ぐらにる 流れ 遠征2
ホテルは、一流で、ついでに、ジュニアスイートだった。いくら、軍人で給料がいいからと言っても、これは、かなりの出費に違いない。
「なあ、グラハム。ここの支払いさ、折半にしようぜ? 」
「何をバカなことを・・・・私が、この程度で窮すると、きみは思っているのかね? 」
「でもさ、これは高いだろ? 」
「そんな心配はしなくてもいい。・・・・姫、それよりも、きみを確かめさせて欲しい。」
すっかりと朝陽は昇っている。会議があると言っていたが、時間は大丈夫なのか、と、心配したが、抱き締められると、気が抜けてしまう。こちらも、ほとんど徹夜で移動しているので、どっと疲れてきた。
「・・・あのさ・・・」
キスの合間に、声をかけた。
「なんだい? ニール。」
「仕事は? あんた、会議なんだろ? 」
「ああ、今日の私は体調不良だ。」
「はあ? 」
「午前中の会議は、私が出席しなくても、なんの影響もないものだ。だから、きみと午後まで、ここで過ごす。」
またか? また、それか? と、俺は慌てて、抱擁から逃げ出した。本部での会議をすっぽかすなんてのは、こいつにとってもマズイはずだからだ。
「姫? シャワーか? 」
「違う。サボりはマズイだろ? ちゃっちゃっと仕事をこなしてこいっっ。」
「また、そのような無茶を・・・・きみの顔を見て、その身体を抱き締めて、ここまでしてしまったら、我慢など利かない。まずは、きみを存分に味合わねば、仕事に支障を来たすというものだ。・・・・さあ、私にきみを食べさせてくれないか? 私は我慢弱い男なんだ。」
「けどっっ、あんたさっっ。」
「お願いだ、ニール。今日だけは、許してくれ。」
真剣に懇願する瞳を向けられると、反論できなくなる。うっと詰まったら、そのままベッドに押し倒された。
「おいっっ、ちょっ待てっっ。」
「待たない。」
「いや、ほら、シャワー浴びさせてくれよ。」
「ダメだ。それは、後でいい。」
「後じゃ意味ねぇーだろっっ。このバカわんこっっ。ハウスっっ。」
「ふはははは・・・・きみぐらいだ。私を犬呼ばわりするのは。・・・だが、そういうことなら、私は犬でいい。犬だから、人間の言葉は理解できない。」
動きを封じて、衣服を剥ぎ取っていくグラハムは、飢えた目で睨んでいる。犬というよりも大きな虎の相手をしている気分だ。こうなっては、抑えも何もないのは、いつものことだ。暴発させないように、背後のホルスターから銃を引き抜いて、サイドテーブルへ放り投げて全身の力は抜いた。すると、彼は嬉しそうに、俺の衣服を剥ぎ取って、味見を開始した。べろりと、俺の首筋を舐めて、噛みつく真似までした。
「・・・痛いっっ・・・」
「当たり前だ。きみを食らい尽くしているのだからな。・・・ニール、逢いたかった。きみの匂いは、どんな豪華な食事よりもおいしい匂いだ。」
身体をひっくり返されて、うなじにもマウンティングするように噛み付く。理性が吹き飛んでいるような有様で、さすがに怖くなる。ここで、死んだら楽でいいが、そういうわけにはいかない。ずるずると逃げようと体勢を変えたが、構わず、その熱い流れに呑み込まれていく。背後から唇に触ってきた手に、思い切り噛み付いたら、また、うなじに噛み付かれる。
「きみも、飢えているんだね? ニール。よかろう、存分に私を味わうといい。」
背後から攻めてくる彼は、不敵に言い放つと、容赦なく俺の身体の敏感なところへと手を触れさせる。どちらも、おかしくなるくらいに興奮して、理性を手放した。
「ああ、すまない。・・・いや、大したことはないんだが・・・ああ・・・それじゃあ。」
電話の声で、意識が戻った。目を開くと、ベッドから少し離れた場所で、彼は携帯端末に話しかけている。窓の外の空は、すっかりと茜色に染まっている。
・・・・何時間やってたんだ? ・・・・
途中から、理性を手放してしまったので、時間経過すら、よくわからない。確実に、十時間は経っているだろう。
「起こしてしまったか? 」
「・・・午後からの仕事も、ふいにしやがったな? 」
彼は、すでにシャワーを浴びたらしい。洗い髪から水が滴っている状態で、バスタオルを腰に巻いた状態だ。
「今更、それを言われても・・・・きみが、あまりにおいしくて時間を忘れてしまった。これは、共同責任というものだと思うのだが? 」
「もちろん、それは認めるけどさ。あんたは、仕事なんだろ? サボっていいもんじゃない。」
「きみは、真面目だね? ニール。・・・・いや、私が堕落したということかな。きみという伴侶を得て、仕事以外の大切なものを知ったということか・・・」
彼の台詞に、頬が紅潮するのがわかるほど温度が上がった。「伴侶」なんてものになったつもりはない。いつか、殺し合う相手だ。それも直接的に、死に至らしめることになる。それなのに、その台詞が嬉しいと感じている俺がいる。
「あんたの仕事も俺の仕事も、サボれるもんじゃないはずだぞ? 」
だが、口から出て来る言葉は、正反対のものだ。彼が降格して、空で満足に戦えないなんてのは、彼にとっては生き甲斐を失くすような行為だからだ。
「きみだけは特別だ。日頃は勤勉に暮らしている。そんなことより、腹は空かないか? 姫。」
「・・うん・・・減ったな・・・けど・・」
さすがに、十時間もいろいろといたしていると、身体の動きは鈍いというか、腰から下の感覚が分からない状態に陥っている。
「ルームサービスを用意しよう。風呂までのエスコートは、私が。」
すでに、湯を溜めてくれていたらしい。そこまで運んでもらって、浴槽に下ろされた。たぶん、寝ている間に事後処理はしてくれたらしく、腹を下している様子はない。温かい湯船で融けていると、しばらくして、グラハムは戻ってきて、俺の身体を洗ってくれた。
「髪も洗うから、目を閉じていてくれ。」
「そこまではいい。自分でやる。」
「遠路遥々遠征してくれたきみには、私が心を込めて奉仕するべきだろ? さあ、姫、目を閉じてくれたまえ?」
いつもは、世話をする側だから、どうも調子が狂う。目を閉じると、お湯がかけられて、髪の毛が洗われていく。他人に髪を洗ってもらうのは、気持ちの良いもので、俺は、幸せな気分になった。たまに、掠めるようなキスをされ、最後に濃厚なキスが降ってきた。
「おいっっ。」
ここで雪崩れ込まれたら、逆上せてしまうと唇を離して抗議した。しかし、相手はやめるつもりはないらしい。ざぶりと湯船に身体を沈めて背後から抱き締めてくる。
「きみの肌は心地良いんだ。・・・どうしてだろう? 何度、肌を重ねても満足することがない。」
「・・あ・・・ちょっ・・・やめ・・・」
「私は体調不良なので、外を案内できないのが口惜しい。きみを独占していることを自慢したいのに・・・・なんとも理不尽だ。きみの中は温かくて気持ちいい。これすら、誰にも教えられない。」
緩々と腰を使われて、彼の囁きを耳にしながら、そんなこと、誰にも自慢すんな、と言いたいのに、声にならない。湯の中で浮力に助けられて、背後から抱えられる。気晴らしの間、いつも、どうも理性が働かない。だから、それに身を委ねて、この快感を追うことに集中してしまう。
「なあ、グラハム。ここの支払いさ、折半にしようぜ? 」
「何をバカなことを・・・・私が、この程度で窮すると、きみは思っているのかね? 」
「でもさ、これは高いだろ? 」
「そんな心配はしなくてもいい。・・・・姫、それよりも、きみを確かめさせて欲しい。」
すっかりと朝陽は昇っている。会議があると言っていたが、時間は大丈夫なのか、と、心配したが、抱き締められると、気が抜けてしまう。こちらも、ほとんど徹夜で移動しているので、どっと疲れてきた。
「・・・あのさ・・・」
キスの合間に、声をかけた。
「なんだい? ニール。」
「仕事は? あんた、会議なんだろ? 」
「ああ、今日の私は体調不良だ。」
「はあ? 」
「午前中の会議は、私が出席しなくても、なんの影響もないものだ。だから、きみと午後まで、ここで過ごす。」
またか? また、それか? と、俺は慌てて、抱擁から逃げ出した。本部での会議をすっぽかすなんてのは、こいつにとってもマズイはずだからだ。
「姫? シャワーか? 」
「違う。サボりはマズイだろ? ちゃっちゃっと仕事をこなしてこいっっ。」
「また、そのような無茶を・・・・きみの顔を見て、その身体を抱き締めて、ここまでしてしまったら、我慢など利かない。まずは、きみを存分に味合わねば、仕事に支障を来たすというものだ。・・・・さあ、私にきみを食べさせてくれないか? 私は我慢弱い男なんだ。」
「けどっっ、あんたさっっ。」
「お願いだ、ニール。今日だけは、許してくれ。」
真剣に懇願する瞳を向けられると、反論できなくなる。うっと詰まったら、そのままベッドに押し倒された。
「おいっっ、ちょっ待てっっ。」
「待たない。」
「いや、ほら、シャワー浴びさせてくれよ。」
「ダメだ。それは、後でいい。」
「後じゃ意味ねぇーだろっっ。このバカわんこっっ。ハウスっっ。」
「ふはははは・・・・きみぐらいだ。私を犬呼ばわりするのは。・・・だが、そういうことなら、私は犬でいい。犬だから、人間の言葉は理解できない。」
動きを封じて、衣服を剥ぎ取っていくグラハムは、飢えた目で睨んでいる。犬というよりも大きな虎の相手をしている気分だ。こうなっては、抑えも何もないのは、いつものことだ。暴発させないように、背後のホルスターから銃を引き抜いて、サイドテーブルへ放り投げて全身の力は抜いた。すると、彼は嬉しそうに、俺の衣服を剥ぎ取って、味見を開始した。べろりと、俺の首筋を舐めて、噛みつく真似までした。
「・・・痛いっっ・・・」
「当たり前だ。きみを食らい尽くしているのだからな。・・・ニール、逢いたかった。きみの匂いは、どんな豪華な食事よりもおいしい匂いだ。」
身体をひっくり返されて、うなじにもマウンティングするように噛み付く。理性が吹き飛んでいるような有様で、さすがに怖くなる。ここで、死んだら楽でいいが、そういうわけにはいかない。ずるずると逃げようと体勢を変えたが、構わず、その熱い流れに呑み込まれていく。背後から唇に触ってきた手に、思い切り噛み付いたら、また、うなじに噛み付かれる。
「きみも、飢えているんだね? ニール。よかろう、存分に私を味わうといい。」
背後から攻めてくる彼は、不敵に言い放つと、容赦なく俺の身体の敏感なところへと手を触れさせる。どちらも、おかしくなるくらいに興奮して、理性を手放した。
「ああ、すまない。・・・いや、大したことはないんだが・・・ああ・・・それじゃあ。」
電話の声で、意識が戻った。目を開くと、ベッドから少し離れた場所で、彼は携帯端末に話しかけている。窓の外の空は、すっかりと茜色に染まっている。
・・・・何時間やってたんだ? ・・・・
途中から、理性を手放してしまったので、時間経過すら、よくわからない。確実に、十時間は経っているだろう。
「起こしてしまったか? 」
「・・・午後からの仕事も、ふいにしやがったな? 」
彼は、すでにシャワーを浴びたらしい。洗い髪から水が滴っている状態で、バスタオルを腰に巻いた状態だ。
「今更、それを言われても・・・・きみが、あまりにおいしくて時間を忘れてしまった。これは、共同責任というものだと思うのだが? 」
「もちろん、それは認めるけどさ。あんたは、仕事なんだろ? サボっていいもんじゃない。」
「きみは、真面目だね? ニール。・・・・いや、私が堕落したということかな。きみという伴侶を得て、仕事以外の大切なものを知ったということか・・・」
彼の台詞に、頬が紅潮するのがわかるほど温度が上がった。「伴侶」なんてものになったつもりはない。いつか、殺し合う相手だ。それも直接的に、死に至らしめることになる。それなのに、その台詞が嬉しいと感じている俺がいる。
「あんたの仕事も俺の仕事も、サボれるもんじゃないはずだぞ? 」
だが、口から出て来る言葉は、正反対のものだ。彼が降格して、空で満足に戦えないなんてのは、彼にとっては生き甲斐を失くすような行為だからだ。
「きみだけは特別だ。日頃は勤勉に暮らしている。そんなことより、腹は空かないか? 姫。」
「・・うん・・・減ったな・・・けど・・」
さすがに、十時間もいろいろといたしていると、身体の動きは鈍いというか、腰から下の感覚が分からない状態に陥っている。
「ルームサービスを用意しよう。風呂までのエスコートは、私が。」
すでに、湯を溜めてくれていたらしい。そこまで運んでもらって、浴槽に下ろされた。たぶん、寝ている間に事後処理はしてくれたらしく、腹を下している様子はない。温かい湯船で融けていると、しばらくして、グラハムは戻ってきて、俺の身体を洗ってくれた。
「髪も洗うから、目を閉じていてくれ。」
「そこまではいい。自分でやる。」
「遠路遥々遠征してくれたきみには、私が心を込めて奉仕するべきだろ? さあ、姫、目を閉じてくれたまえ?」
いつもは、世話をする側だから、どうも調子が狂う。目を閉じると、お湯がかけられて、髪の毛が洗われていく。他人に髪を洗ってもらうのは、気持ちの良いもので、俺は、幸せな気分になった。たまに、掠めるようなキスをされ、最後に濃厚なキスが降ってきた。
「おいっっ。」
ここで雪崩れ込まれたら、逆上せてしまうと唇を離して抗議した。しかし、相手はやめるつもりはないらしい。ざぶりと湯船に身体を沈めて背後から抱き締めてくる。
「きみの肌は心地良いんだ。・・・どうしてだろう? 何度、肌を重ねても満足することがない。」
「・・あ・・・ちょっ・・・やめ・・・」
「私は体調不良なので、外を案内できないのが口惜しい。きみを独占していることを自慢したいのに・・・・なんとも理不尽だ。きみの中は温かくて気持ちいい。これすら、誰にも教えられない。」
緩々と腰を使われて、彼の囁きを耳にしながら、そんなこと、誰にも自慢すんな、と言いたいのに、声にならない。湯の中で浮力に助けられて、背後から抱えられる。気晴らしの間、いつも、どうも理性が働かない。だから、それに身を委ねて、この快感を追うことに集中してしまう。
作品名:ぐらにる 流れ 遠征2 作家名:篠義