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忍/た/ま/男女で勝手にCP ~伊助×そうこ vol.1

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僕にとって庄左ヱ門は共に学ぶ級友であり学友であり、大事な親友です。 どんな悩みであろうが親身に聞いてくれます。 しかし、そんな大切な友人にも話すことができなかった悩みを今僕は抱えているのかもしれません。 それは単純に体調のことでも勉強のことでも、忍術のことでもないことなので、どう話したらいいか分からないのです。 誰に打ち明け話していいのかも分からない。

「庄左ヱ門がそうこちゃんだなんて言うから」

頭の中で強く浮かんでくるのは一人の女の子の姿ばかりです。 その子とは普段から話すわけでもなく、たまにある実践の合同授業で見掛けるぐらいなので詳しいことは分かるはずもないのにも関わらず、好奇心かどうかも怪しい興味が激しく湧いてきます。 さっき庄ちゃんが言ったことは思い過ごしではないのかもしれません。 じんじんと痛いようでむず痒くなる胸を押さえました。
女の子のことを思うだけでこのような症状が出ること。 僕は何か患ってしまったのでしょうか。



『あ』
胸の痒さを落ち着けさせて教室の机食堂へ向かう廊下を歩いている途中です。 今は気持ちがただでさえ不安定だというのに余計なタイミングが合っているのか、授業を終えたくの一の子と鉢合わせに出会ってしまいました。 加えてその子は偶然にもそうこちゃんだったので、僕はどきりと胸が高鳴りました。

「伊助じゃん」
「そうこちゃん」
「これから夕食食べるの?」
「う、うん。 そのつもりだけど」

自分の視線がそうこちゃんの視線と一致した途端、胸がまたぎゅっときつくなって息苦しくなりました。 それも一段とひどい緊張感が共に襲ってきて、彼女に問いかけられるたび僕の返事はたどたどしくつまずいている感じになってしまいます。

「なんか顔赤いよ」

「そ、そうかな」

僕の顔を覗き込んでくるそうこちゃんの顔をまともに見れません。 経験したことのない恥ずかしさが余計に僕の身体を熱くさせていました。

「どうしたの伊助? ……熱でもあるのかな」

そう言うと何を思ったか彼女は頭を纏う頭巾を取って、垂れた前髪をかき上げて額を露わにしました。

「いや別にいいよそんなことしてもらわなくても」
「もし熱があってそのままになんかしちゃったらご飯が美味しく食べれないよ?」
「……そういう問題もあるかもしれないけど」
「じゃあ大人しくして」

語気を強くして真剣な表情を見せるそうこちゃんが迫り、丸くて瞳がとても綺麗な目が僕の視線を釘付けにして、漂う甘い香り、匂いが鼻を通っていきます。 この瞬間に心臓の鼓動がどくっと波打ったような気がして、顔は自然に真っ赤に染まってしまいました。
僕の実家は染物屋だというのに、逆に自分は心を淡い色で染められてしまったでも言いいますか。

「ほらやっぱり熱があるじゃん」

お互いの額を密着させて熱を計るなんて確実性があるのだろうかと疑問に感じますが、実際そうこちゃんの体温よりも僕のほうがかなり熱があったことは確かなようでした。 とはいえ原因は病気というわけではないと思うのですが。

「新野先生に見てもらう?」
「い、いやたぶん一時的なものだしすぐ寝れば大丈夫なんじゃないかな」

さっきからなんでこんなに舌足らずな返答しか僕はできないのできないんだろう。 これ以上彼女に手間をかけさせたくないので僕は踵を返して、長屋へと続く廊下に行こうとしました。

「……待って!」
「えっ?」

振り返った僕の目の前には、丸い少し大きめの玉が手に乗られていました。 見上げた自分の視線の中にはそうこちゃんがニコニコと笑っていて、とても可愛らしい表情を見せている。

「晩御飯の代わり、なんて言ったらすごく物足りないかもしれないけどねー。 ……自分で作ってみたんだ」

その後手の平を出してと言われ僕が言われた通りにすると、彼女は僕の手の平にそれを乗せました。

「あ、……ありがとう」
「いいって。 あと、出来れば味の感想とかもあとで言ってくれたら嬉しいかな」
「うん、分かった」
「それと、……私あれから潮江先輩とは特になんでもないからね?」
「えっ?」

どうして潮江先輩の名前がそうこちゃんの口から出てきたのか。

「だって私食堂で食べているとき伊助の独り言聞いてたんだもん。 ……普通の女の子じゃないとかね」
「そこまでは口に出してないよ!」
「それ心の中ではもしかして……」
「だってそうこちゃんはくの一クラスだから」
「くのたまだって普通の女の子よ? まだまだ乙女なはずなのにー」
「乙女……なんだ」

いまいちしっくりとこないその言葉に僕が微妙な顔をしているのを見て、そうこちゃんはなぜか不満げにため息をつきました。

「なんかしんべヱくん並に鈍感」
「えぇ?」

ちょっと納得いきませんでした。 ニブチンと称されたことのあるしんべヱと僕は同じということに。

「乙女っていうのは、うら若き歳若い娘のこと。 感受性が高くて純粋で穢れていない女の子のことなんだからね?」
「…………そうなんだ」
「そうですっ!」
「は、はいっ!」

少しむきになって怒るそうこちゃんの顔も僕と同様に赤くなっていました。 これも病気ではない熱っぽさでしょうか。

「そうこちゃんも顔が赤くなってる?」
「だ、だって」
「だって?」
「……だって乙女だもん」
「?」

言っている意味が分からずにいると、急にそうこちゃんが僕の方へ歩み寄りました。 そのまま、静かに抱きついたのです。

「わっ……」

彼女の髪からふんわりとした香りが鼻をくすぐり始め、柔らかい感触を身体から感じます。

「好きな人にこのぐらいのことはやってあげたいんだ……」

僕の耳元でそんなことを小さくぽつりと言うそうこちゃんがとても可愛らしく、僕の顔もまたさらに紅潮するばかりです。 いえそれよりも頭の中がなんだかそうこちゃんで駆け巡っているというか、いっぱいになりそうになり、意識が消え入る直前で…………。

――手の中で包まれていた丸く綺麗な饅頭は僕の手汗が染み込んで餡子を包んでいる皮が湿ってしまいました。



後日、忍術学園の食堂にはあるくのたまと忍たまの生徒二人が仲睦まじく食事をとっている姿が同学園の生徒たち他先生によって多々確認されているという。 くのたまの生徒の方は相も変わらず『すぺしゃる』な量の料理を平らげているとか。

「おかわりーっ」
「そうこちゃん、これ以上食べたら今度こそ太っちゃうよ?」
「太らない体質だからきっと大丈夫でしょ!」



おしまい。