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ぐらにる 流れ 遠征1

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久しぶりの休暇が取れたので、ハガキを送った。まずは、地上の南の島にある待機所での仕事があったので、それを済ませてから休暇になる。とりあえず、二週間だというから、刹那と一緒に特区へ行くことにしてあった。
「『気晴らし』か? 」
「ああ。一週間だけ勝手にしていいか?」
「構わない。その間は、特区に滞在している。」
 すっかり、俺の『気晴らし』に慣れた刹那は、アリバイ工作もお手の物だ。なぜか、アレルヤたちにもバレていて、どちらも、俺が、こっそりと動いている分には協力してくれている。
「予定はないのか? 」
 待機所のコンテナを整備しつつ、そう尋ねたら、「あんたが戻ったら中東へ行く。」 と、だけ告げられた。
「それならさ、刹那。」
 わざわざ、俺のほうのアリバイ工作しなくても、と、言いたかったのだが、相手は聞く耳をもたない。
「あんたも、中東までは連れて行く。俺の潜入先へは伴わないが、そこで待機してくれ。」
「ああ、うん。」
「危ない橋は渡らないつもりだから、気楽な休暇だと思えばいい。」
「え? 何をやらかすつもりなんだよ? おまえさんはっっ。」
「大したことじゃない。現状の確認だ。」
 刹那がアザディスタンへ吸収されたクルジスという国の人間だと言うことは聞いている。おそらく生国の現状というものを、その目で見てきたいのだろう。ただし、そこは、俺のようなあからさまな西洋人は、毛嫌いされているから、付き合うことはできない場所でもある。
「ここの整備とチェックを終えたら、さっさと動くぞ? 」
「りょーかい。」
 二人で、待機施設の中の不具合箇所がないかを確認し、コンテナの整備を終えると、一泊せずに、そのまま移動した。





 明日からの出張を前に、友人は、ものすごくブルーな顔をしていた。ユニオン軍部の会議と研修に本部へ呼び出されたのだが、何か問題が発生したらしい。
「どうにも浮かない顔だね? グラハム。」
「ああ、ビリー。非常に悲しい事態が発生だ。・・・・姫が、明日か明後日には、こちらに来るという手紙が来たのだ。」
 ずぅーんと落ち込んだ友人は、そのまま机に突っ伏した。おやおや、それは、と、僕も残念に思った。会議と研修は、これから一ヶ月にも及ぶ。長くて一週間しかいない遠距離恋愛のお姫様とは、会えないことが確定している。
 そして、机に突っ伏していた友人が、ガバッと起き上がり、期待の眼差しを向けている。
「グラハム、先に忠告しておくけど、カスタムフラッグで通勤とかいう無謀なことは許可されないと思うよ? そんなことしても、お姫様と顔を合わせられる時間は、僅かのことだろ? 」
「だが、逢えないよりはマシだ。」
「・・・・あのさ、そういうことなら、僕から、ひとつ提案してあげるよ。」
 この友人が真剣に交際しているのだから、僕としても協力は惜しまないつもりだ。なんせ、変わり者の友人だから、付き合ってくれる相手があるだけで感謝したいくらいだからだ。
「なんだ? 」
「きみ、泊まりは一応、向こうの宿舎だろうけど、別に、そこに泊まる必要はないだろ? 適当な部屋を予約して、お姫様にエアーチケットを用意して遠征してもらえばいいじゃないか。お姫様だって、ここでなければならないってことはないんだろうしさ。」
 わざわざ、遠距離を移動して逢いに来てくれるのだから、ここから少し足を延ばすくらい許してくれるはずだ。終日、べったりとはいかないが、それは、ここでも同じことだったはずだし、本部のある場所は大きな都市だから、退屈しのぎの散歩にも事欠かない。
「ビリー、きみの頭脳は、なんと素晴らしいのだっっ。私は、感動したっっ。」
「とりあえず、ホテルとエアーチケットの確保をしておきなよ。明日か明後日だというなら、僕が渡して事情を説明しておくからさ。」
 いきなり、それだけを部屋に置いても、移動してくれないだろう。それなら、僕が説明に参じればいいし、この機会に、その綺麗で優しいお姫様のご尊顔を拝しておくのも楽しみになる。しかし、友人は、ちょっと困った顔をした。件のお姫様は、とても恥ずかしがり屋で、こちらに来ても出歩こうとしないのだ、と、言う。それに、いろいろと事情があって、お姫様の連絡先すら友人は知らないらしい。
「けど、今回は緊急事態だし、僕からも謝っておくから。・・・・それに、きみを、そこまで惚れこませるお姫様には、僕も興味があるのさ。」
「ビリー、私の姫は、私のものだが? 」
「もちろんだよ、グラハム。そうじゃない。ただ、ひと目、お会いしたいってだけのことだ。僕には、すでに、心に決めた人がいるから、そういう心配はしなくてもいいよ。」
「そうか、なら、すぐに手配する。協力感謝する。」
 友人は、軽く頭を下げて、手配のために手近のパソコンを覗き込む。すぐに宿泊とエアーチケットの手配をすると、その番号を僕に教えて、自分の出張のための準備に出て行った。




 たまには、ユニオンまで遠征するか? と、刹那に尋ねたのだが、わざわざ、ユニオンまで移動するのは面倒だと拒絶された。まあ、勝手知ったる特区のほうが休暇は過ごしやすいだろう。
 とりあえず、一番早いチケットをとって、ユニオンまで移動した。どうしても、急いでいると時差を忘れる。いつも、到着は深夜枠になるが、このほうが都合がいい。これなら、帰っているかいないかが、はっきりするからだ。
 合鍵を差し込んで、部屋に入ると、人の気配があった。だが、どうも、いつもと違うので用心に、背後に隠しているブツに手を置いた。居間に入ると、灯りは点っていたが、見知らぬ顔があった。即座に、ブツの安全装置を外して、突きつける。これぐらいのことができないと、生き残れない。
「誰だ? 」
「おや、用心深いお姫様だ。・・・・僕は、ビリー・カタギリ。グラハムの友人だよ。」
「それで? 」
「グラハムは、本部へ会議と研修に出かけてしまったんだ。それで、僕がメッセンジャーとして残っている。」
 これを、と、差し出された手紙を、とりあえず手にした。見る限り、武器を携帯している様子ではないが、少し離れたところへ後退して、銃身は相手に向けたまま、その手紙を開いた。そこには、一ヶ月に及ぶ本部での会議と研修が入って迎えられないことを、残念だと綴った文字があった。筆跡は、以前、同じ研修を受けた時で知っている。同封されているエアーチケットとホテルの予約名、そして、もし、出来るなら一日でも遠征してきて欲しいと、切々と語られた文字だ。
「きみからの手紙が届く前から決まっていたスケジュールで、どうにもできなかったんだ。それで、もし、よければ、そこまで遠征してもらえないか、と、僕がお願いがてらに待たせていただいた。グラハムは、死にそうな顔をしていたんでね。」
「そういうことなら・・・・別に・・・」
 いつも、時間が合わなければ、そのまま逢わずに帰る。どうしたって、どちらも予定が決まっているから、そういうことになってしまうのは、了承済みだ。
「今回は、どのくらい? 」
「・・・五日・・・」
「なら、これから出向いてくれれば、三日は確保できる。・・・・よかったよ。二日とか言われたら、どうしようかと思ってたんだ。」
作品名:ぐらにる 流れ 遠征1 作家名:篠義