。

「おまえさんたち、仕事は?」

「今日は、予約がなかったから、ラクスにお持ち帰りしてもらったんだ。」

「さんぞーからの伝言があったから、俺もラクスにお持ち帰りしてもらった。」

「本当ですよ? ニール。俺が保証します。」

 月曜日というのは、予約が入るのは稀なので、大概は店で、だらだらとしていることが

多い。だからって、こんなところで油売ってるぐらいなら家に帰ればいいだろうに、と、

ニールはアスランを睨んだ。

「いえ、お見舞いというか、デザートを届けにきたんです。それを食べたら、俺たちは帰

ります。」

「デザート? 」

「そろそろ、こういうものの季節なので、初売りのものです。」

 歌姫様が、紙箱から取り出したのは、あんみつだった。夏物のお菓子だから、そろそろ

発売時期なのだそうだ。背後から、ワゴンで麦茶も運ばれている。

「あんみつか・・・ティエリア、これ、あっさりしてるぞ? 」

「え? これは好きなんですか? ニール。」

 午後の会話を反芻して、ニールがそう言うと、ティエリアは、そのお菓子をしげしげと

観察する。

「好きなほうだろうなあ。・・・悟空、俺、あん抜きにしてくれるか? 」

「オッケー。」

「アスラン、僕、あん増加で。」

「はいはい。」

 あんみつは、上部の器部分に具材が入っていて、それと下部の器の寒天を混ぜ合わせて

完成する。フルーツみつまめやあんみつや種類もいろいろだ。ニールは食べたことがある

が、ティエリアはない。こうするんだよ、と、上部の具材をぽいぽいと下の器に放り込ん

で体裁を整えて渡してやる。

「これが、あんみつ。」

「そう、あっさりしてると思うぜ。」

みかんやモモ、求肥、みつまめ、寒天というカラフルなお菓子が蜜の中に浮いている。涼

し気で、食欲がなくても食べやすい。そこいらを考えて、歌姫は選んできたのだろう。

「ラクス、今日の仕事は特区だったのか? 」

「いいえ、オーヴでした。これは、あちらの老舗の和菓子屋のものなんです。カガリから

の差し入れです。」

 オーヴは特区と近距離だから日帰りが可能だ。予定を知っていてカガリが用意してくれ

たらしい。

「あいつ、意外とマメだな? 」

「女の子は甘いものは大好きですもの。それに、これなら、ママも召し上がれるだろうっ

て。」

 梅雨にダウンするニールのことは、『吉祥富貴』では、つとに有名だ。だから、いろい

ろと食べやすそうなものが配達されてくる。

 紫子猫は、スプーンで透明な寒天をひとつ掬い、ぱふっと口に入れた。噛んだらもにっ

という弾力と甘い蜜が混ざって、とてもおいしかった。それで、もにもにと、さらに寒天

を食べ進める。たまに、すっぱいみかんや、さらに甘いモモ、そして、もちもちの求肥が

絶妙なアクセントになっていて、一気に食べてしまった。

「気に入ったか? ティエリア。」

「これは美味いっっ。」

「そりゃよかった。俺の分も食べていいぞ。」