つわものどもが…■05
それは大いに興味をそそられる。と思っていると、自分で言いだしておきながら元親が「腹減ってくるな」と苦い顔をした。
「まぁ、作れるっても生地広げられるだけだけどな」
「ぶっは、意味分かンねぇ」
詰まりは具は誰かが作らなきゃピザとして成り立たないって事か。
「じゃあ俺がソース作るって言ったら、あんた生地作ってくれんの?」
「おう、いいぜぇ!でっけぇの作ってやるよ」
「ばっか、オーブンに入ンねぇよ」
「…デスヨネー。流石に窯焼きは一般家庭じゃ無理だよなぁ」
カッコいいところ見せてやるのに、なんて元親が残念そうに言う。オーブンに入るサイズで作ってくれればいいじゃないか。
とは言え、どうせ作るなら豪快に大きな生地を窯焼きしてみたい。父さんの知り合いにイタリア料理店のオーナーはいなかっただろうか。窯、借りれねぇかなぁ。
なんて、すっかり話に引き込まれて、元親が作った生地に俺が具を乗せて焼くところまで想像してしまった。
「それにしても、女の子の格好してたとかピザ生地作れるとか、ほんっと面白ぇな」
流石に窯は無理だが、家庭用のオーブンでいいならhome partyも楽しいんじゃないだろうか。小十郎は渋い顔をしそうだが。
「そ、それは…あれだ、ガキん頃はちょっと体が弱かったからよ、まぁ迷信みたいなもんだが女の子の格好で育てると強くなるからとかってヤツで…」
しどろもどろ、顔を赤らめながら元就のヤロウ余計な事言いやがって、と悪態を吐いて、元親はやおら立ち上がった。
「咽、渇いちまった。あー…コーヒー買ってくっけど、政宗もいるか?」
ジーンズのポケットに手を突っ込んでじゃらじゃらと音をさせながら言う元親に、じゃあカフェラテを、と素直に答える。俺のトレーにあるコップにはまだ水が入っているし、元親が横に除けていたトレーのコップにもお茶がはいったままだ。照れ隠しに席を立ったのは丸分かりだが、話を切り上げて退散しようと考えないところがまた面白い。
休憩時間が終わるまでまだ少し…コーヒーとカフェラテを持って戻ったらまた話してくれるんだろう?アンタの事…アンタ達の事、もっと教えてくれよ。
05:隠し事ばかりしないで
(お題提供:エソラゴト様 http://eee.jakou.com/)
** あとがき **
隠しているのは過去の記憶。話したい、けど話せない。話さない。
ピザ生地だけ作れるチカってのは、設定とか妄想を話したら友達がさらりと投下してくれた素敵ネタです。
元親の左目の当方自己満足設定で、前世では自分の不手際で眼球を傷つけて視力悪くした事になってます。
** 2011.4.10 **
作品名:つわものどもが…■05 作家名:久我直樹