綴じ代(とじしろ)の奥
麦の穂をかまで刈ったように、また、心臓に致命傷をうけた子羊のように、アンドレイはがっくりと首を落とし、ひとことも口にしないまま、草の上に倒れた。じぶんの子どもを殺してしまった、あわれな父親は、ぼうぜんと立っていた。そして、長いあいだ、息のたえた死体を見つめていた。アンドレイは、死体になっても美しかった。いかにも男らしい顔に、魅力のある美しさが消えないでいた。青ざめた死に顔に、黒いまゆ毛がくっきりと、あざやかにみえた。
(N.ゴーゴリ 『隊長ブーリバ』より)
(N.ゴーゴリ 『隊長ブーリバ』より)
作品名:綴じ代(とじしろ)の奥 作家名:アレクセイ