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忍/た/ま/男女で勝手にCP ~伊助×そうこ vol.1

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僕が彼女についてそんなとりとめのない想像をしている間に、その本人はあっという間にあの量を平らげて満足そうに身体を伸ばしてました。

「……あれ?」

唖然としながら見ていた僕へと、彼女の目の視線が移りました。

「え?」

なんで急に僕を。 見物人みたいに彼女を見ていたつもりでいたので、突然目が合わさっても困るのですが。 僕はどうしたらいいのかと焦ってしまいます。

「伊助、まだ食べ終わらないのか?」

庄左ヱ門に呼ばれてはっと意識が戻ったかのようにそうこちゃんから目線を外しました。

「あぁごめんごめん、この蒲鉾食べたら食器返しに行くからさ」

余計な僕の詮索で友達を待たせてしまうのも良くないと思い、僕は残りの蒲鉾に箸を伸ばしました。

「ちょっといい?」

女の子の声でした。 目の前には手の平に蒲鉾を置いているそうこちゃんです。 あまりに瞬間的で僕と庄左ヱ門も目が点になってました。

「……伊助?」
「…………あ! う、うん。 何?」
「この蒲鉾食べていい?」
「い……いいけど?」
「ほんと? じゃあもらってくね!」

そう言うとひょいっと蒲鉾を口の中に入れました。 

「うん、やっぱり美味しい♪」
「…………」
「…………」

なんだか、そうこちゃんのペースに呑まれている気分です。

「あっ、土井先生ー。 よろしければその蒲鉾私が食べましょうか?」

僕のを食べたのも束の間、今度は土井先生の方へと行ってしまいました。 きり丸が一向に来ない様子にずっとやきもきしていた先生はまるで仏様の姿を見たかのように、心底そうこちゃんに感謝してました。 おばちゃんはそんな土井先生のことを睨んでましたが。

「僕らは部屋に行くか」

庄左ヱ門の促しに僕は無言で首を縦に振った。 そうこちゃんはというと、同じくのたまの生徒たちに『授業遅れるよ』なんて言われつつごめんごめんと言いつつ土井先生の分を食べてました。 なんて超人的な食欲なのでしょう。

「あ、伊助っ」

食堂を後にしようとする僕を彼女が呼び止めました。

「何?」
「もしこれからも食事の時間に会うようなことがあったら」
「う、うん」

呼び止められるなんて心の隅にも思ってなかったので、無意識に自分の顔が強張りました。 そうこちゃんはちょっとの間俯いて考え込む仕草をしてるかと思えば、程なくして顔を上げました。

「んー……また何かおかずくれないかなぁって」

なんだ、そんなことか。 そんなことって言う割りには普段からそんなことしてないのですが、大食いである彼女の言うことだから不自然なことじゃないだろうと思います。 大したことじゃなかったので肩の力がどっと抜けてしまいました。

「……うん。 まぁいいけど」
「えへへ……ありがと。 じゃあね!」

照れた笑いをほのかに浮かばせた後、そうこちゃんは僕たち二人の横を走り去って行きました。 あれだけお腹に食べ物を貯めさせたのに全然動きが鈍くなっていないのは、流石くの一組だと感心しました。

「伊助とそうこちゃんってあんなに仲良かったっけ?」
「なはずないだろ。 ……まぁ、くの一の生徒とあんなに喋ったのは初めてかも。 でも、ユキちゃんとかトモミちゃん達だったら怖くてできないと思うな」
「確かにそれもそうだな」

この会話をその二人に聞かれていたらおそらく僕らは『こてんぱんのぎったぎたの雑巾しぼり』にされて、しばらく生きた心地をしなくなるでしょう。 誰の気配もしない今だから気楽に言えるのです。 くわばらくわばら。

「それよりも、そろそろ午後の授業の開始時間が近いと思うんだけど」
「遅刻するのは嫌だし、それなら早く教室に行ったほうがいいかもね」
午後も教科の授業だから、居眠りをしないように注意しないと。
「大丈夫だよ。 は組のみんなはたいがい、食後は寝る性分だからさ」
「庄ちゃんが予想するまでもなく当たってるよ、絶対」
「ははっ」

そんな現実的な冗談から始まった雑談は廊下を渡って教室に着いた後も続いて、午後の授業開始まで止むことはありませんでした。



午後の授業、ましてや教科書に書いてある文字を見ながらなおかつ先生の言葉が耳にぞろぞろ入ってくると、自然に目に入ってくるものが虚ろ気になって頭の中もぼんやりしてくるものです。 乱太郎やきり丸、しんべヱの三人なら特に例を挙げて分かりやすいでしょうか。 僕もたまに寝不足気味だと首がカクカクになってしまいますから。
逆に今日はなぜか特に目が冴えてしょうがなく、庄ちゃんと同じくらい真面目に取り組めました。 しかし気持ちはどこかうわの空で無心になっていて、目の前のことしか考えられないから、余計なことも考えずに授業を取り組んでいたのかもしれません。

「今日の伊助は怖いぐらい真面目の度を越えていた」

授業が終わって先生が教室から出て行ったすぐに庄左ヱ門はそう切り出しました。

「それって褒めるところじゃないの」
「ペーパーテストがあまり芳しくないは組では珍しいことだからつい」

そう苦笑する庄左ヱ門の言うことは実にもっともなので何も言えません。

「何か良いことでもあったんだろうなって思ったよ」
「良いことって?」
「例えば、昼食の時間とかかな」
「……?」

いたって最近は普通の日々を過ごしてきたつもりだから特に思い当たるところは無い、と思います。 ただ、そんな僕の様子に庄左ヱ門は目を二回ぐらいしばたかせました。

「あれ? そうこちゃんのことじゃなかったのか」

庄左ヱ門の発する言葉の一言一句にいちいち首を傾げてしまいました。 なんでそうこちゃんの名前がここで出てきたのでしょうか。 そして庄左ヱ門はどうしてさっきの授業中の僕の様子と、彼女を関係させようとしたのか。

「あー……やっぱりなんでもないよ。 それより、夕食を食べに行こう」

言葉を濁して、庄ちゃんはおかしいなぁと一言呟いてました。 話を急に折られてしまったので逆に拍子抜けしてしまい、結局僕に何を言いたかったのかが分からずじまいでした。

「……庄ちゃん」
「ん、何?」
「まだちょっと教室に残っているから先に食堂行ってていいよ」
「どうしたんだよいきなり」
「考え事、かな」
「考え事……何か悩みでもあるのか?」
「……」

問われて、僕は口を開くことができません。

「……伊助」

庄左ヱ門はそんな僕の様子を心配そうに見ていたのですが、やがて口を開きました。

「僕には何のことか分からないけれど、あんまり思い詰めないほうがいいよ」
「え?」
「じゃ、お言葉に甘えて先に食堂行ってくるよ」

そう言って、さっさと廊下の方へ出てってしまいました。

「あ……」

呆気にとられてかろうじて言葉が出たときにはもうもう庄ちゃんの姿は見えなくなりました。 きっと彼なりの気遣いなのでしょう、深く追求してくることはありませんでした。

「でも余計な心配させたかな」