こらぼでほすと 休暇2
らしい。いい店教えろ、と、捲簾に言っていたから、奢る気満々だ。
「なあ、天蓬、課題手伝ってくれんだろ? いつ、やる? 」
「ははは・・・慌てなくても、毎日、顔は出しますよ。あなたのママのことも詳しく知り
たいですからね、」
「写真はないけど、美人だぜ。それに、料理美味いし、すっごく世話好きなんだ。三蔵が
いないと機嫌が悪くなってさ。」
「どこで、そんな人を見つけたんですか? クラブで? 」
「ううん、『吉祥富貴』に就職して来たんだ。子供が一杯居るから、俺も同じように世話
してくれて、ついでだからって、三蔵が嫁にしちゃったんだよ。」
「店に就職? それって、三蔵の嫁は男ってことですか? 」
「うん。」
おやまあ、と、天蓬は大声で笑い出した。あれが嫁を貰うというのも一大事だが、それ
が男っていうのは、サプライズすぎて笑うしかない。
「あれ? あいつ、趣旨変えしたのか? 本命おまえじゃなかったか? 悟空。」
「俺? それはないそれは。でも、うちのおとんとおかんさ。そっちは、ノーマルなんだ
。だから、悟浄たちみたいな肉体関係はないぜ、捲簾。」
「ああ? 」
「でも、いちゃいちゃしてんの。だから、夫婦。」
悟空は事実を話しているのだが、ものすごく衝撃の事実には違いない。天蓬と捲簾は、
互いに顔を見合わせた。いい暇つぶしが出来たな、という意味合いの視線を交差させる。
「それなら、金蝉にも話を聞かせてあげましょう。二。三日、うちへ来てのんびりしまょ
う、悟空。」
「それはいいけどさ。先に課題を手伝ってくれよ。全部やり終わらないとヤバイんだ。帰
ったら、フェルトが降りてくるから一緒に遊ぶ約束があるし、お盆の手伝いもあるからさ
。」
「ふぇると? 」
「ママの子供。桃色の髪の毛の女の子なんだ。俺、妹ができたみたいで、すっげぇー嬉し
い。」
「そのママって、おいくつなんですか? 」
「三蔵と一緒ぐらいだと思う。まだ三十前。」
「「 え? 」」
「ああ、違うよ。ママが産んだんじゃないぜ。子供って言っても血は繋がってないからさ
。」
「いや、そもそも男は産まないだろ。」
「あなどれませんね? 三蔵。そんな変わった人を嫁にするなんて。」
なんか、ここ数年のことを、ちゃんと最初から聞かなければならないらしい。どこから
、そんな嫁が現れたのか、そもそも、なぜ、そんな嫁を貰うことになったのか、さらに、
なぜ、男なのか、いろいろと聞き出さないと、悟空の話では繋がらない。
「課題を片付けるとこから始めましょうか? 捲簾、あなた、茅台酒の古酒のいいのを探
してきてください。」
「まあ、そんなとこからだろうな。悟空、夜市にも行こうぜ。」
「こっちの屋台はひっさびさーーーっっ。やっほーいっっ。」
るんるんと鼻歌を歌いながら、悟空は課題を取り出す。しばらくは、三蔵も大人しく仕
事をする。一週間が過ぎたら、悟空を傍に配置して暴発させないように気にかけなければ
ならないから、それまで悟空を連れまわすのは、いつものことだ。
「俺、三蔵に声かけてくるよ。」
「僕も、お預かりする挨拶をしませんとね。悟空、一緒に行きます。」
悟空と天蓬が連れ立って部屋を出る。俺まで出向くこともなかろうと、捲簾は、宅配の
箱を覗き込む。悟空のおやつやカップめんが壊れないように衣服でガードされて、きっち
りと詰め込まれている。それを眺めて、捲簾もニヤリと頬を歪めた。
作品名:こらぼでほすと 休暇2 作家名:篠義