こらぼでほすと 一撃9.5
悟空に、餡子を半分にしてもらったあんみつを持っていたが、それをティエリアに差し
出した。小さな入れ物なので、二個や三個は食べられる。
「あなたは? 」
「まだ、あるよ。」
「じゃあ、いただく。」
また、もにもにと寒天を食べているティエリアはおいしそうなので、それを眺めている
親猫も微笑んでいる。あらあら、と、歌姫様が自分の分から寒天を掬い、親猫の口元に運
ぶ。
「ママへのお見舞いなんですから、一口ぐらい召し上がってくださいな。」
「はいはい。」
「あーーー僕も、ママにあーんする。」
「おまえは、アスランにしてやれ、キラ。」
「まあまあ、ニール。照れなくても。俺からも、どうですか? 」
「てか、まだ、たくさんあるから、食べなよ? ママ。」
カガリは性格が豪快だから、お見舞いも何箱も用意してある。全部は無理だから、一部
は、店に差し入れしておいたほどだ。
「こういうのは、こっちらしいお菓子だなあ。」
また用意してもらったのを口にしつつ、しみじみとニールが感想を漏らす。四季がある
地域なので、季節によってお菓子も異なるというのは、ニールの故郷にはないことだ。
「アイスクリームは世界共通でしょ? 」
「あれはあるけど、こういう独特のは、うちにはないぜ、キラ。」
「四季がある地域ならではなんでしょうね。俺も、プラントにはなくて残念でした。これ
、カリダさんは手作りしてくれてたんですよ。」
「さすがだなあーカリダさん。俺、いつか修行に行きたいな。」
まだ、顔は合わせていないのだが、キラが実家に帰ると何かしらのお見舞いを手作りで
寄越してくれるので、ニールとしても、是非、一度会ってみたい人だ。
「母さんも、ママに会いたいって言ってたから、そのうち来るかもしんないよ? 父さん
も、会いたいってさ。ね? アスラン。」
「ああ、そう言ってたな。ハルマさんは、キラを拳骨してしつけてくれるなんて、と、喜
んでた。」
「違うよ、父さんも母さんも、美人で世話好きなママに会いたいって言ってたの。」
「おまえ、どういう説明してんだよ? キラ。」
「ありのままー。」
ありのままって・・・と、ニールは苦笑する。キラには、かなり拳骨しているので、あ
まりキラの両親には、ありのままはまずかろう。そこへ三杯目を食べ終えた悟空が、そう
そうと切り出した。
「あのさ、ママ。さんぞーから伝言でさ。」
「ああ。」
「俺には食べるものか飲むものにしてくれってさ。」
「やっぱりなあ。でも、せっかくの父の日だったからさ。」
「わかるけど、うちの親父、情緒とかねぇーからさ。花なんか食えるかって。」
まあ、そういうことは言うだろうな、とは思っていたが、まあ、いいのだ。まるっきり
無視せずに、伝言をくれるということは、それなりに喜んでくれた証拠だ。そういう人な
ので、それが全否定でも構わない。
「ああ、そうそう、私くしも贈りました、ママ。これが、証拠です。」
携帯端末を取り出して、歌姫様が、ちょこまかと操作して、画像を呼び出して親猫に見
せてくれる。それを見て、ぐっっと親猫も詰まった。
「これ、すごいな? ラクス。」
「うふふふふ、特注です。三蔵さんには、これぐらいのインパクトが必要です。」
キラとアスランも覗き込んで、ぶぶっと噴出した。強烈な組み合わせすぎて笑える。ラ
クス、グッショブとキラはサムズアップだ。
ティエリアだけは、もにもにとあんみつを楽しんでいて、その映像は見逃した。だが、
そんなものより、あんみつが大好きになったティエリアは、これ以降、度々にあんみつを
買ってくるぐらい好物になってしまった。
作品名:こらぼでほすと 一撃9.5 作家名:篠義