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ぐらにる 流れ 遠征3

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 俺自身もやられたし、刹那の記録データにも存在していた。彼の技巧によってのみ完成されているから、他のものはできない。それを、直接、目にしていた人間に、見せたいなどと彼は言う。俺の正体を知らないから、そういう能天気なことを言うのだ。
 それが可愛くもあり、愛しいとも思う。連絡先すら教えない俺に、誠実に接してくれる彼を騙している。だが、これは、お互いのためだ。もし、戦場で遣り合っても、俺は絶対に、声はかけないし、彼を敵として葬るだろう。全部わかっていてやっているから・・・彼を助けるつもりもないから・・・これは、『気晴らし』という名の夢の出来事だから・・・・・現実に戻れば、それを切り捨てる。
「まあ、あんたは刹那を追い駆けるだろうから、俺には出る幕なんてねぇーだろうけどな。」
 刹那の機体に固執する彼は、他の機体なんて見向きもしない。もし、刹那がやばくなれば、後方支援機である俺が射撃で沈めることになる。それだけのことだ。
 夕方という時間に、片づけを終えて、リビングのソファに座り込んだ。深夜便だが国内線だから、早く空港に行くことはない。とはいうものの、ここで未練たらしく待っているつもりもなかった。
 そろそろ出ようと思ったのは、出発の三時間前だ。それまで、だらだらとソファで過ごした。まだ、彼は捕まっているだろう時間だ。このほうが帰りやすい。立ち上がると、カードキーをベッドに置いて部屋を出た。




 軽く食事して、少し街をぶらついて、それから空港へ向かう。国内線から国際線へ乗り継ぐが、一端、外へ出る。そうしないと追跡される可能性がある。油断のならない相手だから、慎重に慎重は重ねている。空港のチェックインカウンターの前に、青い制服の男が立っていた。
・・・・え?・・・・
 つかつかと歩み寄ってきた彼は、破顔して俺に抱きついた。
「きみも、せっかちだ。私は、きみにキスをするために戻ると言ったはずだ。」
「おま、なんで? 」
 懇親会なんてものを過ごしたはずの彼からは、酒の匂いがしなかった。そういう場合は、かなり飲まされる羽目になるはずだ。
「ちゃんと一次会には付き合ってきた。・・・最初から、そのつもりだったから酒も飲んでいない。もし、間に合わなかったらフラッグで見送ろうかと思っていたんだ。」
「・・・・軍の備品をプライベートに使用するなんて、無茶だろ?」
「別に、それほど問題ではないさ。自主的な夜間訓練だと申請すれば通る。」
「民間路線への割り込みは、軍律違反じゃねぇーのか? 」
「くくくく・・・少し境界を越えるぐらい、よくあることだ。」
 この男の勝手さは理解しているつもりだったが、よくもまあ、こんなことをやって、上層部から文句の出ないことだ、と、呆れた。軽い抱擁の後で、チェックインカウンターで、チケットを交換する。
 それが終わると、彼と展望デッキへと進んだ。キスをするというのなら、人目のないところのほうがいい。
 展望デッキには、人影はなかった。こんな時間だというのに、離着陸の飛行機がある。それらを眺めて、キスをした。
「愛してる、ニール。」
「・・うん・・」
「また来てくれるか? 」
「・・ああ・・・」
「もっと声を聞かせてくれ。きみの声は、私の安らぎだ。」
「・・・・グラハム・・・あんたさ、こんだけ勝手なことして大丈夫なのか? 降格とかなったら洒落にならないぞ。」
「・・・そういう言葉を欲したわけではないんだがな、姫。そちらは大丈夫だ。きみにチケットを渡した私の親友の叔父が、軍の上層部に居る。彼から、ここ五日の勝手については、目を瞑ってくれるように頼んでくれたから大丈夫だ。」
 きみは優しい、と、彼は微笑んだ。
「あのポニテさんか・・・なるほど、それで早く帰れたんだな。・・・ったく。」
 そういうことなら、安心した。適当な理由をつけて、時間配分をしてくれたなら問題はないだろう。
「普段は、世界が統一されて平和になるために尽力している。きみが、組織から呼ばれなくなって、私と暮らしてくれるための努力は怠らない。ビリーも、それには賛同してくれている。」
「・・・うん・・・そういう日は来ないと思うけど、感謝はしておくよ。」
 誰も居ない展望デッキで、キスを繰り返した。僅かの待ち時間なんて、あっという間に過ぎ去る。ファイナルコールが響くまで、そうやって過ごして、手を離した。




 特区まで戻って、刹那のマンションへ戻ったら、そこからすぐに中東へ移動した。中東への便に乗り込む前に、携帯端末は返してもらったが、ティエリアからの着信は、何度か入っていた。
「これ、どう処理した? 」
「あんたが起きられないから、俺が代わりに出ていると返事しておいた。・・・ティエリアは、俺が無茶をすると怒っていたが、代われとは言わなかった。」
「・・・・刹那君・・・・」
 それは、俺がダウンしたという意味だから、立場が逆転して理解されたような気がする。異やまあ、あっちでも、そういうことだったから、それはいいといえばいいが、相手が刹那というのが、ちょっと悲しい。
「何か問題があるのか? 」
「・・・ううん・・・ありがとな、刹那。」
「とりあえず、移動するが、ここからの定期連絡はあんたでもいいだろう。俺のほうが、今度は連絡が取り難くなる。」
「おい、危ない真似すんなら、同行するぞ? 」
「しない。すぐに戻って来る。」
 それから、あんたを案内してやるから、俺の故郷に近いところを楽しんでくれ、と、刹那は言った。たぶん、俺の故郷を案内したから、刹那も同じようにしてくれるつもりなのだろう。
「どうせなら、ティエリアたちも呼んでやればいいのに。」
「あいつに案内なんかしない。あいつが来ると、俺とあんたの邪魔ばかりする。」
「でも、ティエリアは、俺んところへ来た時、すげぇー喜んでただろ? 」
 ティエリアには故郷というものがない。アレルヤも覚えていないらしい。だから、俺の故郷を案内したら、大変喜んでいた。口では、「守秘義務違反だ。」 と、怒鳴ったが景色に見蕩れていたのは知っている。どうせ、こういうことができるのも、機体がロールアウトするまでなのだから、楽しめばいいと俺は思っている。
「あんたは、そんなだから俺が手を貸さなければならないんだ。・・・・呼びたければ呼べばいい。だが、次回にしてもらう。俺は、あんただけを、ゆっくりと案内したい。」
「ああ、じゃあ、次回の休暇は、刹那んとこの探訪にしようぜ。」
 他人のことばかり気にするな、と、刹那は言いたいのだろう。だが、それは性分だから、今更、どうにかなるものではない。できるだけ、楽しい思い出を作れればいい。これから、さらに過酷になるはずだから、そういうものを持っていたほうがいいと思う。
「・・・バレていないのか?」
「バレてないよ。・・・なあ、刹那。あいつと遣り合う時は、俺も援護するからな。殺ることは躊躇うなよ? 躊躇ったら、俺が狙い撃つからな。」
「・・・わかっている・・・いいのか?」
「いいんだ。できたら、自分で殺りたいと思ってる。そのほうが俺としては片をつけられていいんだ。」
作品名:ぐらにる 流れ 遠征3 作家名:篠義