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ぐらにる 流れ 遠征1

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 じゃあ、早速、空港まで送るから、急いで、と、急き立てられた。「僕は、武器は持たない主義だから、そういう危険はない。」 とも、言われて、渋々、銃は背後のホルダーに収めた。今やってきた空港へ逆戻りして、エアチケットを、カウンターで、すぐに乗れる便のものにしてくれた。
「少し時間があるから、お茶にお誘いしてもいいかな? お姫様。」
「その呼び方は、やめてもらえませんか? 」
「どうして? とても似合っているのに・・・・本当にグラハムが語る通りの人で、僕は嬉しくてしようがないんだ。」
 おまえ、この人に、何、語った? と、今すぐ、彼の襟首を掴まえて詰問したい気分だ。たぶん、彼が言う友人というのは、この人なんだろう。
「一体、どんなことを言ってんですか? 」
「まあ、そこのカフェで、ご説明させていただこう。」
 待ち時間一時間なので、三十分は猶予がある。国内線なら、税関もないし、チェックも比較的易しいものだから、時間はかからない。この空港は、二十四時間稼動しているから、カフェやショッピングモールも開店している。そこの一角に、腰を下ろした。
「いつもはね、軍の仮眠施設で暮らしているのかと思うぐらいに、帰らない男なのさ。けど、きみが来ると、帰宅することに命懸けって感じでね。」
「ああ、それはわかります。てか、それって、迷惑かかってんじゃないんですか? 」
「いや、上級大尉の人間らしいところが伺えて、みな、微笑ましく思ってるよ。・・・彼、ちょっと変ってるからね。」
 えーえーえー、ものすごーく変ってるでしょうよ、と、俺は内心で激しく同意した。あれだから、勝手に、人の内に入り込んできたのだ。普通は踏み込ませないところへ、勝手に土足で侵入して、こちらの心を掌握されてしまった。
「つまり、俺も変わり者だと? 」
「そうは思えないね。きみは、とても綺麗だし一般常識も備わっていそうだ。よく、彼と付き合う気になってくれたよ。ほんと、僕は、きみに感謝しているんだ。」
「はあ? 」
「だって、グラハムを、あそこまでメロメロにできるなんてさ。キリストでも無理だと思う。」
「はい? いや、まあ。」
「空を飛ぶことだけが生き甲斐だと言い切ってたグラハムが、『姫のために平和を創りたい。』とか言うんだもの。メロメロじゃないか。」
「ああ、まあ。・・・・ええ。」
 テロで家族を失ったことを、彼は知っているから、そう言うのだろう。そして、平和になれば、一緒に過ごせるとも思っているに違いない。そんな単純に、平和なんて望んでも手に入るものではない。たが、その気持ちは純粋に嬉しいと思った。
「きみに関することは、何ひとつ、僕らは聞いていない。ただ、容姿も心も美しくて、守りたくなる、とは、いつも言ってる。だから、僕も会いたくてね。」
「俺、男なんですが? 」
「性別は、この際、関係ないよ。僕も綺麗だと思うし。」
「え? いや、別に・・・・普通の男ですよ? 俺は。」
「普通じゃあ、グラハムは、あそこまで惚れないさ。・・・・でも、僕は、何も聞かないし質問もしないよ? きみたちが幸せであれば詮索は野暮だからね。」
 まあ、いきなり銃で威嚇したから、普通ではないことは、バレただろう。ここは敵地で相手は敵だから、そうしなければならない。
「幸せですか? 俺たちは。」
「幸せだろ? だって、わざわざ、遠距離を越えて会いに来るきみと、いつ来るかわからないきみを待っているグラハムは、どちらも、互いが大切だからできることだ。」
「・・・・はあ・・・」
「おや、きみは違うのかい? それはそれは、非常に残念だね。」
 大袈裟に、相手は驚いたフリをした。俺にとっては、幸せとか愛してるとか、そういう部分じゃなく、『気晴らし』で『よく眠れる』という部分が重要なのだが、それも裏を返すと、そういうことにはなる。反論できなくて、困ったら、噴出された。
「くくくくく・・・これ以上は意地悪しないでおくよ。さあ、そろそろ、チェックインの時間だ。」
 さあ、楽しんできて、と、デパーチャーゲートへと案内された。なんだか、よくわからないうちに、事が進んでしまった。わざわざ、罠に嵌めるためだと言うなら、あの男の目は、もう少し狡猾だったに違いない。そういう気配もなかったし、誰かにつけられている様子もなかったから、大人しく従った。
・・・・・まあ、いいさ。もし、何かあったら逃げるだけだ・・・・
 そのための手配も考えていたら、三時間のフライトは、あっという間のことだった。


 到着した空港のアライバルゲートを抜けると、そこには見知った顔があったのに気付かなかった。ここから、ホテルの確認と、エアチケットの確保を考えていたから、航空会社のカウンターへ足を向けようとして、背後から抱きつかれた。
「姫、あまりにつれない態度だな? 」
「え? 」
 振り向いたら、グラハムが満面の笑みを称えていた。すでに、時刻は夜明け前の時間だ。
「ビリーから連絡が入ったのでね、きみを迎えに来た。」
「え? おま、おまえ、仕事だろ? 」
「もちろん、明日も会議だが、きみを迎えないわけにはいかない。遠いところまで遠征してくれて、ありがとう、姫。」
「・・・つっ、ついでだろ?・・・てか、おまえ、どういう説明してやがる? あの人、俺のこと、姫って呼んでたぞ?」
「きみのことを、『ニール』と呼ぶのは、恋人である私の特権だ。だから、『姫』としか言わさないんだ。」
 コードネームではない本名だから、彼は隠してくれているらしい。確かに、墓標を見られているから、ファミリーネームまでバレている。もし、それで調べられたら、いろいろとボロが出る。空気の読めない変人だが、そういうところは考えているのがおかしい。
「うん、そうだよな。・・・エアチケットありがとう。」
「とんでもない。私の都合に合わせてもらったことのほうが、感謝だ。・・・・会いたかった、ニール・・・・」
「・・うん・・・」
 せっかくの気晴らしをふいにしなくてよかったのは、俺も嬉しかった。ようやく、ぐっすりと眠れる。この匂いと声で、俺は安眠できるように、彼に仕込まれてしまった。ぎゅっと抱き締められるだけで、頭がぼんやりする。
「ホテルへ案内する。」
「・・うん・・・」
「いつものようにはいかないが、極力、きみの傍にいられるように努力する。」
「・・ああ・・・」
「タイトなスケジュールではないから、どうにかなるだろう。」
「あんたんとこ、掃除も何も出来なかった。」
「そんなことは、どうでもいい。きみが、来てくれただけで、私は幸せだよ、姫。」
 さて、行こうと抱擁をといて、手を握られた。いい年をした野郎がすることじゃないと思ったが、人気がないから、そのままタクシー乗り場へ向かった。
作品名:ぐらにる 流れ 遠征1 作家名:篠義