こらぼでほすと 休暇4
がっつり掴んで、ぷちぷちと枝豆を口に投げ入れる。程よい塩加減で、夏らしいおつまみだ。つられて、ティエリアも手を出した。
「ティエリア、たくさん食べるなよ? それ、消化に悪いからな。」
「わかっている。」
気分だけ飲み会に参加ということで、ティエリアの前にはサイダーが置かれている。これと、枝豆で気分的には晩酌だろ? と、ニールが用意したものだ。もちろん、ニールもウーロン茶だ。
「悟空、ごはんもあるからな。ビールでよかったか? 」
ぱくぱくと枝豆消化中の悟空の前には冷えた缶ビールがある。うんうん、と、頷いて、とりあえず食べるほうに専念していたが、あっっと思い出して、自分のリュックサックから箱を取り出した。空港で買った土産だ。
「ホンモノは無理だったから、クッキーにした。」
パンダの絵柄が入ったお土産の箱を、親猫に渡す。なんかないかなーと思っていたら、ちょうど目に入ったものだ。
「ありがとうな、俺、この間、ティエリアとホンモノも見てきたぞ。」
「動物園行ったんだ。」
「ああ、でも、凶暴じゃなかったけどな。可愛かったよ。なあ、ティエリア? 」
「動かないので、可愛いかどうかは不明だ、ニール。凶暴ではなかった。」
「飼われてるからなーメシの心配とかねぇーから、のんびりしてんだよ。」
かなりの枝豆を消費して、缶ビールを一気にごくごく飲んで、悟空は、ふひーと満ち足りた声を出す。すっかり和食に慣れているので、中華ばかりはわびしい気分だった。悟空は、まだ、三蔵の上司たちのところへ遊びに行っていたから、精進料理ではなかったが、さすがに、あっちに洋食なんてものはない。
「おい。」
「ああ、すいません。」
空になっているグラスを持ち上げて坊主か、おかわりの催促をする。はいはい、と、女房のほうは、台所へグラスを手にして走っている。
「ティエリア、月曜日に帰るんだって? 」
本山へ出向いていた二人にも、そういう時事連絡は入っていた。プールのことも了承済みだ。
「ミッションも終わったし、それから一週間、休暇も取った。」
「ゆっくりしたのか? 」
「ああ。動物園と水族館へ行った。それと、近所のスーパーや本屋もだ。」
「そりゃよかったな。」
「途中で、俺が熱中症でダウンしたんで、いろいろと手伝いもしてくれたんだぞ、悟空。」
焼酎のソーダ割りを準備して戻って来たニールが、口を挟む。今回は、いろいろと手伝いもしてくれて助かったんだ、と、亭主に、それを渡しつつ微笑む。
「そういや、虎さんたちがバカンスで休みなんですよ。」
「関係ないな。」
「ま、あんたには関係ないですね。俺、月曜からヘルプには入ります。」
「いいのか? 」
「適当にサボりながらなら、いいそうです。」
「俺の世話がおざなりにならない程度にしろ。」
「わかってますよ。それから、夏休みの間は、レイも居候するんで、そのつもりでいてください。レイも、俺の世話やら家事やら、がんばってくれてるんです。」
「こき使って楽すりゃいいじゃねーか。」
「何言ってんだか・・・あんた、俺の料理がいいんでしょ? レイに任せたら不機嫌になるくせに。」
「料理はおまえがしろ。他は、レイにやらせとけ。」
「あははは・・・宅急便が届いたら手伝ってもらうことになると思いますけどね。」
大量に送りつけた衣類が戻れば、それの洗濯がある。ある程度は、向こうでも洗濯しているらしいが、適当なのだろうから、もう一度洗い直しておこうと、ニールは考えている。
「ママ、荷物の中に八戒の土産もあるんだ。」
「うん、気をつけて開ける。できれば、悟空が開けてくれたほうがいいな。」
「了解。はぁーーーだし巻きうめぇー。やっぱ、これ好きだ。」
「そうかそうか。足りなかったら、焼くからな。三蔵さん、マヨネーズは? 」
はい、ここにありますよ、と、手渡す。なんでもかんでも、マヨネーズをつけたがる輩は、マヨラーと呼ばれている。一種の味覚おかしい人だが、女房のほうは気にしない。人間いろいろといるのはわかっているからだ。
「ニール、おかわり。」
「おお、ティエリアもか? 次も、ソーダーでいいのか? 」
「次は、ウーロン茶にしてほしい。これは腹が膨れる。」
「あいよ。」
「あ、ママ。俺、もうメシ食いたいっっ。山盛りでっっ。」
「はいはい。」
この騒がしさが寺だなあ、と、ニールもほっとしている。なんだかんだで、どっちも一緒の生活に馴染んでいるらしい。
作品名:こらぼでほすと 休暇4 作家名:篠義