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こらぼでほすと 桃色子猫

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紫子猫が組織へ戻って、すぐに桃色子猫の降下の連絡が入った。予定では、すでに降りているところだったから、迎える側も、用意は終っていた。ただし、予定を動かせない面子があるから、当初通りの予定ではない。
「申し訳ないんですが・・・」
 その予定変更を告げに、アスランとキラが寺に顔を出す。歌姫と某国家元首様の予定は動かせないから、先に、そちらへ合流して欲しいという話だ。
「うちは、別に慌てないさ。それに、お盆でバタついてるから、フェルトをゆっくりさせられないしさ。」
 すでに、お盆ウィークに突入していて、こちらは檀家廻りやら墓所の掃除やらで忙しくなっている。今も、坊主は檀家をスケジュールギチギチで走り回っている。寺の女房のほうも、後から入ってくる檀家からの要請を捌いている状態だ。
「ママ、あんまり動き回らないでよ? 暑いんだから。」
 ジュースをちゅるちゅると飲みながら、キラも口を挟む。この酷暑は、本当に暑くて、スーパーコーディネーターな大明神様ですら、うんざりする。
「悟空は、どうなんですか? 」
「うん、三蔵さんと相談したんだけど、行かせてやることになったよ。うちは、もう予定も詰まっているし、墓所のほうも俺とバイトさんで、どうにかできそうなんだ。」
 お盆の時期だけは、特区の人間も墓参りという行事を思い出すらしく、墓所での読経も頼まれる。で、ひとりしか坊主が居ないと檀家と墓所の二箇所は無理だから、特区の関係宗派からバイトを手配してもらえる。だいたいが、仏教大学の学生または仏教学校の学生で、坊主を目指しているものたちだから、読経もできるし、坊主頭をしているから、ここの坊主より坊主らしい。墓所のほうの読経は、そちらに任せて、寺の坊主が檀家を回るという体制になっている。いつもは、墓所のほうに悟空も参加するのだが、バイトを増やすことで対処した。せっかくの遊びの予定を断らせるのは可哀想だと、寺の女房が亭主を説得した。
「墓所のほうって・・・・まさか、ママ、炎天下に出るつもりですか? 」
 それは自殺行為だろうと、アスランが嗜めるような口調で言うが、いやいやと女房のほうは手を振っている。
「バイトさんの世話するぐらいだよ。後は、檀家さんから連絡受けたりするから、家のほうにいる。」
「大丈夫なんですか? 」
「それぐらいならな。それに、おまえらが留守になれば、おやつも作らないから時間はあるさ。」
「昼寝は? 」
「ま、ぼちぼち、ここいらで転がってるさ。・・・・三蔵さんが出たり入ったりするから。」
 ここのお盆というのは、そういうもんらしいから、と、親猫は微笑む。本格的に参戦するのは、今年が始めてだが、騒々しいのは知っていた。いつもは、亭主と悟空で切り盛りしているのだから、そこに女房が加わるだけだから、仕事としては多くない。
「それならいいんですが・・・なんなら、ハイネかダコスタでも応援させますよ? 」
「それなら、大丈夫だ。トダカさんが手伝ってくれるって言ってた。今日も来る。」
 卒塔婆という板を、お墓にお盆の時期は立てかけたりする風習があり、さすがに、漢字は書けないアイルランド人には手伝えないから、代わりにトダカが書きに来てくれることになった。というか、ある意味、寺の女房が動きすぎないためのストッパーというところだろう。店も、盆休みに突入しているので、トダカも平日は暇にしている。
「フェルトがエアポートに到着するのを出迎えてもらえますか? ママ。」
「それは大丈夫だ。」
「じゃあ、明日、時間になったら迎えに来ます。十時くらいになると思います。」
「はいよ。」
 そこへ、トダカとアマギが顔を出した。そして、なぜか、庭が騒がしい。あれ? と、そちらに顔を出すとトダカーズラブの面々がいる。
「いらっしゃい、トダカさん。あの・・」
 あの大量のトダカーズラブは? と、視線で尋ねたら、「バイト代。」 と、笑って答えた。キラとアスランに挨拶すると、居間の片隅に転がっている習字道具らしいものと帳簿に手を伸ばす。
「うちの慰霊をしてもらおうということでね。三蔵さんに、お経を上げてもらうんだよ。」
 代わりにアマギが返事をする。トダカーズラブも、先の大戦のときに、かなりの人間が亡くなっている。その霊を弔ってもらうらしい。いつもは、オーヴのほうでやるのだが、今年は寺でバイトすることになったので、まずは、そちらでやって、バイトが終ってから、こっそりとトダカがオーヴへ帰郷してやることになったとのことだ。
「ああ、そういうことですか。じゃあ、みなさんにも冷たいものを。」
「いいよ、ニール。時間までは、適当に外で待機するように言ってある。」
「けど、この暑さだし・・ああ、脇部屋にクーラーを入れますから、そちらで涼んでもらいますね。」
 本来、本堂の脇部屋というのは、そういうものだ。ハイネが戻っていないので、脇部屋は片付けられていて使える状態になっている。ニールのほうも、布団さえ、押入れに入れれば問題はない。さっさと、それだけ言うと、寺の女房は動き出す。この炎天下で待たせるのは、さすがにマズイだろうと走っている。
 それを見送った面々は、あーあーと呆れたように笑う。あんな調子で動いていたら、確実にダウンするだろう。
「トダカさん、ママの抑止力ね? 」
 キラも、それだけ言うと回廊へ走り出す。べたべたまとわりついて、寺の女房の行動を制限するつもりらしい。
「承りました、キラ様。アスランくん、フェルトちゃんの相手は頼んだよ。」
「ええ、そちらは、カガリとラクスがてぐすねひいて待ってます。」
 これが再始動前の休暇ラストかもしれないから、ラクスとカガリもフェルトと目一杯楽しむつもりで、一週間の休暇を作ったのだ。



 しばらくして、三蔵が戻って来て、本堂にトダカーズラブの面々が並んだ。一番前はトダカだ。そして、ニールが本堂の前の廊下に座っているし、キラとアスランも興味深々で、脇部屋から見学している。
 チーン
と、鐘の音がして、坊主の読経が始まる。キリスト教でも、こういうものがあるが、毎年なんてことはない。忘れないための儀式なんだろうな、と、ニールも読経の声を聞いている。キラがやってきて、親猫を脇部屋に引きずり込んだ。そんな炎天下に座ってたら、ヤバイとアスランに言われたからだ。
「ここなら涼しいから。ここで、僕と聞こう、ママ。」
「考え方の違いっていうのが、よくわかるな。」
「極東の考え方は、独特ですからね。死んでも地獄とか冥界で暮らすという考え方だから、あちらで苦しまないようにっていうことらしいですよ。俺も詳しくはありませんが。」
「俺らで言うところの天国? 」
「うーん、天国に該当するのは極楽じゃないかな。」
 アスランも、それほど詳しいわけではないので、うろ覚えの知識で話して苦笑している。少し長い読経は、単調で眠気を誘うものだ。キラと寺の女房は、途中でこっくりこっくりと船を漕ぎ出した。
 それを横目にしてトダカーズラブの面々は苦笑している。



作品名:こらぼでほすと 桃色子猫 作家名:篠義