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ぐらにる 流れ クッキー

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トレミーへ戻ったロックオンは、頼まれていた荷物をバラす作業から始める。だいたい女性陣の化粧品なんてものは、かさばるし容器が割れ物で毎度、厄介なものだ。ついでに、戦術予報士の依頼は、何がなくても酒。それも本数も半端ではない。
「え? あのワインなかったの? 」
「あのさ、ミス・スメラギ。トカイワインって・・・そんな地域限定モノは現地でないと無理だって。今度、あっちへ降りたら買い付けるからさ。とりあえず、アイスバインにしといたぞ。」
「おい、ロックオン。頼んでたプロテインは? 」
「こっちにあるぜ、ラッセ。」
 トレミーのスタッフたちの個人的買い物とはいえ、結構な数になるのでコンテナ一個に梱包するなんてことになる。その買出しを、ロックオンが一人でやっているので、大仕事だったりする。
「えーーーーこれだけ? 足りないよ、ロックオン。」
「あ、それ、限定販売だから残り少なかったんだよ、クリス。似たようなの入ってるだろ? 」
「ああ、これならいいかな。フェルト、運ぶの手伝って。」
 どんどん化粧品に詳しくなっていくのが、ある意味、悲しいと内心で思いつつ
荷物の分配を終えると、ようやく自分の荷物に取り掛かる。とはいっても、それも食料とかお菓子とか刹那たちの日用品が大半だ。
「刹那、シャンプーとかだから、これ運べ。ティエリア、こっちはお菓子だから食堂のストッカー。アレルヤ、こっちは食材。同じく食堂。」
 コンテナの中身が片付く頃、やれやれと自分のものを一番奥から取り出していたら、戻って来たフェルトが、ん? と、首を傾げて荷物をひとつ持ち上げた。
「これは? 」
「ああ、クッキーの型だよ。」
 ちょっと思いついたことのために、保存の利くお菓子の製作にかこつけて型を大量に買ってきた。これなら、フェルトや刹那に手伝わせて、いいレクリエーションにもなる。
「片付いたら、それでクッキーを焼こうな? 」
「うん。アルファベットなんだね。」
 ジャラジャラと型を鳴らして、フェルトが運んでいく。ちょっと後ろめたい気分を味わいつつ、まあ、たまにはいいじゃないか、と、ロックオンは自分を納得させて格納庫を後にした。



 翌日、朝から食堂で、クッキー作りは始まった。料理の出来るアレルヤも、さすがにお菓子にまでレパートリーはないから、ロックオンの説明を聞いて手伝っている。生地を広げるのは力仕事だから、そこいらの担当だ。
「フェルト、刹那、生地が広がったら、それで型抜きしていってくれ。とりあえず、自分の名前からって、どうだ? 」
 型はアルファベットだけではない。動物の型もあれば、星やハートなんてものもある。それらで、さくさくと型を抜いて、オーブンで焼けば、あっという間にクッキーは出来上がる。途中から、クリスとリヒティーが参加して、いつの間にかティエリアも型抜きに参加している。生地も、単調なものではなくて、ジンジャアーを練り込んだものや、チョコチップ、オレンヂピール、ココアなど、いろいろな色や味になるように工夫した。
「せっかくだから、アルファベットは全部抜いてくれ。」
「・・・マメよね? ロックオン・・・」
 様子を見に来たスメラギは呆れたように焼き上がったクッキーを摘みつつ、それを眺めている。今は、それほど忙しいことはないが、それでも、こんなレクリエーションを思いつくのが、さすがに、世話好きだと苦笑する。
「ロックオン、これは、どうやって保存するつもりだ? 」
「冷めたら、タッパーに入れておけば、しばらくは保つんだ。種類別に入れておこうと思うんだが、それでいいか? ティエリア。」
「それでいいんじゃないか。」
 型抜きの途中で、ティエリアも焼きたてを摘んでいる。自分が作ったというのが珍しいから、手が出るらしい。
「こらこら、そんなに食べたら保存する分がなくなるだろ? 」
「食べるためにあるんだろ? アレルヤ、ひとつ食べろ。」
 生地を伸ばしているアレルヤの口に、刹那が動物型のクッキーを咥えさせる。ぽりぽりとアレルヤも食べて、「おいしいね。」 と、微笑んだ。

 たくさんのクッキーが焼きあがり、それを冷ますために食堂で広げて作業は終わった。スタッフには、それなりの仕事もあるから、作業が終わると持ち場へ散っていった。それを見送って、ロックオンは、種類別になっているクッキーの山へ手を出した。
 なかなか言えない言葉があって、昨年は、たまたま時期が合ったから直接、伝えた。今年は、その日は、そこにいられないから、こんな他愛もないことを思いついた。たぶん、あの男は気付かないで、食べてしまうに違いない。
・・・・でも、一応、年に一度だしな・・・・
 アルファベットの四文字を、各山から取り出して、それを別に詰めた。輸送の段階で割れては困るから、ぎゅうぎゅうになるように小さなタッパーに詰めて、それを箱詰めにする。
 次に地上に降りる予定なのは、アレルヤだ。だから、頼まれてくれるだろう。四文字が並んでいるわけではないから、気付かれない可能性が高いが、贈り物としても問題はない。
 でも、自分が出来る精一杯の表現だ。気付かなければ、それでもいい。あの男に、自分の安眠を保証してくれるあの腕に感謝のつもりで贈ることにした。





 トレミーのスタッフは、ここのところ順番に地上へ降下している。人間は重力下を長く離れられないから、時間がある時は、こうやって体調を整える。マイスター組も、一人か二人ずつ、地上へ降下しているのだが、今回は、一人ずつになっていた。
 機体のロールアウトまで、それなりの時間があるので、長期間、降下するためだった。自分の前に、刹那が下りたので、今回は刹那には頼めない。
「・・・小包? うん、大丈夫だよ。くくくくく・・・・」
「悪いけど頼むよ、アレルヤ。・・・・その笑いはなんだ?」
 小さな箱と住所のメモを手にして、アレルヤの部屋を訪れたら、クスクスと相手は笑って受け取った。
「これ、あの人だろ? 」
「・・・うん・・・」
「ロックオンが、こういうことをするの初めて見たから楽しくて。」
「あーうん、ちょっとな。」
「この間、降りた時に何かお願いされたの? 」
「いや、俺が勝手にやってるだけ。いつもの気晴らしのお礼ってヤツ。」
 アレルヤは、どうやって気付いたのか、俺の『気晴らし』のことを知っていた。刹那が話したとは思えない。刹那と俺の関係が、そういうものじゃないことに気付いたから、そこから推理したらしい。
「相手は、ちょっと問題だけど、ロックオンの気晴らしになっているなら、僕はいいと思うんだ。だから、これからも遠慮しないで言ってね。刹那だけじゃ、アリバイ工作は難しいでしょ? 」
「ありがとう、そのうち、終わりになるとは思うよ。・・・組織が動き出したら、おいそれと逢えなくなるからな。」
 組織が動き出せば、それを追い駆けているあの男も、それによって動き出すことになる。だから、それまでのことだと、腹を括っている。敵対する間柄なのは明白で、こちらの素性は一切漏らしていない。あの男が、俺だと気付かずに仕掛けてくる。
「・・・それでいいの?・・・」
作品名:ぐらにる 流れ クッキー 作家名:篠義