贖罪
清史郎を暗い土の中へ埋めた日の夕方、薄暗い部屋の中で僕はネヴァジスタと対峙していた。
僕は両手で、たまたま手に入れた拳銃を握りしめている。後は慎重に撃鉄を上げ、引き金を引けばすべてが終わる…はずだった。
「どうして、殺したの?」
困惑した表情のネヴァジスタが、不意に口にした。
『どうして、彼を、殺したの?』
瞬間、清史郎の姿が重なった。
「…お前、が…言う…な…」
口の中が乾いて、うまく言葉が出せなかった。
『間違って、殺したんだ?』
揺れる視界の中で、ネヴァジスタが、清史郎が、言う。
「…お前、が…」
『仕方がなければ、殺していいの?』
「……」
『君の友人も、そうやって、仕方なく殺されたのかもしれないね。』
「それは、違ッ…」
『だけど、彼は殺されたよ。君に。』
酷く恐ろしい顔が、僕を見つめていた。
僕はその視線を振り切るように、目を瞑り、首を振った。その時、
鳩尾に鈍痛が走った。
「…っ…ぐ…!」
一瞬怯んだ隙に、僕の手から拳銃は抜き取られた。そして今度は、僕が拳銃を突きつけられる。
「どんな気分なの?無関係の人を殺した後って。」
さっきと変わらず、困惑したような表情のネヴァジスタが僕を見つめる。
「僕は何も感じられなくて…。ねぇ、どんな気分?」
僕はずしりと痛む鳩尾を押さえながら、小さく呟く。
「最悪…だ、ね…。こんな…思いをする…なら、自分が…死んだ方が…マシ…」
「…そう。」
ネヴァジスタが小さく息を吐いた。そして、言う。
「それじゃあ、死になよ。」
ドン、という鼓膜を刺すような大音量と共に、腹部に激痛が走った。
声を上げる間もなく薄れゆく意識の中で、ネヴァジスタの声がした。
「君の願いを叶えてあげたんだ。感謝してよね。」
…感謝…しているかも、しれない…。
僕はもう、この手で…人を殺さないで済んだのだから…。
それに…思ったより早く、友人にも会いに行けそう…だ…