心、体
平均かどうかと聞かれれば、平均以下だと思うんだよね。
もう習慣となった週末の帝人くんの訪問。週末に彼はここにやってきて、俺の事務所兼住まいであるマンションに泊まっていく。平日の訪問ももちろんないことはないのだが、その場合彼が泊まっていくことはほとんどない。
俺は彼がいる間、何をするのかといえば、彼と一緒に時間を過ごすこともあれば、仕事が立て込んでいる時はそちらを優先せざるを得ないので、彼が泊まろうとそうでなかろうと、結局平日に訪問される時とあまり変わらない。彼も彼でそれを承知の上で来ているわけで、持ち込んだ課題を黙々とこなしたり、休憩のときのお茶の用意をしたり、その日の彼の状況によって彼の行動も変わってくる。
つまりまぁ、二人でしかできないこと、というのは、別にないのだけど、彼は毎週、週末になると俺のマンションへとやってくる。
それに対して意味があるかないかと問われれば、第三者から見れば間違いなく無意味であることは断言しよう。
ちなみに俺は帝人くんの訪問はもちろん喜ばしいし、珍しく俺が抱いている、特別という感情に終りをみせない彼は、俺個人からしても、俺の趣味の範疇からしてもとても興味深い。なんにせよ、彼はおもしろい、とても人間然とした人間だ。彼はそれを時々嫌がっているようだけど、彼が愛する非日常は、彼自身が日常を具現したことで起きる具象で、彼もきっとそれをわかっているので、そこまで自分のことを嫌いではないのだろうな、と思う。いや、むしろ自分の事がかわいいというタイプの人間だ。
話はそれたが、ふと俺が思ったことを口にしてみた時の彼といったら。俺はずっとパソコンに向かっていて、しばらく放置をしていた彼は何をしているのかと顔をあげてみた時だ。「ねぇ帝人くん、何もしないのに俺のところに来て楽しいの?」と、ぼーっと本当に何もせず、ソファに深くかけて遠くを見ている彼にそう聞いた気がする。「…邪魔なら帰りますが、…貴方の所にいるのに、楽しいとか、そういうの、…」と、急に声をかけられたからか、まとまらない返事だった。が、その後がいけない。「…ここにいるの、あたりまえ、にしたら、駄目ですか…。」むすっと、赤くなっていく顔を隠すように膝を抱えてしまった彼は、なんというかあれだ。うん、かわいかった。さらにその後の、「図々しいのは、わかってるんです、でも…、」と聞こえるか聞こえないくらいの声で、膝を抱えながら呟く存在の愛しさったら。
もちろんその場で、おいしく甘く長く、解かすようにいただいた。
とまぁ、主題はそれではない。
とにかく、彼が今ここにいるのは”あたりまえ”で、俺も彼もそれを喜ばしいと思っている。日常の一部としている。愛しいと思える日常の、なんて尊いことか、彼がいなかったらわからなかったね。
そして彼がいつものように、コーヒーを淹れてくれているのが今現在だ。これは波江さんが居れば波江さんがやってくれたり、波江がしなければ俺が彼にコーヒーを落としたり、俺の手がふさがっていれば帝人くんがやってくれたり。決まった人間が行うことではないのだが、そういえば彼がコーヒーを入れる姿を見たことがないな、と今思い至った。
何せ帝人くんは遠慮があるのかないのか、俺がキッチンに立てば近づかないし、俺ができない状況ならば自ら率先してキッチンへと向かっていく。そんな彼に自然と倣ってか、俺も帝人くんがキッチンにいる時はなぜか(そう、今気付いたのだがなぜか、だ)、彼に近づこうとはしていなかった。
仕事に没頭していて、ふと顔をあげたら帝人くんが居なくて、ちょっとうずうずしたので彼をさがして、その時彼がコーヒーを丁寧に落としてじーっとしていた。そんな偶然が重なって、俺はまじまじと帝人くんの背中を見ていた。
ちょっとうつむき加減の、Tシャツ一枚にジーンズという出で立ちの彼というのは、なかなかないアングルだ。強いて言えば初めてかもしれない。
というか多分初めてだ。だって見たことあるならきっと、その時も、いや絶対にうずいていたはずだ。今俺の中にむくむくと増幅していっている、このいいようのない願望みたいなものが。
この子、卑怯だなぁ。
気配を消してそっと近づく。じっと湯を落とす彼は気付かない。
そして背後に立って、彼が薬缶を置いたのを見届けて。
「ひぁっ?!」
腰にするりと手を伸ばした。脇が弱い帝人くんは、予想通り声を上げる。慌ててこっちを見上げてくるその顔、かわいいな。
「え、なに?臨也さんなんですかっ、」
両手を腰にまわして、彼の腹の前で手を組む。うん、ちょうどいい。
混乱して、引きはがそうという訳でもないのだろうけど、俺の手の甲に手を置く帝人くんも尚いい。うん、今俺気分がいい。
「、どうしたんです、珍しい、」
「んー?」
彼の項から少し横あたりに顔を押しあてて返事をする。頭をぽん、と触ってくれるあたり、帝人くんは俺のことをよくわかっている。ずるい、ずるい。
「いーなーこれ、と思って。」
「はぁ…、」
うん、いいなこれ。
「ちゃんと食べてるー?」
「っ、」
前に組んでいた手をほどいて、彼の骨盤とその上あたりに手をかけてするりと触る。頼りない肉付きに、いろいろがたまらない。
普段の制服姿でも、私服でも、服を着ていてもわかるくらい、帝人くんは細い。服を着てなければ尚のことわかりやすく。でも今日みたいに室内で薄着の彼を、後ろからじっくり見る、なんて機会がなかったから今まで気付かなかった。この後ろ姿は駄目でしょう。
きちんと男の子のくせに、正直女の子のそれより儚げで、薄い分折れちゃいそう。この年頃だからか、帝人くんだからか、危うげな感じがとにかくやばい、まずい。
ひじょうにおいしそうだとおもってしまった。
もう習慣となった週末の帝人くんの訪問。週末に彼はここにやってきて、俺の事務所兼住まいであるマンションに泊まっていく。平日の訪問ももちろんないことはないのだが、その場合彼が泊まっていくことはほとんどない。
俺は彼がいる間、何をするのかといえば、彼と一緒に時間を過ごすこともあれば、仕事が立て込んでいる時はそちらを優先せざるを得ないので、彼が泊まろうとそうでなかろうと、結局平日に訪問される時とあまり変わらない。彼も彼でそれを承知の上で来ているわけで、持ち込んだ課題を黙々とこなしたり、休憩のときのお茶の用意をしたり、その日の彼の状況によって彼の行動も変わってくる。
つまりまぁ、二人でしかできないこと、というのは、別にないのだけど、彼は毎週、週末になると俺のマンションへとやってくる。
それに対して意味があるかないかと問われれば、第三者から見れば間違いなく無意味であることは断言しよう。
ちなみに俺は帝人くんの訪問はもちろん喜ばしいし、珍しく俺が抱いている、特別という感情に終りをみせない彼は、俺個人からしても、俺の趣味の範疇からしてもとても興味深い。なんにせよ、彼はおもしろい、とても人間然とした人間だ。彼はそれを時々嫌がっているようだけど、彼が愛する非日常は、彼自身が日常を具現したことで起きる具象で、彼もきっとそれをわかっているので、そこまで自分のことを嫌いではないのだろうな、と思う。いや、むしろ自分の事がかわいいというタイプの人間だ。
話はそれたが、ふと俺が思ったことを口にしてみた時の彼といったら。俺はずっとパソコンに向かっていて、しばらく放置をしていた彼は何をしているのかと顔をあげてみた時だ。「ねぇ帝人くん、何もしないのに俺のところに来て楽しいの?」と、ぼーっと本当に何もせず、ソファに深くかけて遠くを見ている彼にそう聞いた気がする。「…邪魔なら帰りますが、…貴方の所にいるのに、楽しいとか、そういうの、…」と、急に声をかけられたからか、まとまらない返事だった。が、その後がいけない。「…ここにいるの、あたりまえ、にしたら、駄目ですか…。」むすっと、赤くなっていく顔を隠すように膝を抱えてしまった彼は、なんというかあれだ。うん、かわいかった。さらにその後の、「図々しいのは、わかってるんです、でも…、」と聞こえるか聞こえないくらいの声で、膝を抱えながら呟く存在の愛しさったら。
もちろんその場で、おいしく甘く長く、解かすようにいただいた。
とまぁ、主題はそれではない。
とにかく、彼が今ここにいるのは”あたりまえ”で、俺も彼もそれを喜ばしいと思っている。日常の一部としている。愛しいと思える日常の、なんて尊いことか、彼がいなかったらわからなかったね。
そして彼がいつものように、コーヒーを淹れてくれているのが今現在だ。これは波江さんが居れば波江さんがやってくれたり、波江がしなければ俺が彼にコーヒーを落としたり、俺の手がふさがっていれば帝人くんがやってくれたり。決まった人間が行うことではないのだが、そういえば彼がコーヒーを入れる姿を見たことがないな、と今思い至った。
何せ帝人くんは遠慮があるのかないのか、俺がキッチンに立てば近づかないし、俺ができない状況ならば自ら率先してキッチンへと向かっていく。そんな彼に自然と倣ってか、俺も帝人くんがキッチンにいる時はなぜか(そう、今気付いたのだがなぜか、だ)、彼に近づこうとはしていなかった。
仕事に没頭していて、ふと顔をあげたら帝人くんが居なくて、ちょっとうずうずしたので彼をさがして、その時彼がコーヒーを丁寧に落としてじーっとしていた。そんな偶然が重なって、俺はまじまじと帝人くんの背中を見ていた。
ちょっとうつむき加減の、Tシャツ一枚にジーンズという出で立ちの彼というのは、なかなかないアングルだ。強いて言えば初めてかもしれない。
というか多分初めてだ。だって見たことあるならきっと、その時も、いや絶対にうずいていたはずだ。今俺の中にむくむくと増幅していっている、このいいようのない願望みたいなものが。
この子、卑怯だなぁ。
気配を消してそっと近づく。じっと湯を落とす彼は気付かない。
そして背後に立って、彼が薬缶を置いたのを見届けて。
「ひぁっ?!」
腰にするりと手を伸ばした。脇が弱い帝人くんは、予想通り声を上げる。慌ててこっちを見上げてくるその顔、かわいいな。
「え、なに?臨也さんなんですかっ、」
両手を腰にまわして、彼の腹の前で手を組む。うん、ちょうどいい。
混乱して、引きはがそうという訳でもないのだろうけど、俺の手の甲に手を置く帝人くんも尚いい。うん、今俺気分がいい。
「、どうしたんです、珍しい、」
「んー?」
彼の項から少し横あたりに顔を押しあてて返事をする。頭をぽん、と触ってくれるあたり、帝人くんは俺のことをよくわかっている。ずるい、ずるい。
「いーなーこれ、と思って。」
「はぁ…、」
うん、いいなこれ。
「ちゃんと食べてるー?」
「っ、」
前に組んでいた手をほどいて、彼の骨盤とその上あたりに手をかけてするりと触る。頼りない肉付きに、いろいろがたまらない。
普段の制服姿でも、私服でも、服を着ていてもわかるくらい、帝人くんは細い。服を着てなければ尚のことわかりやすく。でも今日みたいに室内で薄着の彼を、後ろからじっくり見る、なんて機会がなかったから今まで気付かなかった。この後ろ姿は駄目でしょう。
きちんと男の子のくせに、正直女の子のそれより儚げで、薄い分折れちゃいそう。この年頃だからか、帝人くんだからか、危うげな感じがとにかくやばい、まずい。
ひじょうにおいしそうだとおもってしまった。