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ジェストーナ
ジェストーナ
novelistID. 25425
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いたいけな投手

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  「あべくん……あべくんん……」
  三橋が、泣いている。泣き声で必死に慈悲を乞うている。可愛い。三橋は可愛い。本当に可愛くて可愛くてどうにかなってしまいそうだ。笑顔が一番の可愛さだが、泣き顔は嗜虐心と征服欲をそそる。こんなに可愛い男を、誰が放置できるというのだろう? 本当に 可愛い。いっそこのままたべてしまいたいぐらいに、かわいらしい。
  今日の約束は、口で淫らなことをするのを覚えること。見捨てられることに恐怖を覚えている三橋は二つ返事で応じた。
  顔どころか耳まで真っ赤にした三橋が、たどたどしい手つきで学ランのズボンに手を
伸ばしてくる。野球ダコでいっぱいの手のひらが、そっと添えられる。びくびく、おどおどした手つき。三橋の脳裏は、いつも恐怖でいっぱいだ。
  やがて意を決したのか、ベルトに手が伸び、前が寛げられる。三橋がやりやすいように少し腰を浮かせて、座り直してやる。自分で命令したくせに三橋が今からしてくれることを思えば、嫌でも興奮した。
  認めよう。こんなの約束なんかじゃない。三橋のためでもない。全部自分のためだ。ていのいい理由と聞こえのいい言葉で正当化して、単純に三橋を支配したいだけだ。
  三橋は逡巡していたが、ほんの少しだけ顔を強張らせた。
  「っ……」
  そして、そのまま、はぐっと食物を咀嚼するかのように口に含んだ。
  性器が熱く柔らかい口内に包み込まれる。それが好きな人の体内なら尚更ときめく。軟らかいのに硬いざらついた舌が、一生懸命に動かされる。そのたび、背筋を電撃のようなものが駆け抜けていく。
  「はふぅ……ん、む、れるっ……ちゅ、ちぅ、……っ、ちゅっぷ、ふぐぅ」
  頬の内側の肉できゅうと圧迫される。カリや裏筋のところがくすぐられて、思わず呻いた。亀頭が三橋の上顎に触れると、三橋の肩が少し揺れる。ムキになって肉棒をしゃぶりあげる姿は、正直そそる。じゅる、と、唾液を啜る音が響いた。
  息が上がり、目の前にあった三橋のボサボサの髪を遠慮なく掻き乱す。感じているのを伝える。たったこれだけで汗が滴り、三橋の髪に落ちた。
  広げた足の真ん中に陣取って、股間に顔を埋め、口淫に浸る三橋の姿を見ているだけで仄暗い気持ちが胸の中に広がっていく。
  「ぷはっ……! はっ、はっ、ふぅ……んっ、じゅっ、うんむっ、ふぁ、ちゅう……、はへふん、はへふん、ひもちぃ……?」
  口に入れたままで必死に訴えかけてくる三橋。音を発するために喉が震え、吐息と混ざって刺激が走る。この泣き顔に、本気でぶちまけてしまいたい。
  「ちゅ、ぅちゅ」
  一旦肉棒を口から取り出した三橋が、口唇を窄めて先端を愛撫してくる。ぷるんとした口唇の感触に、腰が痺れた。
  「ん……っ、ずいぶん上手に、は、なったな、三橋……っ」
  「ほんとう?」
  褒めてやると、少しだけ嬉しそうに泣き顔が歪んだ。顎が疲れているのだろう、いつにも増して表情に覇気がない。
  三橋は再び性器をくわえこんで、ぴちゃぴちゃとしゃぶりあげた。
  「はっ、はぁっ、ん……っく、ぐっ……」
  歯を食いしばって刺激に耐える。先端からじんわり液が滲むのが自分でもわかった。
  勃起しきって痛いぐらい張り詰めたソレに両手を添えて、口に入らない部分を必死に擦りあげてくる。きぅ、と、袋が上がってくる。それを腹に力を入れて、射精を堪える。
  尿道口を舌で割り開かれて、反射的にぎゅっと目を閉じる。目を閉じればより一層舌使いと口の中の感触だけがリアルに伝わってきて、より気持ちいい。
  「んむっ、く、ぢゅるるーっ……む、れる、ちゅ……、ふんんっ……」
  力の流れが吸い上げるほうに変わる。三橋を窺えば、目を閉じて、本当に必死に務めを果たそうとしていた。
  「ちゅばっ……、は、はへふん、らめ、かなぁ……おれはひぃから、しゅ、きにらして……」
  卑猥な水音と、くぐもった声。見上げた空は絵の具を塗りたくったように蒼い。
  二人きりの屋上と、放置された弁当。握り締めたビニールシートの幼稚な絵柄が背徳感を煽る。
  「ふぁ、……、ちゅ、んっく、んむぅっ、……はっ、んぅぐっ!?」
  「出すっ、んっ、出すぞっ三橋っ!」
  「ひぎ、ん、んぐぅぅぅぅぅっ!」
  髪を引っつかんで強引に喉を突けば三橋が目を見開いて顔を強張らせた。そのまま二、三度むりやりそうして、情欲のメーターが限界を吹っ切ったところで三橋の喉に精子を叩き込んだ。
  三橋が苦しくないように、名残惜しいがすぐ口から引き抜いた。三橋は喉を押さえて
ごふごふと噎せ、乱暴に水筒の蓋を開けて、制服が濡れるのも構わずコップを使わずお茶を飲み干した。
  お手拭きとして用意したウェットティッシュで、陰毛まで唾液でぐちょぐちょに濡れた性器を拭きながら、なんとなしに三橋を眺めた。その視線に気付いた三橋は、いつもの
ようにそう言った。

  「阿部君、オレは阿部君に嫌われても仕方ないと思う……けど、……でも、ホントは
そんなの嫌なんだ。嫌だよ、阿部君、オレを嫌いにならないで。お、オレを、オレのこと、ぜったいぜったい、見捨てないでっ……!」

  三橋の口からその言葉を聞くたび、ぞくぞくと感じてしまう。射精した直後で萎えた
ソレが、再び熱を持つぐらいには。
  ある程度は仕込んだとはいえまだまだヘタクソな三橋の口淫なんて、本当はさしたる
問題じゃない。大事なのは、物事の本質。
  ゆっくりとだが確実に、身も心も三橋のモノにされていく事実が臓腑を焦げつかす。
  嫌わないで見捨てないでと言い募る三橋の呪いのような好意が鎖のように伸しかかる。
  三橋廉が阿部隆也の所有物であるように、阿部隆也は三橋廉の所有物にされていく。
  自分でも気持ち悪いぐらい曲がった愛情が、三橋をつかんで離さない――――
  「嫌わねえよ」
  目を合わせたら逸らされた。
  「それに、見捨てもしねえよ」
  横に向けられた顔の、口唇の端が歪んだ喜びに吊り上がっていた。
  「だって俺たちは――――バッテリーなんだから」
  三橋の頬に、新たな涙が零れ落ちていく。
  「……はい、阿部君」
  最後まで目が合うことはなかったが、彼はしあわせそうに笑っていた。



作品名:いたいけな投手 作家名:ジェストーナ