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ぐらにる 流れ 遠征3

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翌日から、私は本来の会議と研修に勤しんだ。そうしないと、姫は帰ると脅したからだ。いつもなら、友人たちに協力させて、帰宅を早くしてもらるのだが、本部では、私の力など微々たるものだ。大人しく過ごすほかはない。模擬戦や必要な研修と会議には、きちんと対応したが、レセプションや懇親会などは、サボタージュした。それでも帰れるのは、夜という時間だ。
「おかえり。」
 姫はリビングで待っていて、出迎えてくれる。退屈ではないのか、と、尋ねると、「全然。」 と、笑う。甲斐甲斐しく私の制服を脱がせて、クローゼットに仕舞ってくれる。
「あんたを送り出したら二度寝して、午後から、ちょっと街をぶらぶらしてる。なかなか景色のいい街だから歩くには、いいところだ。」
「・・・全部放り投げて、きみと街を散策したい・・・」
「無茶言いなさんな。あんたは仕事だ。・・・食事は済ませたのか? 」
「いや、まだだ。何か頼むとするか。何がいい? 」
「俺は、なんでもいいよ。」
 そう、姫は言って、内線の受話器に手をかけている。つまり、姫は、食事を待っていてくれたということだ。予定は伝えてあるが、その通りとはいかない。今夜だって、予定なら二時間前に帰っているはずだった。
「・・・姫の盛り合わせというものがあるなら堪能したいものだ・・・」
「どこのエロ親父だよ? その台詞。・・・それは後で食わせてやるから、胃に吸収されるものを言ってくれ。」
「では、姫のミルクを。」
「・・・・だからさ、俺も食えるもんにしろっっ。」
 もう聞かない、と、姫は、プンプンと怒って、ルームサービスを勝手に頼んでいる。それを眺めつつ、姫が読んでいた雑誌に目を落とした。どこにでもあるインテリアの雑誌だ。それとは別に、アパレル関係のものやペットのものもある。時間を潰す用途だから、なんでもいいらしい。絶対に仕事に繋がるものは持ち込まない。何かしらの推測ができそうなものは皆無だ。その徹底ぶりは、私でも感心するほどだ。
「時間かかるだろうから、先にシャワー浴びれば、どうだ? グラハム。」
「きみは? 」
「浴びた。二時間ほど前にな。」
 そう言われてしまうと、仕方がない。さっさと浴びて、食事と会話を楽しむことにした。

「明日、模範実技で、グラハムスペシャルを披露するんだが、見に来ないか? 」
 軽い食事をしつつ、明日の予定を話す。オーバーフラッグスでも、私にしかできない技巧なので、できれば姫にも鑑賞して欲しいとねだった。
「・・・・だからさ、どの面さげて、基地へ行けるんだよ? そんな高等な技術なら、外からは見えないところでやるだろ? 」
「そうでもないさ。私の親友の知り合いということで登録すれば問題はない。一度、きみに私の雄姿を拝ませたい。」
 私が飛ぶところなど、姫は見たことがないはずだ。だが、くすっと笑って、姫はフォークで私を指し示した。
「見たぜ? あんたが、とんでもないことしてるところは、何度か拝んでる。グラハムスペシャルってーのは、飛行形態からの換装を飛行しながらやるヤツだろ? よく失速しないな、と、感心した。」
「姫? 」
「・・・あのな、あんたの技なんてものは、情報としては流出しているんだ。だから、俺は、見たことがある。・・・・あんなことして、よく耐Gで潰れないな? 」
「あれぐらいは、どうということはないさ。だが、何度か肺はやっている。・・・・なるほど、私の技というのは研究対象になっているんだな。」
「そりゃなるだろう。ユニオンのエースパイロット様なんだからさ。・・・そんなことはいいんだ。俺が、ここに居る時は、そういうことと向き合いたくない。ただのグラハムと居るほうがいい。」
 だから、見に行かない、と、睨まれた。最初の出会いからして、どちらも正体なんか明かしたわけではない。ただのニールに恋をしたのは私だし、ただのグラハムを想ってくれたのがニールだ。
「確かに、私は、きみに雄姿なんて見せる必要はないな。」
「そうだよ。あんたは、俺の安眠抱き枕でいいんだ。・・・・明日、時間までは、ここにいるが、間に合わなかったら、そのままだ。」
 明日の深夜便で、姫は帰る。それまでに戻れなければ、逢うことはできない。次は、いつかなんて、どちらにもわからない。それが、この逢瀬の決まりごとだ。いつもなら、姫は、ひとりで私の宿舎で過ごして帰ったはずだった。強引に、ここまで遠征してもらったから、逢えただけだ。
「また、私は、きみのいない夜を過ごすことになるんだな。」
「俺も、そうだから、寂しいなんて言うなよ? ・・・・とりあえず、今夜は盛大にサービスしてやるからな。」
「くくくくく・・・・サービスなら、私がしてさしあげよう。明日、きみが真夜中まで、ここから出られないように、搾り取る。」
「あんたが寝坊したら見ものだぞ? 明日は、晴れ舞台なんだから、そこまでしなくてもいい。・・・・ただ・・・・」
「ただ? 」
「体温だけ感じさせてくれ。」
「姫の望むままに。」
 毎夜のように、抱き合って眠っていた。そうすると、姫は、甘えるように摺り寄って眠る。こんな可愛い仕草をされて、私が我慢できるはずもなく、毎晩、姫を貪っていた。今夜も、そうなるだろう。





 翌朝、ベッドの軽い揺れで目は覚めた。見送りぐらいはしてやろうと目を開けたら、面前には彼の顔があった。
「・・あ? ・・・」
「麗しい姫君の寝顔を堪能させていただいた。・・・おはよう、ニール。きみは、朝から壮絶に色気がある。」
「・・・うるせぇー・・・あんただけだ。俺に、そんなこと言うのは・・・時間は? 」
「大丈夫だ。そろそろ出かけるが、きみは眠っていなさい。今夜、きみにキスをするために、私は戻って来る。」
「期待しないで待ってるよ。」
 彼は、とても楽しそうに微笑んで、軽いキスをすると起き上がった。予定は教えてもらったが、どう考えても戻って来れる道理はない。模範演技の後、彼は、それについての講義をすることになっていて、さらに、その講義の懇親会というものがセッティングされていた。主役の彼が、途中退出できるわけがない。だから、一眠りしたら移動するつもりだった。
 この三日、彼は、必死にホテルへ戻って来た。どんなに遅くとも、その日のうちに戻っていたが、あれも相当、無理していたはずだ。ぐっすりと、俺は、ここで眠って、普段の睡眠不足は解消した。柔らかく触れ合うことで、気持ちも穏やかなものになった。
 また、しばらくは、この気晴らしのお陰で魘されずに済むだろう。それについては感謝する。
 荷物は、ほとんどない。こちらで買ったものは捨てるつもりだ。元々、着てきた服も、特区へ戻ったら捨てる。発信機をつけられてはたまらないから、毎回、そういうことにしている。
 着ていたものをダストシュートへ放り込んでしまえば、準備は完了だ。
・・・・グラハムスペシャルってーのはさ、あんたに仕掛けられたことがあんだよ。・・・ったく、あれには驚いた。まさか、あんな方法で来られるとはさ。・・・
作品名:ぐらにる 流れ 遠征3 作家名:篠義